2022年 広島大学 前期 経済 大問2

$${a}$$を正の実数, $${t}$$を$${0\lt{t}\lt{1}}$$を満たす実数とする. 座標平面上の3点$${A(0,a),B(-1,0),C(1,0)}$$を頂点とする二等辺三角形の内接円を$${S}$$とし, その中心が$${I(0,t)}$$であるとする. このとき, 次の問いに答えよ.
(1) $${\angle{IBC}}$$を$${\theta}$$とおく. $${t}$$と$${a}$$を, それぞれ$${\theta}$$を用いて表せ.
(2) $${a}$$を$${t}$$を用いて表せ.
(3) $${\triangle{ABC}}$$の重心が内接円$${S}$$の周上にあるとき, $${t}$$の値を求めよ.
(4) $${\triangle{ABC}}$$の垂心が$${S}$$の周上にあるとき, $${t}$$の値を求めよ. ただし, 三角形の各頂点から対辺, またはその延長に下ろした3本の垂線は1点で交わることが知られており, その交わる点を三角形の垂心と呼ぶ.
(5) $${\triangle{ABC}}$$の外心が$${S}$$の周上にあるとき, $${t}$$の取り得る値を全て求めよ.

解答
(1)
$${\tan{\theta}=\frac{t}{1}}$$だから, $${t=\tan{\theta}}$$である.
$${\angle{ABC}=\angle{IBC}}$$だから$${\angle{ABC}=2\theta}$$なので
$${\tan{2\theta}=\frac{a}{1}}$$
よって, $${a=\tan{2\theta}}$$である.

(2)
(1)と,倍角の公式$${\tan{2\theta}=\frac{2\tan{\theta}}{1-\tan^2{\theta}}}$$を用いて
$${a=\dfrac{2t}{1-t^2}}$$である.

(3)
$${\triangle{ABC}}$$の重心は$${(\frac{-1+0+1}{3},\frac{a+0+0}{3})=(0,\frac{a}{3})}$$である.
内接円$${S}$$は, 中心$${(0,t)}$$半径$${t}$$の円だから, その式は
$${x^2+(y-t)^2=t^2}$$, すなわち$${x^2+y^2-2yt=0}$$と表せる.
よって, $${(0,\frac{a}{3})}$$がこの円周上にあるのは
$${(\frac{a}{3})^2-2(\frac{a}{3})t=0}$$より$${a(a-6t)=0}$$
ここで$${a\gt{0}}$$だから$${a=6t}$$
これと(2)より
$${6t=\frac{2t}{1-t^2}}$$
$${\Leftrightarrow 6t(1-t^2)=2t}$$
$${\Leftrightarrow 6t^2-4t=0}$$
$${0\lt{t}\lt{1}}$$より, $${t=\sqrt{\frac{2}{3}}=\dfrac{\sqrt{6}}{3}}$$

(4)
点$${A}$$から辺$${BC}$$に下ろした垂線は$${x=0}$$なので, 垂心の$${x}$$座標は$${0}$$である.
点$${B}$$から辺$${AC}$$に下ろした垂線は, 点$${(-1,0)}$$を通る傾き$${\frac{1}{a}}$$の直線だから,
$${y=\frac{1}{a}(x+1)}$$と表せる.
これは$${x=0}$$のとき$${y=\frac{1}{a}}$$だから, 垂心は$${(0,\frac{1}{a})}$$である.
これが$${S}$$の周上にあるから, (3)と同様に考えて,
$${(\frac{1}{a})^2-2(\frac{1}{a})t=0}$$より$${a=\frac{1}{2t}}$$を得る.
これと(2)より,
$${\frac{1}{2t}=\frac{2t}{1-t^2}}$$
$${0\lt{t}\lt{1}}$$より, $${t=\sqrt{\frac{1}{5}}=\frac{\sqrt{5}}{5}}$$

(5)
辺$${BC}$$の垂直二等分線は$${x=0}$$なので, 外心の$${x}$$座標は$${0}$$である.
辺$${AC}$$の垂直二等分線は, 点$${(\frac{1}{2},\frac{a}{2})}$$を通る傾き$${\frac{1}{a}}$$の直線だから,
$${y=\frac{1}{a}(x-\frac{1}{2})+\frac{a}{2}}$$と表せる.
これは$${x=0}$$のとき$${y=-\frac{1}{2a}+\frac{a}{2}=\frac{a^2-1}{2a}}$$だから, 外心は$${(0,\frac{a^2-1}{2a})}$$である.
これが$${S}$$の周上にあるから, (3)と同様に考えて
$${(\frac{a^2-1}{2a})^2-2(\frac{a^2-1}{2a})t=0}$$
・$${a=1}$$のとき
 上記式は恒等式となる.
 よって, (2)より$${1=\frac{2t}{1-t^2}}$$だから, $${t^2+2t-1=0}$$
 $${0\lt{t}\lt{1}}$$より$${t=-1+\sqrt{2}}$$である.
・$${a\not=1}$$のとき
 上記式は$${a^2-4at-1=0}$$とできて, $${a\lt{0}}$$より
 $${a=2t+\sqrt{4t^2+1} (\because \sqrt{4t^2+1}\gt{\sqrt{4t^2}}=2t}$$
 よって, (2)より$${2t+\sqrt{4t^2+1}=\frac{2t}{1-t^2}}$$
 $${\Leftrightarrow \sqrt{4t^2+1}=2t(\frac{1}{1-t^2}-1)}$$
 $${\Leftrightarrow \sqrt{4t^2+1}=\frac{2t^3}{1-t^2}}$$
 ここで, 両辺ともに正なので辺々2乗して
 $${4t^2+1=\frac{4t^6}{(1-t^2)^2}}$$
 $${\Leftrightarrow (4t^2+1)(1-2t^3+t^4)=4t^6}$$
 $${\Leftrightarrow 4t^6-7t^4+2t^2+1=4t^6}$$
 $${\Leftrightarrow 7t^4-2t^2-1=0}$$
 いま$${t^2}$$は正なので, これを$${t^2}$$についての2次方程式として考えると
 $${t^2=\frac{1+2\sqrt{2}}{7}}$$となる
 よって, $${t=\sqrt{\frac{1+2\sqrt{2}}{7}}}$$を得る
以上より, 求める$${t}$$は
$${t=-1+\sqrt{2}, \sqrt{\dfrac{1+2\sqrt{2}}{7}}}$$である.

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