学会で協賛企業担当をする際に気をつけるべきこと
主に学会運営アドベントカレンダーに向けて書いています。
https://adventar.org/calendars/4504
私は企業に所属し、研究活動をしながら様々な学術分野に自社製品普及を図るという仕事をしています。同時に幾つかの大学に客員として籍を持っており、企業と大学、学会開催側の立場をある程度理解しています。自社で協賛するイベントや学会などで協賛担当を引き受けることがあります。
ノウハウをマニュアル的に活用して欲しいため、できるだけ簡潔に書いておきます。主な内容は以下です。
1.協賛の意義とリターンを考える
2.決算時期を考慮し、いつ何を連絡するか考えておく
3.資料を用意する
4.見積もり、請求書、領収書のやりとり
まず1からいきましょう。企業はなぜ学会に協賛するのでしょうか? 学会側としては金銭的な支援を受けて学会を運営する、質を高めるという意義があります。では企業の側のメリットはなんでしょうか? もちろん社会的な貢献という面もありますが、企業は営利団体ですのでそれは第一の理由にはなりませんので、企業にとっての明確に利益になるということを示す必要があります。考えられるのは協賛したことを通じて企業のサービスや製品が売れること、もしくは企業の知名度が上がり、採用活動で有利になることです。企業の活動内容とダイレクトにつながる学会の場合、R&Dなどで採用できる優秀な人材を直接見つけられるというメリットもあります。企業が参加するべき理由が明確ならばリターンの内容も考えやすくなります。
プログラムへの広告掲載、グッズ配布、ブース出展、インターバルでのプロモーション映像再生など考えられます。なお、リターンの内容は定番のものを出しつつ何かやりたいことがあるかをヒアリングするとより良いでしょう。弊社はたいてい協賛メニューにないもの(例えば弊社製品を使ったデモにバナーをつけてもらうなど)をお願いしています。
次に2です。これは会社に限らないですが、協賛するには予算が必要です。学会協賛はプロモーション費用としてはごく安い範疇ですが、末端社員が10万円以上のお金を使う際には凛義を通さなければならない場合がほとんどです。協賛などを打診する際、相手がそういった予算を持っていない部署の所属だったりすると連絡を受けた方は社内のしかるべき部署を探し、協賛の意義を説明し、予算をもらうなどの労力をかけてもらう必要があります。そのため、まず十分な時間をとってもらいましょう。できれば開催1年程度前、遅くても半年前には連絡しておくと良いでしょう。なお、この際にすでに予算が決まっていて無理と返答があった場合、例え自分が担当とならなくてもその次の年度での協賛検討をお願いしておきましょう。これにより予算会議の話題に挙げてもらうことができるかも知れません。開催時期と連絡時期の問題で予算が確保されていないので協賛できない、という無限ループを防ぐことができます。なお、年末や3月は決算時期です。例えば12月開催の学会の支払いは年内に終わらせておかなければならない、などのルールが存在する場合がありますのでいつ請求をし、いつ支払ってもらうか予め明確にしておくと企業の担当者や経理に迷惑をかけずに済みます。
3ですがこちらは1と2の内容をWebに掲載する、もしくはPDFなどにまとめてすぐ送付できるようにしておくと良いです。1で書いたように連絡を受けた本人が様々な部署に協賛対象の学会がどのような集まりでどれだけ素晴らしく、協賛する意義があるということを説明して回るのはナンセンスです。予算を出してくれる人を説得できるだけの内容を持った資料を用意し、それを送れば一発で全てわかるというのが理想的です。また、協賛を打診した際にこれを送ることができれば組織や運営がしっかりしているという印象を与えることができ、協賛のハードルも下がるはずです。また、企業はそれぞれ学会に対するニーズが違いますので基本のメニューを用意した上で「その他相談に応じます」と言ったような文言を入れておくと良いでしょう。
最後に4です。会社によっては協賛するかどうか決める前に見積もりが必要となる場合があります。開催日、協賛内容、価格を示した見積書をすぐ出せるようにしておきましょう。協賛担当者本人にこれらが出せる権限があるとは限りませんので、予め学会の会計担当者などとやりとりし見積もり、請求書、領収書などの発行方法や発行にどの程度の時間がかかるかなどは確認しておきましょう。なお、企業によっては協賛金を支払う前にその団体が適正な取引先であることを調査し、登録する必要があります。弊社の場合、組織名が違うと別な組織として扱われるため支払い元が学会だと一度の登録で済みますが、研究会やイベント単位の場合毎回登録が発生しかなり面倒です。また、支払い先の口座が変わるとその都度登録が必要になったりするため、個人的にはできるだけ大きな単位で、かつ固定の口座で取引して欲しいと思っています。
なお、逆に自分ではしなかったこと、企業担当としてしないで欲しいこととして「対面で挨拶に来る」というものがあります。これは学会のジャンルや協賛企業の文化によるかも知れませんが、対面で説明に来ないと協賛してくれないような企業はやりとりする相手としてかなり面倒です。また、受ける側としては協賛を検討するためだけに毎回ミーティングが発生すると調整の手間やそもそもそのために日程を空けなければならないなど手間が増えてネガティブな印象が増していきます。協賛金額が非常に大きかったり、大きなブースを出すので相手企業の人がたくさん絡む、というような時以外はやめておきましょう。行く場合でも事前に対面で話したほうが良いかどうか聞いておきましょう。
さて、すること、しないことはこんなところです。
実際に協賛担当を引き受ける際は以下のような進め方をしています。
開催1年前 協賛担当を引き受ける。スケジュールを立てる
開催半年前まで ざっくり金額と内容を決めておき、口頭で協賛してくれそうな企業に声をかけておく
開催半年前 興味があると言ってくれた相手に学会やイベントの内容、協賛メニューなどを明記した資料を送付し、担当者を紹介してもらう
半年前〜三ヶ月前 担当者とやりとりして他に希望がないかヒアリングしつつ支払い時期などについて通達、見積もりの送付
開催一ヶ月前 デモやステージ担当などを紹介し当日のことなどを相談
開催後 会計担当を紹介し請求書や領収書の送付など
以上です。参考になったでしょうか?
最後にもう一度書いておきますが重要なのは以下の点です。
・窓口担当に手間をかけさせない
・企業の利益を考える、想像できなければ直接聞く
・早めに連絡し、その後何が必要なのか伝えておく
忙しいと何もかも後手に回りがちですが、早い時期から動けば空いている時に多くのことを済ませられます。協賛担当が一度良くない対応をすると後々まで印象が悪くなりますので気をつけましょう。逆にちょっと考えて良い対応をしておくと、他の学会や研究会に差をつけられるはずです!
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