その奇妙な店は~薄紅色の籠の中で【奇談】
※この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件とは一切関係がありません
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その桜を見て、久恵は目を丸くした。
会社帰りのことであった。
深夜である。
普段ならもう少し早く家路に付くのだが、会議やら会食やらが立て続けに入り、気付いたら終電を逸していた。別の路線ならば、まだ電車が出ている。タクシーを使うことも考えたが、節約を命じている立場である。自らが破るわけにはいかないと思い直した。
それで、歩いていたのである。
普段通らない道を、