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寄稿 飲酒ガイドラインについて

 2024年2月19日、厚生労働省が「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」(以下、飲酒ガイドライン)を公表しました。
 今年3月、日本精神衛生会から解説を依頼され、寄稿したものが、『心と社会_55巻3号 通算197号』に掲載され手元に届きました。

 筆者は、アルコール依存症の入院/外来治療を行うかたわら、アルコール健康障害対策基本法推進ネットワークの幹事、東京都依存症対策会議の委員としてアルコール健康障害対策基本法(以下、アル対法)の制定にも関わり、啓発活動を行ってきました。

 アル対法に基づく施策が始まり10年が経過しましたが、まだまだ、治療と必要としている人数に比べて、治療に繋がっている人の数が少ない、いわゆる「トリートメントギャップ」は縮まっていません。

トリートメントギャップ

 <生活習慣病のリスクを高める量の飲酒をしている人>は1036万人という数字があり、高血圧の993万人、脂質異常症の220万人、糖尿病の1000万人といった人達と重なりあっています。しかし、個々の病気に対して治療を受けていても、飲み過ぎがあるのに、対処されていないことが多いのです。
 プライマリ・ケア施設の外来患者さんを対象とした研究によると、18の診療所の1388人の患者の22%が危険な飲酒をしているか、アルコール依存症が疑われる状態でした。そして、その方達のうち、過去1年間に医師を含む他者から飲酒について心配されたと報告したのはわずか22%でした。
 
 トリートメント・ギャップを減らすためには、リスクの少ない飲酒をしている人達、法的に飲酒が許可される年齢になろうとする人達への啓発も必要で、「飲酒ガイドライン」は、そのための資料となります。
 公表されたガイドラインは、完成途上であり、課題も多くあります。「厚生労働省の「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」とASKの方針」に詳しく書かれています。
 とはいえ、海外に比べて、遅れがちであった日本のアルコール健康障害対策が、飲酒ガイドラインについては、大きく遅れずに制定されたこと自体は高く評価すべきでしょう。

 ガイドラインを酒害軽減に役立てるためには、日々の飲酒量を純アルコール換算(g)で計算することが必要ですが、慣れないとちょっと面倒です。
 そこで、厚労省は、これを簡単に行えるツールを公表しました。
 「アルコールウォッチ」という純アルコール量とアルコール分解時間を把握するツールです。

 飲酒したお酒の種類と量を、ドラッグ&ドロップで棚に移動させて、「計算する」というボタンをクリックすると、純アルコール量と分解にかかる時間が出てきます。時間の計算は、飲酒運転にならないようにする際の目安になります。
 皆様の健康管理に役立ちますように!