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「LGBT×癌」の悩みについて当事者の僕が感じたこと。

こんにちは。ヨーすけです。
今回は「LGBTと癌」について語っていこうと思います。

LGBT
皆さんはこの2つのキーワードを見て、どう感じますか?…何も思い浮かばないでしょうか?もしかすると『その2つには何も関連性がないでしょう』と思う方も多いかもしれませんね。しかしこの2つの言葉の組み合わせは、僕にとっては重要なキーワード。

何故なら僕は、ゲイであり癌経験者だから。
(※タイトルではまとめてLGBTとしていますが、実際にはL,G,B,Tそれぞれで悩みの種類が異ることもあります。わかりやすい議題とするためにそう表記させていただきました。)

癌が発覚した当初は『なんで自分が癌を患ってしまったんだろう』とか『俺って、もうすぐ死ぬのかな』とか。【癌】のことだけに対して悩んだり、将来に不安を抱えたりすることも多かったのですが、治療生活を送る中で徐々に【ゲイであり癌患者であること】に関する悩みが現れてきたんです。

家族に対するカミングアウトの必要性

僕は当時、お付き合いして1年になるパートナーがいたのですが、癌発覚をきっかけに『うちに来る?』とパートナーからのお誘いもあり、転がり込むような形で2人の同棲生活が始まりました。その出来事は僕自身にとって、そして癌の治療にとっても、とても良い影響をもたらしてくれました。

好きな人と一緒に暮らせることの幸せや、彼が元々飼っていた愛犬と過ごす時間が癒しになってくれて、順調に治療効果が表れたことの助けになってくれていたと思います。(癌患者にとって"幸せホルモンの活性化"や"ストレスフリーに過ごせること"は治療効果を上げてくれる重要な要素のひとつだと言われていますからね。)

しかし僕はそれ以前、パートナーとの同棲生活を始める前は実家に住んでいました。そう、実家住みで家族のサポートも受けられる環境にいながら、それには目もくれず、パートナーと過ごす時間を選んだのです。

僕は6人家族の次男。みんながみんな特別仲の良い家族ではありませんでした。家族が5人いても、僕とプライベートで会うような仲の人はほとんどいませんし、恐らく他の家族間でもそうだと思います。そんな家族仲なんだから、無論セクシャリティのカミングアウトなんて出来ていなかった。一生する必要ないとさえ思っていた。

しかし彼との同棲を始め実家を出ようと決めたことで、あるひとつの悩みが出てきました。『家族にどう説明して家を出よう?』と。

『これを機にカミングアウトするか?』『いや、家族が癌ってだけでもショッキングなのに、このタイミングでゲイだなんて言えないよな…』

色々考えた結果、その時は結局カミングアウトするのをやめ『友達の家にお世話になる』と言って家を出ました。実家は最寄駅から遠く、友達宅は駅から近くて通院もしやすいから…なんて言葉も追加しておきましたが、今思うとなんて苦しい言い訳なんだ…と思います(笑)それでも実家を出て、彼の家に行きたいと思う意思は揺らがなかった。結果的にあの時の強行突破的な自分の選択は、間違っていなかったと感じています。

カミングアウトに関しては当初から半年ほど経った頃、家族の中でも比較的連絡を取り合う母と姉にだけはできましたが、これら一連の悩みの出現から「ゲイであり癌患者」であることの居心地の悪さというか、物事がうまく運ばないむず痒さみたいなものを強く感じました。

もちろん男女カップルの間にも、それぞれの事情で親に打ち明けられない、スムーズに同棲生活を始められない、といった悩みが出る場合もあるでしょう。しかし今回の僕のようなケースでは「僕が異性愛者で女性の恋人と同棲生活を始めようと思っていた」なら、カミングアウトについて悩むことも、実家を出る時に「友達に世話になる」なんて苦しい言い訳を絞り出す必要性もなかったはずです。

僕の場合は自分がゲイであることで、病気になった時に病気のことで悩むだけでなく「癌患者でありゲイでもある」という状況があることによって、悪循環のように悩みの種を増殖させていったのです。

ロールモデルがいないことへの不安

僕が体感した「ゲイ×癌」に関する悩みはカミングアウトの問題だけではありません。僕らゲイ(もしくはLGBT全体に言えることかもしれません)は、何か自分の人生に関する悩みや不安が出てきた時に、自然と「同じゲイの人はこういう時どうしてるんだろう…」と思うことがあります。ゲイの皆さん、無意識に「ゲイ 老後」「ゲイ 学歴」などで調べた経験、ありませんか?(そうじゃない方もいらっしゃるかもしれませんが、僕や僕の周りにはそういう人が多いです。)

近年、LGBTに寛容なムードが流れつつある世の中になってはきましたが、それでもまだ"好きな人と結婚できない" "パートナーになれるような人と、自然と出会えることが少ない"などの理由から「将来に不安を抱えているゲイ」の人って多いはず。だから自然と【自分が直面している困難を乗り越えた、ロールモデル的な存在のゲイ】を探してしまうんだと思うんです。そういう人の存在を知ることで、今抱えている不安感を少しでも和らげたいから。

かく言う僕も、癌が発覚してから少しの期間が経ち、自分が癌患者であることをある程度受け入れることが出来てきた頃。ふと『ゲイの人で癌を経験された方ってどれくらいいるんだろう?』と疑問に思い、ネットで[ゲイ 癌][ゲイ がんサバイバー]などで調べたことがあります。

しかしその結果にビックリ。自分が思っていたよりも、かなり情報が少なかったんです。

色んな人に失礼な言葉かもしれませんが、そんな少ない検索結果を見た時『生きづらいゲイな上に若くして癌なんて、こんな不幸な人間俺だけなのか?』とすら思ってしまった。

その時の検索の仕方が悪かったのか、今調べるとある程度の数のブログやSNSが見つかりはしますが、それでも少ないことには変わりありません。そもそも自分のマイノリティなセクシャリティを公表すること自体、最近になってできるようになってきたのですから…更に癌のカミングアウトとなると、情報が少ないのは仕方ないことなのかもしれませんが…僕はショックでした。

ロールモデルは多ければ多いほど良いと思うので、これから徐々に「LGBTと癌」についての情報が増えてくれることを祈ります。母数が増えることでより自分と重ね合わせて考えられる可能性も高くなり、更に具体性のある安心材料として不安を和らげてくれるでしょうから。

誰かの不安を和らげられる存在になりたい

長くなってしまいましたが、そんな経験から僕は「これだけ情報が少ないってことは、もし僕と同じような人が現れた時、不安に思う人がまた出てきてしまうかも…」と思いました。

癌を患う前から何かしらの発信活動をしたいと思っていたこともあり、そんな承認欲求と自分勝手な使命感が融合した結果『情報がないなら、僕が情報になろう』『誰かの不安を和らげられるロールモデルになろう』と思って、blogやYouTubeでの活動を始めるに至りました。

今現在。僕の癌治療は一旦終了し、経過観察期間となってはいますが"完治した"わけではありません。そういった点では「今後最悪の展開が待ち望んでいるかもしれない」ことから、良い意味でのロールモデルにはなれないのかもしれません。

でも「ゲイであり癌患者でもある」って人は他にもいるんだ。戦っているのは僕だけじゃないんだと。…そうやって、自分と同じような境遇の人がいるって感じられるだけで、自分は1人じゃないと思えて安心できるってこともあるんじゃないかと思います。僕自身もそうでした。

今はまだまだ【LGBTと癌】に関する情報は少ないです。だからこそ、当事者の方には積極的に情報発信をしてほしいですし、僕も余力のある限り続けていこうと思ってます。(※勿論、現在闘病中の方はお身体のことが第一です。ご無理のない程度に活動されてください。)

そしてこれを見て下さっている、毎日を健康に過ごしているLGBTの方へ質問です。「もしあなたが突然大病を患ったら、その後どうしますか?」

病気になるだけでも大変なことですが、LGBTということで更に様々な悩みの種が付いてくるはず。お金や仕事はどうするか?パートナーと家族の問題はどうするか?病院選びはどうするのか?…そう言ったことを前もって調べておくことで、撒かれた悩みの種が咲くことを少しでも減らすことが出来るかもしれませんよ。

パートナーがいる方は、ぜひパートナーとご一緒に。気恥ずかしいでしょうけど「いつか来るかもしれない日のために。」ゆっくりと話し合って、改めてこの機会に自分の人生について考えてみてはいかがですか?

勿論、ずっと健康でいられることを信じるのも素敵ですが…こういうことを知識として得ておくことに損はないはずですから。

ヨーすけ

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