ポスト・メルケルは誰だ?

2021年1月20日。
最大与党CDUの新党首選出。日本の多くのメディアはこのニュースを党首選挙前から大きく取り上げていた。正直なところちょっと驚いた。確かに重要なイベントではあるものの、ポスト・メルケルの次期首相候補がこれで決まったわけではない。「欧州の病人」と揶揄されていたころはドイツに対する関心がもっと薄かったように思う。
ドイツの首相には傑出した人物が多い。戦後の繁栄と安定の基礎を築いたアデナウアー、東方外交で緊張緩和に貢献したブラント、石油危機とテロへの対応やNATOの二重決定で辣腕を振るったシュミットは世界史に大きな足跡を残している。シュミットについては英国の歴史家カーショーが大著『ローラーコースター』で、1970年代の難しい局面でシュミットが政治の舵を取ったことは西ドイツだけでなく欧州全体にとって幸運だったとわざわざ明記しているほどだ。
シュミット後の首相はやや格が落ちるものの、コールは東西ドイツの統一を実現し、シュレーダーも困難な構造改革を断行した。
これら諸先輩と比べると、メルケル首相は特に際立った存在とは言えない。それにもかかわらず極東のメディアが一政党の党首選に注目するのは、ドイツという国の存在感が以前に比べ大きくなっていることの鏡なのかもしれない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?