熱いお金を集める方法
前々回、前回と、EVERY DENIMのここ1年間について、振り返っています。前にも書きましたが、ぼくたちは、去年の9月、ブランドの立ち上げ&1stモデルの生産資金を、クラウドファンディングという形で募りました。
結果的には予想を超えて2,096,000円も支援いただくことになり、無事スタートできたのですが、今から振り返れば、この立ち上げ時の資金が、いろんな方から支援していただいたお金だったということが、あんがい自分にとって大事だったんじゃないかと思っています。
資金の集め方には色々あるでしょう。自分で貯金をする場合もあれば、親戚から工面したり、金融機関から借り入れる、投資してもらうなど、方法は様々です。
そんな中でぼくたちは当時の状況を考慮した上で、クラウドファンディングという方法を選びました。約1年経ちましたが、ご支援いただいたみなさんへの感謝の気持ちは、ずっと胸の中に残っています。
当然のことですが、もしこれが仮に、自分が稼いで集めた資金だった場合、そのような感情は出てきません。
自分で資金を集める方法を否定するわけでは決してありませんが、ぼくは、この「みんなから支援していただいたお金を元にやっている」という気持ちが、自分自身にとても強く、ポジティブに作用していると考えています。
絶対に無駄にはできない、大切にしないといけない。と心の底から思えるのは、それがみんながぼくたちに期待してくださったという思いを持てる資金の集め方だったからに他なりません。
このお金はぼくをとても熱い気持ちにさせてくれる、いわば”熱いお金”であり、その意味において、クラウドファンディングはとても有効な手段だと思います。
クラウドファンディングについては、ときにそのやり方をめぐって、心地の良くない議論を巻き起こしています。「なんでもあり論」に対しての「べき論」、それを受けての「バズるが勝ち論」それぞれの論者の思惑は真偽が不確かですし、当事者たちがどこまで「相手が何を目的として議論をふっかけているのか」意識しているのかもわかりません。そのあたりが見えてこないからこそ、見ていて心地よくない議論なのだと思っています。
話題になることだけが目的ならば、「一見けなしているように見えるPR手法」が有効な場合があります。これを目的にした”ゲーム”においては、そもそも反論することや、いまのぼくのように俯瞰したつもりになって論じること自体が、ゲームを仕掛けた側の狙い通りなのです。
「賛否両論あって議論が盛り上がったおかげで、結果的に知名度が上がってよ良かったね」と言えるかどうかは、議論のプレーヤーのキャラクターや手腕にかかってくるでしょう。フラッシュモブで怒る人もいるのですから。
このゲーム上では、意見を述べること自体がゲームをクリアへと加速させることになるので、いままではあまり口出ししたくありませんでした。
ただ、今回の振り返りをもって、改めてクラウドファンディングが制度としては素晴らしいものであること、そしてぼく一個人の意見としては、手段としてのクラウドファンディングはその内容を問われるべきではない、と考えたことから、このようにブログに書くことにしました。
そう言えるのは、クラウドファンディングの本質が「集め方の合理性」よりも、むしろ「実行者の心に響く資金の調達法」であると、ぼく自身が身をもって体感したからです。
いまのクラウドファンディングは、あくまでぼくの感覚ですが、「是非を問う際の負荷が大きい」と思っています。それは、まだまだプロジェクトの絶対数が足りないからであり、”当たり前”として存在していないからです。それゆえ、プロジェクトの支援を依頼される側にとっては、「そこに支援するか否か」が他の関係に影響を及ぼしてしまうことがあります。
もっともっとクラウドファンディングが世の中に浸透し、空気のような存在になりますように。ささやかながら、祈っています。
山脇、毎日。