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何しろ『こういう』ことが滅法好きなので、辻村がこの道を歩こうと決めたのはごくごく当然のことであったのだと思う。 夏の宵。 暑さも幾分鳴りを潜め、そぞろ歩きにぴったりの夜である。酒は回っているが、ふらつくほどでもない。 月が綺麗であった。その月光と街灯のおかげで、まるで昼間のような明るさである。 確か、この先の道を曲がったところのはずだ。 あの廃屋があったのは。 「そういや、あそこもなくなったんだよなあ」 口火を切ったのは、新田であった。 お盆休みに、久しぶ
鳴り響く音に、和子は身を固くした。 枕元の携帯を引き寄せ、時間を見る。午前一時十一分。 ――また、だ。 和子は布団を頭上まで引き上げた。 ――もう、いい加減にして。 この部屋に越してきて、一週間。必ず、毎晩、この時間に。 誰かが、インターホンを鳴らすのである。 和子は今年で大学二年生になる。今までは隣県の実家から学校に通っていたのだが、学年が上がるとともに校舎が変わり、通学に三時間、かかるようになった。 いちいち通学にそんな時間はかけられないし、交