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映画「あしたの少女」

監督:チョン・ジュリ

実習生として大手通信会社のコールセンターで働き始めた高校生が3ヶ月後に自死した。2017年韓国の全州市で起きた事件。ダンス好きの明るい少女ソヒがなぜ自死に至ったのかを2部構成で追及した映画。

報道と創作について学べる映画でした。実際の自殺が起きた時は世間に注目されていなかったそうで、ある人権活動家が記事にしたことをきっかけに事件が明るみに出てコールセンター側が労働環境の改善を発表する。その後も実習生が死亡する事件が相次ぎ、2023年3月に現場実習生の保護を求める世論が高まり職業教育訓練促進法の改正案が出来たという流れ。
今作が2023年2月公開なので直接的に映画の影響で改正案が出来たわけではないけどこの改正案を「次のソヒ防止法」と呼ばれるようになった。映画を通して上げた声が世間を動かしてる例です。こんなこともあるんですね。

映画の構成も良かったと思います。事件が明らかになる過程を2部構成で。
1部はソヒが亡くなるまでをリアルに、2部はその死の原因を刑事の目線で。2部は完全にフィクションなので少々味付けは濃いですが、この映画の目的を考えるとはっきりと主張する演出を選んだのでしょう。ソヒが働いていた会社だけを糾弾するのでなく、実習先を選定し就職率を上げることが最優先の学校やそれを助長する役所、利益のために悪どい商法でのさばる大手企業と。韓国社会の労働搾取の構造自体を糾弾してるのです。
で、もっと言うならそれは韓国だけの問題でもないのは理解ですよね。一部の人間が肥え、大衆は低賃金労働で搾取されていく。 世界のどこにでもある光景かと。 声をあげて法を変えて悲劇を防いでいく。映画ができること。
勉強になります。
ソヒが自死するとき最後に残した物、、少々あざとい演出は好みが分かれるとこだけど言いたいことが詰まった良いシーンだと思いました。


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