2022年 東京海洋大学 前期 海洋工 大問3

図のような六面体$${ABCDE}$$の辺上を動く点$${P}$$がある.
$${P}$$は, 頂点$${A}$$を出発点とし, 1回の移動で, その時にいる頂点から1辺で結ばれた隣の頂点のいずれか1つに等確率で移動する. ただし, 同じ頂点にとどまることはないとする.
$${n=1,2,3,\dots}$$に対して, $${P}$$が$${n}$$回目の移動後に$${A,B,C,D,E}$$にいる確率を, それぞれ$${a_n,b_n,c_n,d_n,e_n}$$とする.
例えば, $${A}$$から1辺で結ばれた隣の頂点とは, $${B,C,D}$$であり, 1回目の移動で$${P}$$はこのいずれか1つに等確率で移動する. したがって, $${a_1=e_1=0, b_1=c_1=d_1=\dfrac{1}{3}}$$である.

(1) $${a_2,b_2,c_2,d_2,e_2}$$を求めよ.
(2) $${a_{n+1},b_{n+1},c_{n+1},d_{n+1},e_{n+1}}$$を, $${a_n,b_n,c_n,d_n,e_n}$$が成り立つことを証明せよ.
(3) 数学的帰納法を用いて, $${b_n=d_n=d_n \space(n=1,2,3,\dots)}$$が成り立つことを証明せよ.
(4) $${q_n=b_{n+1}-b_n}$$とおくとき, $${q_n}$$を$${n}$$を用いて表せ.
(5) $${n=2,3,4,\dots}$$に対して, $${a_n, b_n}$$を$${n}$$を用いて表せ.

解答
(1)
2回目の移動で$${A}$$にいるのは, 1回目で$${B,C,D}$$のいずれかに移動し, 2回目で$${A}$$に移動するケースである.
$${A}$$から$${B,C,D}$$に移動する確率はそれぞれ$${\frac{1}{3}}$$, $${B,C,D}$$から$${A}$$に移動する確率は$${\frac{1}{4}}$$であるから,
$${a_2=3(\frac{1}{3}\times{\frac{1}{4}})=\frac{1}{4}}$$
$${E}$$についても, $${E}$$へ移動可能な点は$${B,C,D}$$であるから上記と同様に考えることができて,
$${e_2=3(\frac{1}{3}\times{\frac{1}{4}})=\frac{1}{4}}$$
2回目の移動で$${B}$$にいるのは, 1回目で$${C,D}$$のいずれかに移動し, 2回目で$${B}$$に移動するケースであるから,
$${b_2=2(\frac{1}{3}\times{1}{4})=\frac{1}{6}}$$
$${C,D}$$についても同様に考えられるから, $${c_2=\frac{1}{6},d_2=\frac{1}{6}}$$
以上を整理して,
$${a_2=\dfrac{1}{4},b_2=\dfrac{1}{6}, c_2=\dfrac{1}{6}, d_2=\dfrac{1}{6}, e_2=\dfrac{1}{4}}$$である.

(2)
$${A,E}$$へ移動可能な点は$${B,C,D}$$であるから, $${n+1}$$回目に$${A,E}$$に移動するのは, 「$${n}$$回目に$${B,C,D}$$のいずれかにいる」かつ「$${n+1}$$回目で$${A,E}$$に移動する」ケースである.
よって,
$${a_{n+1}=\frac{1}{4}b_n+\frac{1}{4}c_n+\frac{1}{4}d_n}$$
$${e_{n+1}=\frac{1}{4}b_n+\frac{1}{4}c_n+\frac{1}{4}d_n}$$
$${n+1}$$回目に$${B,C,D}$$移動するのは以下の2ケースである.
・「$${n}$$回目に$${A,E}$$のいずれかにいる」かつ「$${n+1}$$回目で$${B,C,D}$$に移動する」
・「$${n}$$回目に$${B,C,D}$$のうち、自身でないいずれかにいる」かつ「$${(n+1}$$回目に$${B,C,D}$$に移動する」
それぞれの$${n+1}$$回目の確率は前者は$${\frac{1}{3}}$$, 後者は$${\frac{1}{4}}$$であるから,
$${b_{n+1}=\frac{1}{3}(a_n+e_n)+\frac{1}{4}(c_n+d_n)}$$
$${c_{n+1}=\frac{1}{3}(a_n+e_n)+\frac{1}{4}(b_n+d_n)}$$
$${d_{n+1}=\frac{1}{3}(a_n+e_n)+\frac{1}{4}(b_n+c_n)}$$
以上を整理して,
$${a_{n+1}=\dfrac{1}{4}b_n+\dfrac{1}{4}c_n+\dfrac{1}{4}d_n}$$
$${b_{n+1}=\dfrac{1}{3}a_n+\dfrac{1}{4}c_n+\dfrac{1}{4}d_n+\dfrac{1}{3}e_n}$$
$${c_{n+1}=\dfrac{1}{3}a_n+\dfrac{1}{4}b_n+\dfrac{1}{4}d_n+\dfrac{1}{3}e_n}$$
$${d_{n+1}=\dfrac{1}{3}a_n+\dfrac{1}{4}b_n+\dfrac{1}{4}c_n+\dfrac{1}{3}e_n}$$
$${e_{n+1}=\dfrac{1}{4}b_n+\dfrac{1}{4}c_n+\dfrac{1}{4}d_n}$$

(3)
・$${n=1}$$のとき
$${b_1=c_1=d_1=\frac{1}{3}}$$より成り立つ
・$${n=k}$$のとき, $${b_k=c_k=d_k}$$が成り立つと仮定する
$${n=k+1}$$のとき,
(2)より$${b_{k+1}=\frac{1}{3}(a_k+e_k)+\frac{1}{4}(c_k+d_k)}$$
仮定より, $${b_k=c_k=d_k}$$だから, $${\frac{1}{4}(c_k+d_k)=\frac{1}{2}b_k}$$
$${\therefore b_{k+1}=\frac{1}{3}(a_k+e_k)+\frac{1}{2}b_k}$$
同様に考えて,
$${c_{k+1}=\frac{1}{3}(a_k+e_k)+\frac{1}{2}b_k, d_{k+1}=\frac{1}{3}(a_k+e_k)+\frac{1}{2}b_k}$$
よって, $${b_{k+1}=c_{k+1}=d_{k+1}}$$
以上より, すべての自然数に対して$${b_n=c_n=d_n}$$が成り立つ.

(4)
(3)より, $${b_{n+1}=\frac{1}{3}(a_n+e_n)+\frac{1}{2}b_n}$$
また, $${a_{n+1}=e_{n+1}=\frac{1}{4}(b_n+c_n+d_n)=\frac{3}{4}b_n}$$
よって, $${b\ge{2}}$$のとき, $${a_n=e_n=\frac{3}{4}b_{n-1}}$$だから,
$${b_{n+1}=\frac{1}{4}b_{n-1}+\frac{1}{2}b_n}$$
(1)より, これは$${n=1}$$のときも成り立つから, 一般的に
$${b_{n+2}=\frac{1}{2}b_n+\frac{1}{2}b_{n+1}}$$
この辺々から$${b_{n+1}}$$を減じて,
$${b_{n+2}-b_{n+1}=\frac{1}{2}b_n-\frac{1}{2}b_{n+1}=-\frac{1}{2}(b_{n+1}-b_n)}$$
いま$${q_n=b_{n+1}-b_n}$$だから, 上記の式は
$${q_{n+1}=-\frac{1}{2}q_n}$$とできる.
よって, 数列$${\lbrace{q_n}\rbrace}$$は公比$${-\frac{1}{2}}$$の等比数列をなし,$${q_1=\frac{1}{6}-\frac{1}{3}=-\frac{1}{6}}$$だから,
$${q_n=-\dfrac{1}{6}\Big(-\dfrac{1}{2}\Big)^{n-1}}$$である.

(5)
(4)より, $${b_{n+1}-b_n=-\frac{1}{6}(-\frac{1}{2})^{n-1}}$$だから,
$${n\ge{2}}$$のとき
$${b_n=b_1+\sum_{k=1}^{n-1}b_k}$$
$${=\frac{1}{3}+\sum_{k=1}^{n-1}\lbrace{-\frac{1}{6}(-\frac{1}{2})^{k-1}}\rbrace}$$
$${=\frac{1}{3}-\frac{1}{6}•\frac{2}{3}\lbrace{1-(-\frac{1}{2})^{n-1}}\rbrace}$$
$${=\frac{1}{3}-\frac{1}{9}\lbrace{1-(-\frac{1}{2})^{n-1}}\rbrace}$$
この式は$${n=1}$$のときも$${b_1=\frac{1}{3}}$$で成り立つから,
$${b_n=\dfrac{1}{3}-\dfrac{1}{9}\lbrace{1-\Big(-\dfrac{1}{2}\Big)^{n-1}}\rbrace}$$
また、$${a_{n+1}=\frac{3}{4}b_n}$$だから, $${n\ge{2}}$$のとき
$${a_n=\dfrac{1}{4}-\dfrac{1}{12}\lbrace{1-\Big(-\dfrac{1}{2}\Big)^{n-2}}\rbrace}$$

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?