フォルクスワーゲン問題から現在まで、電動車はどう進んできたか

2021年3月17日。
偶発的な出来事が玉突きのような連鎖反応を引き起こし、状況を大きく変える――。EUの排ガス規制をBMWが順守したという同社の発表を読んでそう思った。炭素中立の実現に本気で取り組む自動車メーカーの動きには驚きを感じる。

欧州の自動車業界はVWの排ガス不正問題発覚を契機に電動車へのシフトを本格的に開始した。ディーゼル車は温暖化防止に寄与する“クリーンな車”だとするそれまでの主張に対する信頼が修復不可能なほどに揺らいだからである。データの偽造はNOxだけでなく、CO2にも及んでいた。
VWは先頭を切ってEV化に乗り出し、他のメーカーも追随した。比較的小規模なジャガーとボルボはそれぞれ25年、30年までに純粋なEVブランドになる。

自動車各社の電動車シフトが始まると、今度は車両の電動化だけでは温暖化防止に寄与できないばかりか、温暖化を加速するとの批判が専門家の間から出てきた。“EVのウソ”に対するこの批判はメディアで大きく取り上げられたことから、メーカーは対応せざるを得なくなった。
その答えは車両のライフサイクル・アセスメント(LCA)である。原料採掘を起点とする全製造工程で排出されるCO2と、動力源の発電時に発生するCO2の量を共に可能な限りゼロの方向に近づけようとしている。

話は少し飛ぶが、ソ連はゴルバチョフが書記長に就任した1985年から6年後の91年に消滅した。米国と張り合う超大国のソ連がペレストロイカという一突きをきっかけに大きく揺れ始め、東欧の共産圏全体があっさり崩壊した。力づくで押さえつけられてきた人々の不満は“万力”が緩められたことで一気に噴き出し、遠心力に歯止めがかからなくなったのである。
ペレストロイカがなければソ連は現在も存続していた可能性がある(脆弱な経済は一段と悪化しているであろうが)。そうしてまた、VWの不正が表面化していなければ、内燃機関車の先行きがこうも急激に不透明になることもなかったのではかなろうか。今年は排ガス不正の発覚から6年目に当たる。

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