嫉妬オムニバス
(2023年12月1日の記事)
「いつも楽しそうですね。」「悩み事なんてないでしょ。」まーこれが僕の印象らしい。昔からよく言われ続けてきた言葉だ。時々、何故か「育ちが良さそうですね。」と言われることもある。これに関しては親や祖父母に感謝ですね。決して、躾の厳しい資産家の生まれではないし、泥んこになって遊んでいたし、学校の帰り道、人の家の木からみかんを取って食べていたし。ま、言われることがある。あ、いや、これはお世辞か。
そんな僕は10年に1回くらい、猛烈に嫉妬する時がある。
他人と比較はしない方だが、同じ時代を生きる同世代にはライバル視をすることがある。そう、所ジョージまでいけば嫉妬より憧れになる。羨ましいというより、楽しそうな先輩だな、あんな風になりたいなと。
映画「ララランド」が好きで、何回も観ている。冒頭15分だけ観てから仕事に向かおう、ラスト30分だけ観てから布団に入ろう。ミュージカルの要素があるからか、BGMとして時間があれば観てしまう。
監督デイミアン・チャゼル。映画を観終わって、色々と調べると、ええ?一歳下?ガチですか?猛烈に嫉妬をしたのを覚えている。何故その域に達しているのか?同じ時代、時間を過ごしたはずやんな?おかしい。
ララランド以前に撮った作品を観た。さらに嫉妬をした。「セッション」これもまた凄い。ラスト15分は息ができない。凄いという言葉だけではもったいない。モノが違う。僕には思いつかない。もちろん仕事は違うが、僕が映画監督をしていてもそこまではいけていないだろうな。圧倒的な敗北。
今年に観た「バビロン」話題にこそなっていないが、映画館で度肝を抜かれた。どうやったらこの作品を生み出せるのか?天才過ぎる。またも猛烈に嫉妬した。いや、僕が嫉妬しているだけで、何とも思わない人もいるだろう。同年代で何故そこまで出来るんだ?というのが、僕の心を煽ってくる。北野武の作品は凄いけど、嫉妬はしない。
問題の根は同世代。
講談師の六代目神田伯山。彗星のごとく現れた。世はお笑いブームでテレビタレントといえばお笑い芸人。少しの枠を落語家。そんな中で講談師。いやいや、神田伯山さん、あなたは何故その道を選んだのだ?僕は知らなかった、講談師という生き方を。ま、知っていてもなっていなかったんだろうけど。この人が時代に登場した時も、猛烈に嫉妬したのを覚えている。
さて、そんな僕はもう一人嫉妬した人がいる。
加古川にあるタテイト珈琲店店主である。
僕のお客様がそのお店の常連客で、「その店主と僕は話が合うと思う」と以前から言ってくれていたのだが、なかなか行く機会がなかった。機会というより、会う勇気。だって、行こうと思えばいつでも行ける。ですよね。
そのお客様と共通の知り合いのお客様と3人で、食事会をした後に行ってみようとなっていた。けど、何故か直前でお休みになってしまい、会えなかった。うん、そういうのを運命って呼ぶんですよね。
この度、早めの忘年会ということで、また食事会に誘っていただき、その後にトライすることになった。もしかするとまた会えないかもしれないし、会えるかもしれないし。
宿命だったのでしょう。無事、お店の扉は開き、会うことができた。話す口調は柔らかく、物腰も柔らかい。ただ物事の捉え方は鋭く自分の思想がある人だなという印象。珈琲一杯とプリン。それだけではこの店主の奥まで辿り着けない。初対面だし、辿り着くつもりもないが、なかなかの奥深さ。
その店主も本を書いていたのを知っていた。在庫ありますか?と聞くと、ありますよ、と。店主は何故それを?と不思議な顔をしていたが、僕はその本が読みたかった。インスタをフォローしていたので知っていた。
読んでいくうちに強烈な嫉妬心が湧き上がっていた。面白い。僕も作家の端くれを自称している、自分の作品に自信はあったが、また違う。僕の本が小学生高学年向けなら、店主の本は大学生向けといった感じか。言葉のひとつひとつの質が違う。難しいというより、言葉を深さを知っている。素直に負けていると思った。勝負ではないが、敗北。そして、嫉妬心。
聞けば、僕の一歳下、つまり同世代。凄い。一気にファンになった。まだまだ多くは知らない。また珈琲を飲みに行こう。
いつも楽しそうで、悩み事がなさそうに見える僕だが、こんな感じで強烈な嫉妬心で心が狂い、奥歯を噛み締め、枕を叩き、寝れない夜を過ごしている時もある、10年に一回くらい。いやいや兄さん、それくらいならええやないかと聞こえてきました。すいません。
完
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