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Covid-19治療での抗体カクテル療法について

【抗体カクテル療法とは】

厚生労働省で認可されているのは、ロナプリーブ(カシリビマブ / イムデビマブ)であり*1、FDAでは2020年11月に承認されております*2。
海外のカシリビマブ / イムデビマブの有効性を比較したランダム化比較試験では、抗体カクテル療法について以下のように説明していました*3。

私たちの中心的な仮説は、Covid-19による合併症と死亡は、SARS-CoV-2ウイルス量から発生し、この負荷を減らすことは臨床的利益につながるはずであるというものです。 REGN-COV2(カシリビマブ / イムデビマブ)は、SARS-CoV-2スパイクタンパク質の受容体結合ドメインを標的とする2つの非競合中和ヒトIgG1抗体で構成されるカクテルであり、ACE2受容体を介したウイルスのヒト細胞への侵入を防ぎます。 単一の抗体であるsuptavumabを使用して呼吸器合胞体ウイルスを標的とした場合の治療抵抗性変異ウイルスの出現に関する以前の経験から、「カクテル」アプローチを前向きに追求しました。(Google翻訳)

単一のモノクローナル抗体ですと、変異株への対応力が減る懸念があるため、2種類のモノクローナル抗体を混ぜることで補完していき、その手法を「カクテル」と呼称しているようでした。

【抗体カクテル療法の効果】

抗体カクテル療法のランダム化比較試験が中間解析として*3、発症から7日以内の入院していない成人患者を対象に、プラセボ群、2.4 gのREGN-COV2(低用量群)、8.0 gのREGN-COV2(高用量群)の3群に分け、第1-3相試験をまとめて行い、エンドポイントを以下のように設定して検討しております。

主要エンドポイント*3
ウイルス学的エンドポイント
・RT-qPCRで測定した、1日目から7日目までのウイルス排出のベースラインからの時間加重平均変化
臨床的エンドポイント
・29日目までに1つ以上のCOVID-19関連入院の患者の割合
安全性エンドポイント
•観察期間中の治療に起因する重篤な有害事象(SAE)の患者の割合
•観察期間中の過敏反応(グレード2以上)、infusion reaction(グレード2以上)の患者の割合

結果としては、ウイルス量に関しては、抗体陰性の集団で有意に減らせていました -0.56 log10 copies/ml(95%信頼区間:-1.02--0.11)。また、全体と比較した時に抗体陰性の集団である方が効果の高くなる可能性も示唆されておりますが、事前に設計していたわけではないため、その解釈には注意するべきとしています。
臨床的エンドポイントとしての、29日目までに1つ以上のCOVID-19関連入院の患者の割合に関しては、プラセボ群 6/93人(6%)とREGN-COV2合同群 6/182人(3%)で、相対差は約49%としています(絶対差 −3% [95%信頼区間:−16 - 9])。
安全性エンドポイントとしては、プラセボ群と比較して大きな違いは出なかったとしています。
mRNAワクチンとかと一緒で、第1-3相試験を通して行われている点や臨床的エンドポイントに関しても有意差は示せていませんでしたので、結果の解釈には注意した方が良さそうです。

また査読前ではありますが、その後の第3相試験の一次分析も出ております*4。ここでは、発症から7日以内の入院していない18歳以上の方を対象に、プラセボ群、REGN-COV 1200mg群、REGN-COV 2400mg群の3群に分け、29日目までに1つ以上のCovid-19関連入院または全死亡の患者の割合を検討しています。結果としては、REGEN-COV 1200mg群で 70.4% (95%信頼区間: 31.6 - 87.1% p<0.0024)、REGEN-COV 2400mg群で 71.3% (95%信頼区間: 51.7% - 82.9% p<0.0001) と有意に減少しておりました。

他にも、査読前文献ではありますが、入院したCOVID-19患者をプラセボ投与群とカシリビマブ4gとイムデビマブ4g投与群に分け、28日死亡率を検討しているランダム化比較試験もあります*5。結果としては、抗体なしの集団ではカシリビマブ4gとイムデビマブ4g投与群で有意に改善しておりました(rate ratio 0.80 [95%信頼区間 0.70 - 0.91 ; p = 0.0010])。全患者を対象とすると有意差は示せておりませんでした(rate ratio 0.94[95%信頼区間 0.86 - 1.03 ;  p = 0.17])。

【考察】

最近、情報のスピード感が高いので査読前文献を見ることも多くなってきていますが、査読前文献を読む場合は、査読できるくらいのスキルがないと実臨床でそういったエビデンスを使用する場合にはよく注意する必要があるのかなと思います。僕は査読経験ないので、原著論文をよくみてもえればと思います。
現状の情報からですと、抗体が形成される前の早期の段階での投与が好ましいのかもしれません。限定的な状況で高い効果を発揮できる可能性があるため、早期で使用するための仕組み形成が一番重要になってくるのかなと思います。
また点滴静注製剤であったり、使用する場合もまだ制限が多く、実際の使用にはまだハードルが高い印象があります。ただ、今後使用範囲の増加、またファイザーなどでも似た薬の内服薬の開発も進んでいるようですので、調剤薬局でもいつ取り扱うことになってもいいようにこういった情報は今後も追っていく必要があるのかなと思います。

【参考資料】

*1:抗体カクテル療法「ロナプリーブ点滴静注セット」、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対し、世界で初めて製造販売承認を取得(2021年9月7日閲覧)
*2:Coronavirus (COVID-19) Update: FDA Authorizes Monoclonal Antibodies for Treatment of COVID-19(2021年9月7日閲覧)
*3:N Engl J Med . 2021 Jan 21;384(3):238-251.PMID: 33332778
*4:REGEN-COV Antibody Cocktail Clinical Outcomes Study in Covid-19 Outpatients.doi: https://doi.org/10.1101/2021.05.19.21257469(2021年9月7日閲覧)
*5:Casirivimab and imdevimab in patients admitted to hospital with COVID-19 (RECOVERY): a randomised, controlled, open-label, platform trial.doi: https://doi.org/10.1101/2021.06.15.21258542(2021年9月7日閲覧)

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