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映画「秘密の森の、その向こう」

監督:セリーヌ・シアマ

原題はPetite Maman。直訳は小さな母だけどフランス語では"大人のように振る舞う子供"というニュアンスも含むそうで。邦題つけずにPetite Mamanままでいいじゃんね。なんてね。
あらすじ 〜祖母が亡くなり、母が姿を消した日。8歳のネリーが森で出会ったのは母と同じマリオンという名前の少女。その少女の家に招かれるとそこはおばあちゃんの家だった 。〜(※チラシのあらすじコピーじゃけどわかりにくいっすね。トレーラーご参照ください)

すごいです。73分の短い映画に大切な事柄が凝縮されてる。祖母が亡くなった直後の悲しさ残る家族の物語なのに観ててずっと優しい気持ちに誘われる。邦題やチラシのビジュアルからファンタジー溢れる少女のひと夏の冒険的なイメージを持たれそうですが、否!悲しさの中で母と娘が絆を新たにしていく物語だと感じました。ファンタジーとしてどうとかタイムスリップ設定としてどうとか、そんなこと気にするような物語ではないです。

ネリー役と少女マリオン役は実の双子姉妹。導いた演出のお手柄だとは思いますが、実に素晴らしい演技でした。新しい友達として楽しく過ごすシーンとお互いを母娘と認識して過ごすシーンを演じ分けているのです。とても難しいはずなんですが、抑制の効いた演出も手伝ってとてもリアルです。姉妹に主演女優賞を贈る映画祭があると素敵ですけどねえ。どうじゃろう。

(※ここから少しだけネタバレ含みますご注意↓)

抑制が効いたと書きましたが、設定がファンタスティックなので意識的に余計なセリフを無くして、過剰な演出も無くシンプルに仕立てた気がします。マジ秀逸です。ネリーの表情やここぞのセリフ1つ1つが際立って印象に残るんですよね。美しい余韻とともに。
過去タイムスリップの見所として"故人との再会"があります。私が好きな「カミーユ恋がふたたび」というタイムスリップ映画でもカミーユが過去で死んだ母に再会するシーンで私の涙腺はバカになりました。今作ではネリーが少女マリオンの家に招かれると家にはマリオンの母つまり亡くなった祖母が居るわけです。不思議な世界で祖母と再会するネリーのリアクション、これがなんと慎ましい!抑制よw 詳細は書きませんがとてもリアルです。人はこんな場面に出くわすとこんな感じじゃろうなと思わされるほどに。

そしてラストシーン。一言だけで見事にやられたあ。監督の計算通りにやられちゃったなあ。悔しさで下唇を噛みながら腕組みして大きく頷いたもの私。うんうんそうだよな、そらそうだよなと。
今年イチはこれかもしれないですね。もう一度見ます。73分だし。


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