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『コードギアス 復活のルルーシュ』:反復と反転の物語

待ちに待ったコードギアス新作は文句なしの★5だ。
亡国のアキト終盤のようにダレることはなかった。しっかりと物語の軸を持ってコードギアスらしく最後まで畳み掛けてくれた。
『復活のルルーシュ』の物語とは何かといえば、ルルーシュとC.C.を始めとした、いくつもの関係に他ならなかった。
以下、ネタバレ全開で感想と考察を書いていく。

私とコードギアス

私は一期初期にはまったファンで、当時はDVDとサントラとドラマCDを買い集めた。
R2の開始前には珍しくニュータイプを買って「ルルーシュの知略とスザクの武勇を持ち合わせた星刻ってどんな活躍をするんだ?」など思いを馳せた。(ただの藤堂二号だった)
『亡国のアキト』終盤でガッカリしたり、『双貌のオズ』しか楽しみがなくなったりした、ありふれたギアスファンだ。
ありふれたファンらしく、『興道』で何やらストーリーが変わるらしいと聞いて、『叛道』『皇道』を見に行って久々にギアス熱は高まった。

映画館とギアス

『復活』は三部作から変わらず名古屋での上映が少なく、引き続き伏見ミリオン座で鑑賞することにした。
チケットを買うと、なんとオリジナルドリンク『ルルーシュの願い』のチラシが。

「願い」と書いて「ギアス」と読む。命名者のセンスが素晴らしい。
実際に買った商品はルルーシュの瞳と同じ紫色。
上映開始直前に口にしてギアスにかかる。舌に突き刺さる炭酸がギアスの味。

Re: とRe:surrection

「Re: 」とは、コードが発動しなかった/回収役のシャーリーが生存しなかった空白の未来を意味していた。
そして『皇道』は「Re:surrection」へと繋がった。

そして「Re: 」の意味がもう一つ。
それは現世に留まったルルーシュが誰でもない空白ということ。人格が宿った時、「Re:surrection」は完成する。

反復するルルーシュとC.C.の物語

『復活のルルーシュ』の骨子は疑いの余地なく、この二人の物語だった。
R2より前、いまだルルーシュとC.C.が二人だけの秘密を分け合っていた時代を『復活』は反復する。

終わりのない旅を続けながら献身的にルルーシュを世話するC.C.は、マオを始めとする幾多のギアスユーザーに接した姿の反復だ。寿命がないから無限の愛を注ぐことができる一方で、いずれ訪れる時のためという打算も持ち合わせている。

拘束服に身を包みトラックで輸送されるC.C.は、ルルーシュとの出会いを反復する。
そして拘束服から白いパイロットスーツに着替えたC.C.は、ルルーシュと共に複座式の月虹影(ガウェインの後継機)に乗り込む。
(なぜかスーツがハイレグになってちょっとエッチな感じに…。ナイトオブトゥエルブの呪い?)

そして物語はリフレインを超えた。
かつて一方的にキスをしてルルーシュを放り出したC.C.が、ルルーシュに自分から気持ちを伝えたこと。
『復活』のルルーシュとC.C.は、神根島で別れることなく戦い続けた二人の未来に他ならなかった。

ルルーシュとスザクの物語

二人の物語はゼロレクイエムで完成している。
どれだけスザクがゼロを重荷に感じても、もはやルルーシュにもスザクにかけられた“ゼロの呪い”を解くことはできない。
スザクの救済が描かれるとしたら、それは『ルルーシュ』ではない新しい物語なのだろう。

ルルーシュとナナリーの物語

この二人の物語に唯一残ったピースとして反復されたのが、ナナリーの救出劇だった。
そしてついにルルーシュはナナリーの救出を果たした。ナナリーが自立した後というタイミングも皮肉だったし、ルルーシュがナナリーと暮らさないのも皮肉だった。
しかし、皮肉と感じること自体がナナリーに失礼なのかもしれない。彼女は彼女の人生を歩んでゆく。

Re:surrectionからRe: へ

ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアはゼロレクイエムによって葬り去られた。
ゼロの仮面はスザクに返した。
ナナリーと共に暮らすルルーシュ・ランペルージはもはや不要となった。

そうやって名前が不要になったルルーシュが、L.L.となることで初めてC.C.を心からの笑顔をあげることができた。
『復活のルルーシュ』は、Re:frainを経て、再び復活が空白に返る物語だった。


反転したランペルージ兄妹としての姉弟

『復活』の敵役であるシャムナとシャリオには既存の関係の反転がいくつも盛り込まれている。
一番わかりやすいのがルルーシュとナナリーの関係の反転だ。
ギアスの力でブリタニアと戦って居場所を守ろうとするシャムナと、目と足にハンディを負って姉に守られる王・シャリオは、性別が反転したルルーシュとナナリーに他ならない。

シャムナとシャリオの関係にはルルーシュとナナリーとは異なる点もある。
姉が弟に嘘をつかない。自分達の正体を隠さないでもいい。そして、二人の関係は閉じている。二人の周囲には指示を待つ部下しかいない。
二人で入る風呂は閉じた関係性を象徴している。王族だから羞恥心がないというだけではない。彼らには咲世子のように安心して任せられる人物がいないのだ。

反転したスザクとしてのシャリオ

スザクと対峙する時、シャリオはスザクの反転となる。
ルルーシュのギアスで「生きる」スザクと、シャムナの予言で死を回避するシャリオ。父殺しによって日本人を苦しめた罪を負ったスザクと、戦士の国に生れながら脆弱な身体を維持するために民を苦しめる罪を負うシャリオ。そして、愛する人を守れなかったスザクと、愛する人を守るため戦うシャリオ。

反転したC.C.としてのシャムナ

シャムナもまた、C.C.の反転としての側面を持つ。
シャムナも不死の魔女であり、自らの人生を終えるため、Cの世界を改変する計画を実行に移そうとする。
そして他人とは異なる時間を生きる苦しみを抱いている。

ルルーシュとシャムナの物語

シャムナはもう一人のルルーシュだ。ギアスの力で世界を思い通りにしようとした過去のルルーシュ。
二人の間を分けたのは周囲との関係性だった。叱咤激励してくれたC.C.、無茶をやらかす玉城、突飛な指示を信じてくれる仲間。
過去をギアスで否定するシャムナは、明日を願うルルーシュに敗北した。

ルルーシュの行動によってギアスが狂い、国が窮し、今またルルーシュによって滅びようとするシャムナとシャリオは哀れな存在にも見える。
しかし彼らは助けを求めれる立場にあった。ナナリーの難民キャンプはすぐ側まで来ていた。
それができなかったのは、やはり二人の関係が閉じていたからだろう。


書きたいことが多すぎたのでその2に続く。


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