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街弁ってすごいなと感じた初年度。多かった相談 #023

どうでもいい話ですが、昨日、1日中ニットを前後、そして裏表に来ていることに夜になって初めて気付きました。襟元にタグが見えてたので会った人は気付いてたはずなのですが、誰も教えてくれませんでした…

気を取り直して、企業法務→一般民事への転向について書くシリーズ第ニ弾です。

第一弾もよろしければご覧ください。

今では、やや事務所にカラーがついてきて、相談や依頼案件のジャンルや顧客層に少し偏りが出てきています。しかし、最初の頃は、何の伝手もないし、どこに需要があるのかわからなかったため、割と来る者拒まずで相談や依頼を受けていました。

そんな初年度に多かった相談=地方街弁に典型的な相談という部分があるかな、と思い、今回は、初年度多かった相談を振り返ります。

離婚

離婚の相談は多かったですし、その後もコンスタントに多いです。

特に地方の女性弁護士だと多いのだと思います。なぜなら「同性の方が相談しやすい」という女性の相談者が一定数いる一方、地域の女性弁護士は絶対数が少ないので、一人に相談が集中する傾向にあるためです。

ただ、依頼に至らず相談で終わるケースは多いです。調停・裁判での離婚は年間離婚件数の10%にも満たないわけですし、調停までなら弁護士に頼まずやる、という方も多いですので。

私は、離婚の特徴としては、①法律の知識はあまりいらないが、社会生活上のさまざまな知識が必要なこと、②事実認定スキルはあまり要求されないことが挙げられるかなと思います。

①について、これから離婚する可能性がある、という状況の場合、使う条文が少なく、法律の条文を当てはめて解決、ということはほとんどないです。

他方、社会生活上のさまざまな知識は必要です。離婚後の住宅ローンのこと、社会保険のこと、ひとり親世帯への支援措置のこと、年金のことなど、いろいろ聞かれます。詳しいことは銀行や役所に聞いてもらうにしても、弁護士も一般的なことは知っていて説明できるのが望ましいです。

②は①と関連しますが、離婚案件において証拠をしっかり固めて事実認定をする場面は本当に少ないと感じています。緻密な事実認定が必要になる場面といえば、代表的なのは不貞やDVを離婚原因にしたり慰謝料請求の対象としたりする場合やくらいですが、進行によっては細かい主張立証や事実認定はしないまま終わることも少なくありません。豊富に証拠があるとも限りませんし。

離婚案件は、訴訟案件に必要な客観的証拠から事実を認定する、みたいな作業よりも、依頼者の感情面のケアや、懸念や論点(離婚するかどうか&法的な離婚条件の他にも、住宅ローンの処理、お子さんのフォロー、将来的な養育費不払などなど心配は尽きない)の整理を適切にできるスキルが重要かな、と考えています。

債務整理

債務整理系も継続的に多いです。やはり多いのは「借金が複数あるがどうすれば良いか」という多重債務系。

こういった相談に対応するためには、手続選択の一般論をまず押さえておく必要があります。そこに、年齢、破産できない理由、手続費用が準備できるかなど個々の情報をあてはめ、最適な手続を導き出す作業が必要になります。

あと、お恥ずかしいことに独立前は無知だったのですが、時効期間経過後も督促状を送ったり支払督促の申立てをしたりする消費者金融やサービサーがたくさんいるんですね。そのため、長年返済していない系の相談者については、時効が完成していないかの確認は必須です。

私は独立前は破産再生は全くやったことがなかったのでとても苦労しました。ただ、たくさん良い実務書がありますし、書式も豊富です。それでもわからないことは裁判所に聞いて、なんとか手探りで経験を積んできました(まだまだ修行中です)。

ノージャンルの相談

分野ベスト3と言いながらすみませんが、最後は、分類できない様々なノージャンルの相談です。

あえて共通点を挙げるとすれば「法律に関係あるが、法律では解決できない問題」です。

たとえば、家族関係で、相続ではない相談。「実の親との縁を切りたい」「疎遠になっている親の扶養義務はあるのか」などです。いずれも法律を見れば答えは明らかですし、Google検索で簡単に答えは出ます。

最初は法律がどうなっているかを詳しく説明するのが弁護士の仕事、と思ってそれに徹しようと思っていました。しかし、法律だとネガティブな結論になってしまう場合、困って相談に来たのにちょっとそれだけじゃ良くないよな、と思い、やり方を少し変えてみました。

上の2つの例では、つまるところ「これからの人生で実の親と関わりたくない」が真の要望です。これを妨げる法律や制度、そして社会常識的なもの(e.g. 家族は助け合うべき)はありますが、なんとか要望に近づけるためのアクションを提案したりもします。①法律では相談者の望む結論は導けないが、法律に反する行動をとってもペナルティがあるわけではないこと、②現状を変えたいなら社会常識的なものには必ずしも縛られる必要はないことを説明し、そのうえで③(弁護士としてではなく)「私だったら」こうするよ、というアドバイスをする、というように。

こうなると、もはや法律相談ではなく人生相談ですね。弁護士資格はいらない相談もしばしば。

しかし、弁護士は、日々紛争解決において問題解決能力を鍛えています。これに法律の知識を載せてアドバイスできるのは、またひとつの価値であると考えています。

おわりに

企業法務のアソシエイト時代は、かなり情報が整理され、どの法律に関係するかがある程度整理した状態で自分のところに来ることが多かったです。しかし、街弁として独立した後は、いったい何を聞きたいのか、それがどの法律に関係するのかよくわからない、という相談ばかりで非常に戸惑いました

これを日常的に処理している街弁の先生方、すごすぎる…!とめちゃくちゃ尊敬しました

ただ、最初は苦労しましたが、自分で情報を整理して関係する法律を探し出す作業もなかなかやりがいがあります。

その後は、聞けるところに聞きまくって最後は「えいや!」で進め、時には(取り返しがつく程度の)失敗をしながら経験を積んでいくのみです。

それが確実に自分の資産になると信じて!



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