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供給制約の時代。地方街弁が見た変化 #007

昨日と今日の木下斉さんのVoicyにヒントを得て書きます。

日本は長らく供給過剰を前提に社会が形成されてきたのですが、それが激変してきています。しかもそれは地方から発生してきています。なのでまだまだ気づいていない人が多い。


なぜ現場の人たちの価値が上がるかといえば、それはAIと過剰供給のホワイトワーカーのみならず、そもそも生産年齢人口が激減する割に、需要は減らないから。人口においては少子高齢化時代は先に生産年齢人口が減り、総人口が減るという遅効性がある。で、地方は生産年齢人口激減し、さらに一部では高齢者の死亡数が増加して総人口が減少していっている。そして一部では高齢化する人口すら減って年寄りすら減る。これが最終ターン。

前半の放送の放送概要を引用

これらの放送は、どちらかというと人的資本の問題にフォーカスしているのでドンピシャではないですが、この供給過多から供給制約に転換しつつある問題、私も去年くらいから感じていたことでした。

日本全体の問題としてみんな感じていることなのかな、と思いきや、意外とそうでもないのかもしれない。

であれば、地方で自分が体験したことを発信するのにも意味があるのかな、と思い、仕事で接したエピソードをいくつかご紹介します(事案はちょっと変えています)。

事例①量販店に対する値上げ要請

とある大規模量販店をお客さんに持つ、ある企業のお話。数年来、価格を据置きで販売してきたが、とうとう値上げをしないと利益がほとんど出ない状態になってしまった。

お客さんには販売価格の一斉値上げを打診したが、担当者はいつも「検討します」ばかりで話が進まない。そこで、どのように値上げ要請を進めたら良いか、というご相談。

事例②値上げで解決しないので事業撤退

あるメーカーの〇次下請をしている事業所を持つ、別の企業の話。その事業で値上げを試みたが、試算すると多少の値上げでは全くの焼け石に水。

そのため、数ヶ月の予告期間を経てその事業から撤退したいが、元請からは文句を言われることは必至。そこで、弁護士を間に入れて話せないか、というご相談。

事例③値上げに備えた条項を契約書に追加したい

またまた別の企業の話。原料高や人件費高騰で値上げをしないと採算が合わなくなりそうだが、取引先は値上げの話にまったく取り合ってくれない。

そこで、今後は契約書の文言を工夫することで、もっと値上げをしやすくできないか、というご相談。

いま進んでいる地方中小企業の二極化

このように、去年くらいから、取引価格の値上げに関連する相談を受けることがなんだか増えてきたな、と感じています。

しかし、先に紹介した事例のように、値上げや採算事業への注力に向けた動きができる企業ばかりではありません。価格を上げたら仕事がなくなってしまうので上げられない、値上げの話をしたら他社に乗り換えられてしまった、という話もいっぱいあります。

このように、既に地方の中小企業では、価格の適正化に向けて具体的なアクションをとれる企業と、値上げにも事業転換にも踏み切れない企業の二極化がかなり進んでいると感じます。

先の事例は、いずれも価格の適正化に向けて具体的なアクションをとれる企業。なぜこのようなアクションをとれるかというと、値上げしても買ってもらえる価値や品質が確立している、または、何本も大口顧客や事業の柱があるので一つを失っても生き残れる、といったちゃんとした理由があります。

私が受けたご相談事例も、容易ではありませんでしたが、いずれも結果的に値上げ交渉に成功したり、事業撤退して空いた設備を採算事業に転用したりして堅調に事業を営んでいます。

他方、値上げにも事業転換にも踏み切れない企業は、当面は取引を維持できたとしても、何か手を打たないとかなり厳しい状況にあると考えます。既に、最近の倒産案件には、価格の適正化ができなかったのが主要な原因だったんだろうな、と伺われる案件も結構ありますが、この流れはさらに加速するはずです。

値上げして取引を打ち切られたり減らされたりしても大丈夫、という企業は値上げに踏み切れる、逆に、取引を打ち切られては困る企業は値上げできず、厳しい状況が続く。こんな二極化は、地方ではもうとっくのとうに始まっていると感じます。

この状況、需要側から見ると、価格が上がっても取引を続けるか、価格が上がるなら別の安く売ってくれる企業と取引するかの二択。しかし、後者の企業の廃業や倒産は既に始まっていますし、今後も、正直あと何十年、いや、何年同じように取引できるかはわかりません。

つまり、需要側にとって「今までみたいに安くたくさん売ってくれる」企業は既にいなくなり始めているのです。

先の事例で「値上げ等を要求した相手」は、主に都市部の大企業。こんな地方零細事務所でも変化を感じているのだから、都市部の大企業は「今までみたいに安くたくさん売ってくれる」地方の中小企業がいなくなりつつあることにさぞかし強い危機感を覚えているのではないか、と考えていました。

しかし、木下さんの放送を聴くと、現時点で、このことに対する危機感を現実のものとして捉えている需要者はそう多くはないのではないのかもしれません。

以上、とある地方の街弁からの報告でした!


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