ノンフィクション 母さんが押された
母さんが押された。駅の下りの階段で知らない男に。
私は見ていない。母さんから話を聞いたんだ。
何故だかわからないけど、その話を半年に1回は必ず思い出している。
頭の空想の中で押された母さんを想像する。
母さんは世界でたった1人の私の母だ。
歳は64歳で、身長156cm。ショートヘアで小柄で可愛い私の母が、知らない男に階段で押されたそのシーン。
私は実際には見ていないが、鮮明に知っている。目を擦らなくても、メガネをかけなくても、一時停止しなくても、私は何度も見た。
隈無く知って