2022年読んだ本ベスト10
1.『秘密の知識―巨匠も用いた知られざる技術の解明―』 ディヴィッド・ホックニー 青幻舎
『いい絵だな』で紹介されていて、あまりにも衝撃的だったので、いったん、読むのをやめて本書を借りて読んだ。
ルネサンス以降の絵画が光学機器を使ってトレースしていたという説をあらゆる角度から論証していった本である。
以下はこちら
2.『プロジェクト・ヘイル・メアリー』アンディ ウィアー 早川書房
あらすじすらも語りたくないくらい、ネタバレしたくないので、とにかく読んでほしいとしかいえません。
3.『ジェイムズ・ジョイス伝』リチャード エルマン みすず書房
今年はジョイスの年でした。自費出版で『猫と悪魔』を作ったので、参考文献をひたすら読んだが、この上下巻が底本となった。
4.『リャマサーレス短篇集』フリオ・リャマサーレス 河出書房新社
巻き込まれ型のブラックユーモアから始まって、だんだんと長編で読んでいたような、静かな哀しみをたたえたリャマサーレスになっていく短篇集であった。
『自滅的ドライバー』がとにかく好き。そして『依頼された短篇』のリアルさよ。さらに加えると木村榮一先生の訳者あとがきもすばらしい。
5.『いずれすべては海の中に』サラ・ピンスカー 竹書房
伝えたいテーマをSFに仕立てることによって、より効果をあげた感じがした。つまり、奇想でありながら、テーマは普遍的なので、読後の余韻はエンタメではなく文学だった。
スタージョン賞受賞がふさわしい『深淵をあとに歓喜して』もいいし、『一筋に伸びる二車線のハイウェイ』や『記憶が戻る日』なども好きだが、一番の好みは『そして(Nマイナス1)人しかいなくなった』であった。
傑作ぞろいのSF短編集。
6.『皮膚、人間のすべてを語る――万能の臓器と巡る10章』モンティ・ライマン みすず書房
ニキビダニは人間の皮膚を通した歴史の語り手でもある。このダニは、おそらく授乳などの接触を通じて人から人へ、家族間で引き継がれ、ある家族に特有の系統は何世代にもわたって存続する。たとえ系統の異なるダニが生息する別の大陸に移住したとしても、その家族の系統は代々受け継がれていく。別のルートによる宿主の乗り換えはめったに起こらない。この意味でダニがもつ特定のDNAは一種のタイムカプセルであり、海を越えた私たちの祖先の足跡を追うことに使える可能性がある。
など、とにかくいろいろメモした。
7.『大鞠家殺人事件』芦辺 拓 東京創元社
戦中の大阪の船場が舞台のミステリ。なじみのない舞台なので、とても新鮮であった。新たな代表作との評判も高いのも同意。
なんだけど、流血の大惨事事件がよくわからないんです。すみません。
8.『日本でわたしも考えた:インド人ジャーナリストが体感した禅とトイレと温泉と』パーラヴィ・アイヤール 白水社
イタリア大使を夫にもつ、インド人女性のライターが日本に滞在の記録。いいことも悪いことも書いてある。参考文献もいっぱい。いい本でした。 中国編も読みたい。
16ページの誤植。登校が投稿になっています。
9.『ヨーロッパの昔話――その形と本質』マックス・リュティ 岩波書店
ジョイス関連で調べた本の中から一冊。
著者は現実の世界を此岸とし、魔女や話をする動物など現実の世界に存在しない者たちを彼岸者と呼ぶ。
昔話を聖者伝や伝説とも分ける。伝説の人物は彼岸者たちが話すことに驚き、ほとんどは不幸に終わる。しかし、昔話の人物はそれを当然のことのように受け止め、幸せな結末も多い。彼らは精神的にも肉体的にも奥行きがない。など言われてみればを明確にする。
10.『ROCA』いしいひさいち いしい商店
別枠 10位というより特別枠
いしいひさいち『ROCA』読んだ。『ののちゃん』のように時間がとまった漫画のなかで、ファドの歌手をめざすロカちゃんだけが時間が進んでいくすごい展開。サイトでときどき掲載されたところから、ついに一冊にまとまった。サウダージな話になって泣いてしまったよ!
ほか6冊(順不同)
・『ウルフ・ホール』ヒラリー・マンテル 早川書房
・『ヨーロッパ・イン・オータム』デイヴ・ハッチンソン 竹書房
・『日本のインド・ネパール料理店』アジアハンター小林 阿佐ヶ谷書院
・『木曜殺人クラブ』リチャード・オスマン 早川書房
・『じゃむパンの日』赤染晶子 palmbooks
・『馬語手帖』河田 桟 カディブックス