見出し画像

ものの住所と思い出の箱と宝物

引っ越しのとても多い人生だ
移動を全部含めると
30回を越えるんじゃなかろうか


子どもの頃
家族からは「ぱなしちゃん」と呼ばれていた
出しっぱなしやりっぱなし開けっぱなし…
片付けられず狭くて暗い場所が好きだった
押し入れや机の下に座卓の下
マットレスをマジックテープで止めて立てた中にこもっていた時は
母に真剣に探された
あと少し這い出すのが遅かったら110番していたかも知れない


父が壊れた二回目の引っ越しの時に
数え切れない家族のものが一気に失くなってしまった
勝手にと言うか…優しく言うと間違えて捨てられてしまった宝物や本の数々

それから私は両端が持ち上がり真っ直ぐ敷けない布団の上と
箪笥二段と半分が自分の場所になった


今思えば何もかもよほどショックだったのだろう
引っ越し以来
箪笥の中はきっちりと畳まれ分けて仕舞われ
ランドセルの中も学校の机の中も筆箱の中も
どこに何がどれだけあるか
把握出来るほど片付ける様になった

今でも自分のものは何処に何が入っているか全て把握している


そして断捨離が広まる前から
私は定期的に物を捨てる癖が始まっていた
捨てスイッチが入ったと呼んでいる

切っ掛けは父の写真を全部捨てた時だった
胸がスッとした

それからこころに靄がかかると
持ち物検査が始まり
どんどん捨てていく

全く思い出せない物と
あぁなんで捨てちゃったんだろうと思う物がある


最近捨てスイッチは入っていないが
片付けたいスイッチがよく入る
まるで巣の手入れをする動物の様だ


片付けながら思い出す
あぁあれなんで捨てちゃったんだろう
思い出して後悔しては忘れる

そのうち
あぁ…
思い出すことも無くなるだろうか


たくさんの思い出から捨てスイッチを免れたもの
とうとうひとつの箱に納まる様になった


代わりに宝物入れが溢れてきた
また宝物を集めたいと思える様になったこと
宝物はとても輝いている

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?