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3本の指のポーズ
(2021/8/20 よんチャンTV放送分のこぼればなし)
今年5月、サッカーミャンマー代表として来日したピエ・リアン・アウン選手。試合開始前に、ミャンマー軍への抗議を示す「3本の指をたてる行為」を行い注目を集めました。
政情不安が続くミャンマー。人権団体「政治犯支援協会(AAPP)」のまとめでは、クーデターが始まった2021年2月から8月19日までに1007人の死亡が確認されています。
3本の指をたてたアウンさん。そのまま国へ帰れば身の危険もあることから帰国を拒み、日本での難民認定を申請していました。2021年8月20日、異例のスピードでこれが認定されました。
そんなアウンさんと、彼の支援者であるアウン・ミャッ・ウィンさんに話しを聞くことができました。難民認定の報告を受け区役所に向かう車の中にいる彼等に少しの時間だけ電話をすることができたのです。
ウィンさんは大阪市内でミャンマー料理店を経営しています。
ウィンさんとアウンさんは親戚でもなければ、もとは友達でもありません。アウンさんが公の場で3本の指をたてたことを見て、ウィンさんは彼を保護しなくてはいけないと思ったそうです。時間と労力をかけて、もしかしたらウィンさんにも何らかのリスクが生じるかもしれない中で、なぜ彼を助けるのか聞きました。
「私はミャンマー国民のために、彼を支援している。」
ウィンさんは私の質問にそう答えました。
「命をかけて民主化を訴える国民がいる。彼らのために、そしてミャンマーという国のために、私は日本でアウンさんを守るのだ。」と。
電話越しに聞こえるウィンさんの声からは憤りや怒り、そして現状を変えなくてはいけないという使命感、難民認定がされたことにより新たな展開が動き出そうとしていることへの興奮など様々な感情がうかがえました。
3本の指をたてたことに後悔はありますか。
私はウィンさんに通訳をしてもらう形で、アウンさんに聞きました。
「後悔は無い。ミャンマーで命を落とした人々、そして命をかけて今も民主化のために戦っている若者たちに比べたら私の意思表示は比べ物にならないほどちっぽけなこと。」
と、アウンさんは言います。さらに。
「3本の指をたてた時、もう2度と大好きなサッカーはできないだろうと覚悟した。」とも。
いつかミャンマーに帰りたい気持ちはありますか。
「もちろんです。私は祖国を愛しています。いつかミャンマーが安全な場所になれば帰りたいと思う。しかし、それはいつになるかは分からない。」
支援者のウィンさんは繰り返しこの言葉を口にしていました。
「ひとつの勝利。」
「アウンさんの難民申請を日本が認めたと言うことは、日本はミャンマーの民主化運動を支持したのだと思っている。軍事力による制圧を日本は否定したのだと感じている。これは我々にとってはひとつの勝利なのだ。」と。
アウンさんは日本のサッカーチームに練習生として加入することになりました。いま彼には夢がある言います。一度は諦めかけたサッカーですが、次は日本のJリーグで活躍したいそうです。
軍への抗議活動を行い、帰国すれば危険な状況に陥ってしまうかもしれないミャンマー人は日本国内に他にも大勢います。アウンさんへの難民認定という今回の出来事が決して本質的な解決にはなっていないということ、そして今この瞬間も、日本人にとってはあたりまえの権利が認められず、それを求めて命を削り戦っている人達がいるという事実を、我々も継続的に考えていく必要があるのではないでしょうか。
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