2022年11月2日

公衆電話が今後数カ月でドイツから姿を消すというニュースを読んだ。ほとんどの人がスマホを持っている現在、当然と言えば当然だろう。1台当たりの平均売上は月数ユーロ。年間を通してまったく利用者のいない電話機は昨年、全体の3分の1を占めたという。公衆電話を運営しているドイツテレコムにとっては収入と維持費の差が極端に大きい超赤字事業である。電話機の交換部品も調達が難しくなっている。これまで同社に運営を義務付けていた法規制が昨年末で廃止されたことから、サービスを停止する。

ケータイ登場以前の時代に成人していた人であれば、多かれ少なかれ公衆電話を利用したのではなかろうか。かく言う筆者は大学時代、東京の下宿に電話機がなかったため、随分お世話になった。ドイツに初めて住んだときも、無事に到着したことを実家に伝えるため、下宿近くの公衆電話を利用した。5マルク玉1枚で話せる時間がえらく短かったことを今も覚えている(当時のドイツの通貨はマルク。若い人は知らないかもしれないので念のために記しておきます)。

ケータイを持つようになってからも、日本に帰国したときは公衆電話をかなり長い間、使っていた。東京駅で公衆電話が見つからず、ホームいた新幹線の運転手にどこにあるか聞いたこともある。「多分、階段を下りた●●にあったような気がします」と教えてくれたが、いまだに使う人間がいるのかという反応だった。利用者は日本でもほとんどいない。すでに歴史上の存在となりつつある。

ドイツテレコムはコイン式のものの運営を11月21日、テレフォンカード式のものも来年1月末で終了する。同国の公衆電話第1号は1881年、ベルリンに設置されたものだそうだから、142年で幕が下りることになる。若い人のなかには公衆電話を使ったことがない人もいるだろう。消滅前に1度使い、その場面をスマホで自撮りすれば時代の変化の記録として有意義かもしれない。

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