屋根から滴る雨の音に耳を澄ます
貴方は何処に落ちるかで音が微妙に変わることに気が付く
同じブロックの上に何度も同じ所に雨水が垂る
金網、植物、もちろん貴方にも雨は平等に降り注ぐ
雨を避けるため、古びて錆びたトタンの屋根の下に逃げ込んで時間は経ったが、雨は止む気配すらみせない
この街では夜になると決まって雨が降る
それなのに貴方は雨の中傘も持たずに家を飛び出した
理由は何であれ、化学物質が含まれているであろう雨を浴びたら危険なことは分かっていた
気が付くと猫が一匹貴方の隣にちょこんと座っている
同じ宿なし草同士同じ屋根の下で雨が止むまで雨宿りしても良いだろう
スクラップだらけの空き地はしばらく一人と一匹の仮宿となった
雨が止んだら何処へ行こう、と貴方はふと悩む
戻る家も頼れる人も何処にもないし、居ない
ゴミだらけの街はネオンばかりぎらぎらと輝いていて落ち着ける場所もなさそうで
隣の猫がにゃあと鳴く
それだけで、何故か何とかなると思えた

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