やさしい提案

押しつけず、そっけなくない。いまの気分では、そんな風に優しく提案されたいのかもしれません。

本日発売されたPOPEYE最新号の特集は「二十歳のとき、何をしていたか?」というタイトル。

ポパイ編集部が敬愛するという33人の大人たちに、20歳のときの自分を振り返ってもらいながら、いまの若者にメッセージをもらうという内容になっています。

さっそく手にとって読んでみたのですが、各界を第一線で活躍する大人たちの、若者に向けてのアドバイスが、まさに「押しつけではなく、かといって、そっけなくもない」絶妙にやさしい感じで心地よかったのです。

思い返せば今のポパイは、この「やさしい提案」スタイルで人気を復活させたといっても過言ではないでしょう。

2012年にリニューアルしたポパイは、創刊当時の「マガジンフォーシティボーイ」をコンセプトに掲げ、20代向け雑誌の中では圧倒的な人気を誇っているといいます。

アメリカ西海岸文化の輸入とともに当時の若者の間で熱狂を巻き起こしたポパイは、時代の流れとともに徐々に「カタログ誌」になってしまい、人気が低迷していました。

「カタログ誌」というのはどうしても「これ買っておけば間違いない!」みたいなテイストになってしまうので、読者に押し付けたり、媚びる印象が強くなってしまう。

それはそれで需要があると思うのですが、ネットで新着情報を簡単に仕入れられる時代になると、徐々にその役割は小さくなります。

「雑誌を読んでいるというカテゴライズ・ファン文化の育成」や「キュレーションという名の審美眼」に移ってきていると感じています。

92年生まれのぼく自身も、親世代のように雑誌に熱狂を求めているわけではないし、カタログとしての利用ならネットで事足りてしまう。

でも、時代の編集力に優れた一流のプロたちから、なにか新しい提案をしてほしい、とわがままなことを思っていました。

そんな中、新しく登場したポパイの「やさしい提案」という姿勢が、ぼくを含め多くの若者を惹きつけたんだと考えています。

リニューアル後のポパイは、とにかく優しかった。「こんな風に楽しめばいいんじゃない?」みたいな雰囲気を貫いているのが、ぼくは、今も好きです。

最近、人には憧れが必要だと様々なところで思っているのですが、そういった意味でポパイに限らず、大手の雑誌には、芸能、文化、スポーツ含め多くの著名人がたくさん登場します。

一般人には遠いところにいる彼・彼女らを、ある程度の距離感を持ちながら読者とつなぐ貴重な役割として、雑誌には大きな意義があると思っています。

これは「とにかく距離感の近さで勝負する」系のコンテンツには絶対にできないこと。だからこそ、ぼくもこの一点を楽しみにし続けています。

背中で語られたくもないし、媚びて欲しくもない。そんなわがままな読者を満足させる。それはやっぱりすごいことだと思います。

山脇、毎日。