服を買うこと、手放すこと。

昨日よりたくさんのお客さんが来てくださって、より賑やかになった展示販売2日目。

2年前、EVERY DENIMの立ち上げと同時に誕生した1st modelを大切に持ってくださってた方とお会いできた。

縁あってお預かりすることになったこのデニム。

大切にされて、本当にたくさん履かれたんだなあと実感できる一本を見た時、震えが止まらなかった。

時間もコミュニケーションも、流れに流れていくことに慣れた現代の僕たちにとって、時の変化が形に残る服の存在はとても貴重だと思っている。

身につけた分だけ応えてくれる愛しい存在。デニムなら色が落ちるし、シワもつく。定期的に洗ってあげないといけない。

捨てなければ自分の手からはなくならない。それは時に、しんどさになる。新しい服をためらう理由にもなる。

似合わなくなったらどうしよう。気に入らなくなったらどうしよう。一生付き合えなければどうしよう。せっかくの高い買い物なのに。

次第に服を買うこと自体がストレスになる。面倒になる。

人はせっかく服を着るんだから、その行いは楽しくあってほしいというのが僕の願いだ。たとえ今はなくても、服に愛着を持っていた経験は誰にもあるはずだ。

その経験を思い出そう。他人には理解されなくても、大事に大事にしていた服。あるいは、今している服。

その愛着はいつか薄れてしまうかもしれない。でも僕はそれで良いと思う。人間の気持ちは、いつだって変わるから。

自分が着たいと思わなくなった服でも、一度でも愛した経験があれば、気持ちよく手放せるだろう。

「服を買う」という行為の中に、その人なりの美学があるように、服の手放し方についても美しさがあるんじゃないだろうか。

気分を上げてくれたり、気持ちを新たにしてくれたり、理想の自分にちょっぴり近づけてくれたり。想いを形にしてくれたり、誰かの願いを叶えたり。

服を買うという行いの裏には、たくさんの感情が潜んでいて、基本的には人を豊かにしてくれるものだと思う。

だから服を手放す時も、同じように心を豊かにしていたい。次に身につける人が大切にしてくれることを信じて、想いを込めて渡すのが良い。

今まで自分を幸せにしてくれた、感謝の気持ちでいっぱいな服を、罪悪感じゃなく温かな気持ちで見送りたいから。

「着用1回・新品同様」よりも、たくさん着られて愛されて想いの込もった服の方が価値ある世界へ。

そんな世界を見られるかどうか。それは僕らの"手放しの美学"にかかっている。

山脇、毎日。