見出し画像

映画「コンパートメント No.6」

監督:ユホ・クオスマネン

モスクワに留学中のフィンランド人女性ラウラ。パートナーであるイリーナとロシア最北端にある古代のペトログリフ(壁画)を見にいく旅を計画したが急遽キャンセルされて一人旅になってしまう。寝台列車の同室で乗り合わせたロシア人労働者のリョーハはウォッカを呑んで酔っ払い下品に絡んでくる面倒臭い男。出だし最悪の旅の結末やいかに、。

なんか列車の旅って好きなんすよね。車窓から眺める初めての景色は飽きなくて気持ちいいし、国ごとに違う車両のしつらいも乗車してくる異国の人々も新鮮で。どの国を旅しても列車に乗る日は作りますな。今作のような男女の出会いは経験したことないけど17年前にリュック1つで欧州何ヵ国か列車で旅した時の経験や出会いは結構鮮明に覚えてます。
スクリーンで彼女の旅を見てるだけで自分も一緒に旅してた気分になるってのは言い過ぎだけど、一人旅に行きたくなった方は多いでしょうね。

超リアルな2人の芝居でした

クオスマネン監督の狙い所がどうにも好みです。旅の目的(壁画)をズバンとダダーンと見せることが大切じゃ無いんすよね。道中での出会いと出来事を通してラウラは何を感じたのかを考えさせる。スクリーンで旅後の彼女たちを見せないし暗示もしないので鑑賞した各自が余白で思う未来があるはずっす。余白の具合が好みなんだなきっと。ただしこればっかりは好み論が発動でしょうね。"観客置いてけぼりで結局何が言いたいの?""理解出来ない旅だし壁画は?"的なもっと分かりやすい映画が見たいんだってご意見もあるでしょう。
想像が大好物な私はラウラとリョーハは再会することはなかったんだろうなとか、モスクワに帰ってイリーナとの生活に戻っても大学卒業したらすぐに別れたのかなとか想像は膨らむばかり。ペトログリフどうでもよくなっちゃいますよそれは。前作の「オリ・マキの人生で最も幸せな日」でも近い手法だったそういえば。物語の大サビだと思われたボクシングの試合はそんなに映さない。一見サビに見えない所にこそ人の道はあると言わんばかりに。

彼女が笑うとこっちも嬉しくなります

ラウラ役のセイディ・ハーラさんのビジュアル、表情。惚れちゃったなあ。これこそ好み論か?、、いや違うはず。序盤から"なんで1人旅するんやったっけ?"て曇った顔してて同乗者リョーハが面倒臭いヤツでさらに眉間にシワが寄って。列車が進んでリョーハと関係がほぐれるに連れて彼女にやっと笑顔が見えてくる。おお、いいぞ、これが素の表情か、もっと楽しむんだ、笑顔が素敵よあなた!ってリョーハと同じく私達もいつの間にか彼女の笑顔見たい族になってしまう。元々魅力的なビジュアルというよりその魅力にどんどん気がついていく仕掛けなんすよね。彼女が笑顔のラストであってよ、とすっかりファンになって終盤を迎えた鑑賞者多かったでしょう。

そのラスト。たぶん多くの方が展開読めた気がするんす。読み通りでつまんなかったとか予定調和なんて言われそうですが。
しゃらくせえ!待ってたラストシーンさ、洒落てて最高じゃん!この旅は終わりだけどここからラウラが再出発する物語なんだ。ふさわしいラストお見事でした。ハイスタ・ヴィットゥ!ヘイヘイw

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?