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地雷プレイヤーがいる! ネトゲとして見た『ガンダムビルドダイバーズ Re:RISE』のリアリティ

あなたはプラモ狂四郎世代?それともガンダム野郎世代?ガンダムは知らないけどネトゲにはハマった?
わかりました。あなたはYouTubeで『ガンダムビルドダイバーズ Re:RISE』を見るしかないでしょう。

この記事ではアニメ『ガンダムビルドダイバーズ Re:RISE』を見た時に、私がネトゲ経験者として魅力的に感じた点を語ります。
私はSDガンダム世代なので人並みにはガンダムの知識もありますが、主旨から外れるので必要以上は触れません、多分。

ガンダムビルドシリーズとRe:RISEの概略

まずはガンダムビルドシリーズについて。知ってる人は飛ばしてください。
ガンダムビルドシリーズはガンダムを主題としたいわゆる戦記物ではなく、ガンダムのプラモデル=“ガンプラ”を使って少年たちがバトルするホビーアニメです。
古くはプラモ狂四郎やガンダム野郎などのガンプラ(またはBB戦士)漫画の系譜にあたります。というかその二作品のオリジナルガンダムも登場します。

初代ガンダムから最新作手前くらいまでの各ガンダムと、外伝作品やSDガンダムまで幅広く登場します。
個人的には正直、毎回毎回合体してリアルタイプになるSDなんてSDじゃねーよ最初から合体して出撃しろよって思いますが…。
原作を知らないでもパロディネタについていけないくらいしか支障がないので、既存のガンダムに触れたことがない人にもオススメのシリーズになっています。

第一作『ガンダムビルドファイターズ』は一番始めにして、一番熱く激しい作品です。

出来のいいガンプラほど強いというビルダー重視のシステムと、でも操縦が上手くないと勝てないというファイターも大事な世界観の中で、ガンプラの制作技術はピカイチだけど操縦が下手な主人公が、ガンプラは知らないけど操縦は一級品の相棒と出会って世界大会を目指します。まさしく彼らこそビルドファイターズ。
そしてこの作品ではガンプラを直接バトルさせるため、ダメージを負えばガンプラは壊れます。
強くするためにたくさん改造した愛機(ガンプラ)が強敵とのバトルで壊れる。でも壊れたら直す。負けた方も直す。何度だって直してやる
ホビーアニメの中でもこれほど制作過程を大事にした作品はありません。

第二作『ガンダムビルドファイターズトライ』は、前作ビルドファイターズの数年後を舞台にした続編になります。
ただし主役は一新され、目標も世界大会優勝ではなく、日本の中学生のトップを決める3on3のチーム戦大会“ガンプラ甲子園”に。
なんか新ルールが追加されてガンプラが壊れなくなったことで、ガンプラ制作の描写はかなり減って、代わりにラブコメ要素が入ってきます。
そしてバトルは大味な極太ビームの撃ち合いが中心。
方向性がかなり違うので、こちらの方が好きという人もいるかもしれません。

第三作『ガンダムビルドダイバーズ』は前二作から今度は世界設定を一新。
舞台はネットワーク上の仮想世界“GBN(ガンプラバトル・ネクサスオンライン)”。
ダイバー(GBNにおけるプレイヤー)はアバターでGBNにログインし、スキャンしたガンプラを操縦して他プレイヤーと広大な世界を冒険します。
従来のビルド&ファイトに加え、レベルを上げて必殺技を覚えるゲーム的設定や入手した装備を射出成形機で出力してガンプラに装備する機能が追加され、もはや完全にガンプラMMORPGになっています。
世界観もストーリーも今風の要素を取り入れてて面白いんです。

そして第四作こそが、『ガンダムビルドダイバーズ Re:RISE』(以下Re:RISE)です。

名前からもわかるように、前作ビルドダイバーズと世界設定を共通にしています。
“Re:”とついていますが主役はまたもや一新されているので、全然この作品から視聴可能になっています。むしろこの作品を見てほしい。
偶然にもフォース(GBNにおけるチームやギルド)を組むことになった4人のダイバーが紡ぐ物語で、前作よりさらにネトゲ色が濃くなっているのが特長です。

ちなみにガンダムビルドシリーズは作品を経るごとにメインガンプラのチョイスがマニアックになる傾向があり、四作目のRe:RISEともなると相当です。
4機のうち一機はなんと∀ガンダムよりウォドム。人型じゃない。ちゃんとガシュガシュと独自の走り方をします。私はウォドム、当時からかなり好きです。
そしてもう一機すごいのがいて、なんとなんと、“機動戦士ガンダム00の外伝のガンダムをガンドランダー風にオリジナルアレンジした女性型SDガンダム(変形可能)”、です。長い。
ガンドランダー、わかりますか?戦国伝・外伝・コマンド戦記の次くらいのポジで、なんか髪がニョロニョロしたSDガンダムが剣を持ってモンスターと戦うガシャポンメインで展開されたやつです。
そして最近のSDガンダムには女性型がいるんです。カワイイ。
この二機が普通のガンダムと並んで違和感がない懐の広さがガンダムビルドシリーズのいいところです。
もうこれ以上のゲテ…ビックリドッキリチョイスとなると、昔ボンボンで連載してた“超Cガンダム”を持ってくるしかない気がしますね…。

ガンプラチョイス

左:ウォドムのカスタムガンプラ。操縦者は美少女。グヘヘ。
右:機動戦士ガンダム00の外伝のガンダムをガンドランダー風にオリジナルアレンジした女性型SDガンダム(変形可能)。これテストに出るよ。

話が逸れました。
次項から、Re:RISEの主役陣がいかにネトゲ色が濃い=リアリティがあるかという説明をしていきます。

1. 地雷プレイヤーが主役にいる!

“フレのフレ”というフレーズを聞いたらネトゲ経験者なら警戒せずにはいられないだろう。
フレが信頼できるからといってそのフレまで信頼できるとは限らない。下手なプレイ。画面を見ない。知ったかぶり。etcetc...
フレのフレは地雷プレイヤーのフラグ。

主役の一人、カザミはまさしく地雷プレイヤーを体現したようなキャラクターです。

カザミ

地雷プレイヤーのカザミ(チャンネル登録者数4人)

カザミは正義の人気配信ダイバー“キャプテン・ジオン”に憧れるダイバーです。
リーダーとして華麗に活躍する自分の姿を配信してヒーローになろうとするのですが・・・ハッキリ言って弱い。
火力がないならそれなりの役割がありそうなものの、事前に決めた作戦を無視して単身で突出してはボコボコにされる。リーダーを自称しても誰も取り合ってくれない。活躍したいならガンプラの強化や練習に励めばいいのにそれもしない。必然的に配信の再生数も全く伸びない。
知ったかぶりはしないものの嘘に近い自慢も多く、典型的な地雷ダプレイヤー、それがカザミ。
実際、1話冒頭で周囲のダイバーからフカし発言を揶揄されていますし、かつて組んでいた仲間からは“自分勝手で成長がないやつ”として快く思われていません。

ですが私はカザミというキャラクターを嫌いではないです。
むしろ好きだしその存在を評価しています。
前作ビルドダイバーズにおけるGBNは、ガンプラに無知かつゲームに疎いビギナーがトップランカーと渡り合えてしまう、今風かもしれないけど「そんなネトゲないし実際あっても絶対プレイしたくねー」という魅力に欠けた世界観でした。(ビルドファイターズ、~トライには初心者が強いエクスキューズがありました)
“設定は神ゲーなのにどう見てもクソゲー”というのは、なろう小説なんかでも顕著なあるあるです。
それがカザミという地雷プレイヤーを一人配置するだけで世界観のリアリティが圧倒的に増すんですね。
私がこの記事を書こうと思ったのもカザミの存在がきっかけです。
視聴時は毎週「終盤にリアルが披露されたら多分カザミはキッズなんだろうな〜」とカザミの地雷っぷりを楽しみにしていました。

また、カザミは慎重、ないし臆病な他メンバーをその無鉄砲な行動力で引っ張っていく推進力としての役割や、わかりやすい成長バロメーターとしての役割を兼ね備えた、物語構造上の必要不可欠な存在でもあります。
オーディオコメンタリーで多くのスタッフ・キャストがその旨に言及していますし、視聴者の認識も一致するところでしょう。

地雷プレイヤー・カザミを愛でるためだけでもRe:RISEには視聴する価値があります。

2. フレンドリーファイア上等!

カザミがエネミーを倒せずにもつれていると、諸共に殲滅を図るのがクールビューティーのメイ。

メイ

メイのフレンドリーファイア

意図的なフレンドリーファイアもネトゲでよく見られる光景です。
味方を攻撃できないゲームでも魅了のような状態異常になった時だけ攻撃できる場合もあり、そういうゲームでは「魅了に供えてないお前が悪い」とばかりに味方ごと、むしろ味方に全力攻撃を叩き込むプレイヤーがいます。

もっとも、メイはカザミが地雷プレイヤーだから憂さ晴らしにフレンドリーファイアしているわけではありません。
作中の描写から読み取るに、彼女は“それが総合的に見てもっとも勝利に近い選択肢だから”攻撃しているに過ぎないわけです。
格闘戦も射撃戦もこなし冷徹で判断力に優れている、ただしチームプレイに重きを置かない。それがメイというキャラクターです。

メイの行動にもネトゲとして一定のリアリティがありますし、カザミの地雷プレイにイラついた視聴者をスカッとさせる役割も担っているのではないかと思います。なかなか巧みな人物配置です。
また、メイの後述する主人公ヒロトと比較して類似点・相違点が脚本上で丁寧に語られているのも好感が持てます。

余談ですが、メイのバックボーンが明かされた瞬間に彼女の使用ガンプラ“ウォドム”のチョイスが複数のガンダム作品にかけたダブルミーニングであることがわかるのは面白い仕掛けだと思います。
当時1話でウォドムを見た時点で全部読み解いた人はかなりスゴい。

3. 介護プレイで傭兵プレイな主人公

プレイを間違えることなく、好き勝手に動くカザミやメイの“介護プレイ”(後始末)をするのがRe:RISEの主人公・ヒロトです。

ヒロト

介護プレイが染み付いた主人公・ヒロト

ヒロトはGBN歴も長く上級者の腕前を持ちつつも、フォースに所属せず、報酬と引き換えに依頼されたミッションに同行してキャリーする傭兵プレイを続ける野良ダイバーです。

そんなヒロトが偶然居合わせたカザミ、メイ、そして最後の一人・パルと仮初のフォースを組んで謎のミッションに挑むのがRe:RISEのあらすじなわけですが、ヒロトは一番のベテランでありながらチームプレイに消極的。
実際、地雷プレイヤーのカザミ、戦闘力は高いがフレンドリーファイアも厭わないメイに加えて臆病で動きの悪いパルがメンバーでは期待するのが無理というもの。
周囲が同意する範囲でできる限りの準備はするけど、いざ本番となれば自分が介護プレイに徹して何とかすればいい

一定以上の腕前をもったゲーマーにとってもっとも共感できるキャラクターはこのヒロトではないでしょうか。
そうでない視聴者にとっても、ヒロトの活躍に感情移入するのは気持ちいいでしょう。
ある種の全能感。頼りない周囲への優越感。少なからず介護プレイをする時、そういった感覚があるのは否定できません。

実際、状況に合わせて分離合体するガンプラとそれを使いこなす操縦テクを持ち合わせているヒロトは危機的状況を解決してしまいます。他キャラクターのメイン回であっても同等の活躍はこなす。
だから何も問題はないし、周囲も強くは出られない。勝ち続ける限りヒロトは正しいわけです。
でも独力での勝利が望めなくなった時、そういう正統性は失われてしまう。負けが許されない戦いともなれば尚更のことです。
そうなった時に他者との対話の中で見えてくるものがある。なぜ自分は介護プレイをするようになったのか?自身ですら気づいてない本心は一体何なのか?ヒロトの心情的な転換はRe:RISE最大の見せ場の一つです。

4. 忘れえぬ大切なフレとの想い出

介護プレイともう一つ、ヒロトを形作る要素がフレとの想い出。

イブ

ネトゲの中でもMMORPGなんかでは時にリアルを超えるほど仲がいいフレができることがあります。
ヒロトにもそんなフレがいました。それが女性ダイバーのイヴです。
回想シーンの中でヒロトとイヴは一緒にGBN中を冒険して周って、本当に仲がいい。

それがこれもまたありがちなことに、ある日突然にイヴがいなくなってしまいます。断片的な回想からは決して円満な別れでなかったことが見て取れます。
そうなった時、ヒロトのプレイスタイルは歪んでしまい、さらにはリアルの人格にまで影響が及んだのです。
屈託なく笑っていたヒロトは無感情な人間に変貌してしまう。

これはアニメならではの誇張表現“などではない”です。
実際に、心から大切なフレとの関係に異変が生じた時、リアルに変調を来たすプレイヤーは多いはずです。
私は体調を崩して病院に行ったことがありますし、結構引きずる性格なので円満な“卒業”による別れでもしばらくは辛く感じる性質です。

私は、このイヴとの想い出こそが地雷プレイヤーの存在と並んでGBNの世界観に深みを与えている要素だと考えています。
前作の主人公・リクはデビューした途端に親切な有名ダイバーと知り合いになって次から次へとトップランカーを紹介され、いつの間にか当人もランカー並の腕前になり仲間もトップフォース並の少数精鋭でGBNを揺るがす事件に巻き込まれていく…というなかなかに“もってる”主人公でした。
それはそれで正しい物語構造ですし爽快なのですが、ゲーマーとしての私はどこか冷めた目で見てしまいます。
対照的にヒロトはプレイ歴に裏打ちされた実力者です。そのプレイ歴について想像した時、親しいフレが出来て別れも経験しているというのはいかにもありそうなことなんですね。

そして設定や脚本だけで“あるある”な出来事として扱われているのでなく、計算された演出と水瀬いのりさんの演技で作り上げられた輝くような想い出がリアリティを押し上げているのです。
もしかしたら同様の体験がない視聴者にはあまり共感できないかもしれず、オーディオコメンタリーではそこまで人気がないヒロトですが、私はすごく共感できるキャラクターです。

5. 仲良く遊びたいけど誘い待ち

ログインすると頻繁に挨拶してくる人がいる。だからといって何か誘いがあるわけでもない。会話を振ってくるわけでもない。でも本人は他人と一緒に遊ぶ気満々らしい。
そういう人とネトゲで遭遇したことは?

息の合ったチームプレイをしてみたいけど引っ込み思案で他人に声がかけられない。いわゆる“誘い待ち”がパルことパルヴィーズです。

パル

チームプレイに憧れる誘い待ちのパル

他三人が一切チームプレイをする気がない中、一人だけチーム志向のパルは一番まともな感性のキャラクターかもしれません。

ではパルが積極的に動うことでチームプレイが成立するようになるかというと、そういうキャラではありません。
偶然フォースが成立した後でも引っ込み思案な性格が災いしてハッキリ意見を言うことができず、バトルでは臆病さゆえに足を引っ張りがち。結果、フォースはバラバラの戦いを継続してしまう。
それがパルなんです。その無力さ故のリアリティがある。

自分からは声をかけないし、パーティーを組んでも自分からはやりたいことを言わない。構成も作戦も他人任せ。
そういうプレイヤーは結構ネトゲに多いです。

チームプレイが報われる瞬間がある

バラバラでチームプレイが成立しない4人。
その成立しなさにもまたリアリティがあります。

実際、見知らぬメンバーがいきなり結束して華麗なチームプレイ!なんてシーンは現実にはないわけですよ。
何かしらのゲーム配信を見ているとわかることですが、トッププレイヤーですらいきなり野良でチームプレイを成立させることは無理ゲーです。それはどのタイトルであっても同じこと。
自分の性能、仲間の性能と行動傾向、相手の性能…そういった情報を把握したうえで試行錯誤してようやく成り立つのがチームプレイ。

だからこそチームプレイが決まった時、ハマった時が楽しい。
時に知り合いと、時に見知らぬ仲間と連戦を重ねるうちに息が合っていき、最後には勝利を収める。
そういうチームプレイが成立していく過程を楽しめるのも、Re:RISEの魅力です。

EX. ゲームだと思っていたはずが…?

これはネットゲームというよりゲームもののあるあるです。古くは『エンダーのゲーム』あたりからでしょうか。

Re:RISEの舞台・エルドラが単なるGBNの1マップではなさそうなことは、当初から視聴者には感じられることです。
ヒロト達は視聴者と対照的にただのゲームとして何一つ疑うことなくミッションを遂行していき、やがては世界の秘密に近づいていく…。

これは創作物のあるあるなので、現実のゲームとしては全くリアリティがないです。
ただ、ネトゲのプレイヤーとして一定のリアリティを持った主人公達が非現実的状況に陥った時にどう行動していくか、あるいは自分ならどうするだろうか?そういう楽しさがあります。

実際カザミなんかはゲームだと思って相当に地雷プレイをしまくっているので、事態を深刻に受け止めたらメンタルがどうなってしまうのか、そこまで描いてほしいような描いてほしくないような…。

おわりに・2nd Seasonもあります

自分なりに『ガンダムビルドダイバーズ Re:RISE』の面白いと思うところを語ってみましたがいかがでしょうか?
少しでも興味を持った方はとりあえずYouTubeで1話目を視聴してみてください。気に入ったらそのまま全話視聴できます。

来月からは2nd Seasonも放送開始されます。
1st Seasonが好評だったのためTVでも放送されるようです。

もうあなたは『ガンダムビルドダイバーズ Re:RISE』を見るしかないでしょう。■

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