2021年10月6日
2021年9月下旬に行われた連邦議会選挙では温暖化問題が大きなテーマの1つとなった。温暖化を認めていない極右のAfDを除きすべての主要政党が何らかの対策を打ち出した。得票率を最も伸ばした政党が緑の党であったことは偶然でないだろう。
温暖化問題に対する関心がこれまでは低かったという訳ではない。温暖化が生活にもたらす深刻な影響を報じるニーズやドキュメント番組は以前から多かった。学校の授業もしかりである。2018年に当時15歳だったスウェーデンのグレタ・トゥーンベリさんが立ち上げた草の根運動「フライデー・フォー・フューチャー」が世界に広がったのはこうした背景があるからだろう。
温暖化対策で筆者が最も驚いているのは、経済界のここ数年の動向である。気候変動に伴う自然災害の増加が保険金という形で直接、跳ね返ってくる保険業界を除き長年、動きは鈍かった。自動車業界で言えば「クリーンディーゼル」や車両の電動化など小手先の対応にとどまっていた。
近年はこれが、原料採掘から廃棄に至る製品ライフサイクル全体で温効ガス排出を抑制する方向へと転換した。鉄鋼、セメント、化学などCO2を大量に排出する業界もグリーン水素やCO2の貯留・有効利用を通して排出をゼロに近づける取り組みを開始。銀行は脱炭素をキーワードに融資先を選別し始めた。短期間でここまで変わるとは正直、予想していなかった。
EUは炭素中立の実現に向けた中間目標を大幅に引き上げた。ドイツも同国の炭素中立達成時期を50年から45年へと前倒ししている。
市民、経済界、政界が同じ絵を見ているのは不思議な感覚だ。この急転換を後世の歴史家がどう評価し説明するかをできれば知りたいと思っている。
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