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新学期以降忙しくなるので、今のうちにとひとり暮らしの母のはなし相手をしに実家に寄った。この間まで痛がっていた足が復調したと喜んでいた。なら、天気もいいし、運動がてらどこか散歩にでも行こうか、行きたいとこある?とたずねると、中之島美術館という答えが返ってきた。美術館はたびたび行っているらしいが、中之島はご無沙汰だそう。今はモネ展開催中とのことだった。新聞などの広告を見て気になっていたらしい。母は『日曜美術館』とかはよく見ていて一般的な知識は持っている。モネや印象派が特に好きなわけではないらしいが、せっかくなんで見ておきたい、ということだった。

中之島まで、電車は15分ほどだが、駅まで、駅からのゆっくり歩きを入れると1時間程度の行程にはなるが、足の状態も大丈夫そうな様子だったので出かけることにした。

中之島美術館、私は初めてである。

到着して、来場者の多さにまずびっくりした。春休み中の日曜とはいえ、美術館に来る人がこんなにいるとは。そして入場料を確認して、ひっくり返った。表題の通り、大人2500円。えーっつ!?と本当に声をあげてしまった。自分だけで来てたら、確実に帰っているところだ。母によると最近はこんなくらいでもおかしくないという。で、チケット売り場は長蛇の列になっている。大阪市の美術館なのに80を越えた大阪市民に何の優待もつけないのにも驚いた。同時に、もうひとつ日本画家の展覧会もやっていて、そっちは完全別料金。また美術館なのに常設展は特にない、というのも驚いた。

場内も当然すごい人だった。行列の流れに沿って展示をみていく。客層が若いのにも驚いた。高齢者はあまり見かけなかった。うちの母が最年長くらいだったかもしれない。中高年は、それなりにいたが、10代、20代くらいの若者も多かった。「いかにも美術好きです、みたいな感じじゃない子が多いな」と母も驚いていた。高齢者は休日を避けて平日に来るのかもしれない。しかし、それにしても、大阪にこんなに沢山、美術好きがいるとは… あんな高い入場料を払ってまで絵を見ようとするような。ホンマにホンマなん?という気持ちだった。

こんなことを書くと、いかにも美術に疎い、文化資本の低い人間丸出しだが、実は、それほどの縁遠さでもないのである。高校時代は美術部に所属していたのだから。だから、って絵がほんとに好きだったってことでもないのだけど、美術展なんかはそれなりに見に行っていた。当時は、バブルの頃で、いわゆる名画もよく日本に来ていたのだと思う。ただ、入場料は、学生割引があったからだろうが700円とか600円とかくらいだった気がするがどうだろうか。映画なんかに比べて3割くらいは安かった気がする。家でとっていた新聞屋が優待券持って来たりすることも多かった。母は今でも新聞をとっているが、今はそういう特典は全くなくなったらしい。

大学院生活以降は、あまり行った記憶がない。30代以降になると、どんどん貧乏生活に向かって進んで行ったので、劇場・(競輪以外の)スポーツ観戦・コンサート・映画館に行くことも無くなっていった。当然、美術館からも足が遠のいた。やがて、絵画への関心もなくなっていった。

でも、確かモジリアーニ展を久しぶりに見て、やっぱ油絵は迫力があるなと思ったことがあったはず、と過去の記録をたどると、どうやら2007年9月の大丸ミュージアムでの「モディリアーニと妻ジャンヌの物語展」のよう。モジリアーニなんて美術の教科書で見ても何も良いと思えなかったが、ホンモノ見たら圧倒された(ような気がした)のだった。でも、これはたぶん、どこかから招待券が手に入ったから行っただけで、美術欲が再燃するなんてことはなかったのだった。しかし、あれがもう17年も前のことだったとは。時の流れが速すぎて恐ろしい。

で、肝心のモネ作品ですが、なんというか、普通に良かったです。

(入場券は年金生活の母のおごり。将来出世したら倍にして返すつもり。)

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