1. 石橋を叩いて渡る人は常に前提が欲しい生き物『石橋を叩いて渡る哲学』

 石橋を叩いて渡る人

 世の中には石橋を叩いて渡る人が一定数存在します。石橋を叩いて渡るとは、頑丈な石で造られた橋を叩いて確認しながら渡ることから、物事に取り組む姿勢が特別慎重であることを表したことわざです。逆に言うと、石橋を叩いて渡る人が橋を渡るには、石橋の安全性を確認するような「前提」が必要になります。石橋を叩いて渡る人はその「前提」がない状態で橋を渡る必要がある場合、不安ながらにその橋を渡ることになるでしょう。私は「前提」がない状態で橋を渡ることは人生を歩むことに似ていると思います。人生は石橋での安全確認のような「前提」を伴わずして勝手に進んでしまうからです。したがって、石橋を叩いて渡る人は人生においても何かしらの「前提」が必要だと言えます。「前提」無しでは不安を感じます。しかし、人生においての何かしらの「前提」とは一体何でしょうか。石橋を渡る際は、安全性が確認できればそれが十分「前提」として機能します。しかし、石橋を叩いて渡るときのように人生についての安全を確認することは不可能です。結論を申し上げると、私は人生においての「前提」を「哲学」だと認識しています。哲学とは、自分だけの取扱説明書やルールです。石橋を叩いて渡る人には哲学が必要なのです。

 石橋を叩いて渡る哲学

 そもそも、哲学とは抽象的な概念です。哲学者に「哲学とは?」と聞いても簡単には答えられないでしょう。抽象的であればあるほど石橋を叩いて渡る我々としては安心できません。そこで、この本では1つ1つの事柄を言語化・構造化することで論理的に哲学を構築していきます。つまり、抽象とは真逆の具体的な哲学です。これを石橋を叩いて渡る哲学と言うことにします。

 ただし、この石橋を叩いて渡る哲学の構築にはある前提が伴います。それは、哲学を構築するための材料としてどうしても仮説が必要不可欠だということです。本来、哲学は人文科学という学問の分野に分類され、自然科学では取り扱うことができない問題を扱います。現在確定している情報のみで具体的かつ論理的な哲学を構築できれば、そちらの方が石橋を叩いて渡る我々としても安心でしょう。しかし、そんな虫の良い哲学はありません。少なくとも確定している情報である自然科学では、まだ未知の範囲が数多くあります。自然科学は動的であり、今後も常に変化していくことでしょう。

 そこで、石橋を叩いて渡る哲学では、仮説を材料とすることで自然科学に近い言語化・構造化・論理化という手法を用いて哲学を構築します。材料となる仮説とは、仮説思考という思考法・方法論で生み出された言語化された情報のことを指します。

 仮説思考

 仮説思考とは、ある問題に対してその時点で保有している情報を前提として、その時点での最適解を自分で考え、それを基に行動・検証・修正をしていく思考法のことです。実は、仮説思考は問題解決における有名な方法論です。仮説思考は学問研究における手法の1つでもあると同時に、変化の激しい現代において問題点を迅速に見極める手法としてビジネスパーソンにも重宝されています。仮説思考というワードを聞いたことがない方でも、この方法論自体はどこかで触れたことがあるのではないでしょうか。有名な実業家やコンサルタント、クリエイター、学者、医者の話を聞くと、ほとんどの人がこの思考法を使っていることがわかります。このような方々はアグレッシヴな事柄に仮説思考を用いますが、この本の中では石橋を叩いて渡る哲学の構築というパッシヴな事柄に用います。もちろん、この本で得られる哲学を構成している、仮説思考や実践的なお悩み解決法などのアルゴリズム(作業手順・方法論)やその他の知識は、様々な場面において活用できるでしょう。石橋を叩いて渡る哲学はこれからの人生で必ずあなたの役に立つと断言します。

 8つの要素

 仮説思考を含め、石橋を叩いて渡る哲学には、それを構成する8つの重要な要素があります。思い出していただきたいのは、石橋を叩いて渡る哲学は人生を歩むための取扱説明書だということです。

 人生を歩むための取扱説明書である哲学を構成する重要な要素は次の8つです。
 ①仮説思考
 ②思考の構造
 ③生きる意味
 ④幸せの共通前提
 ⑤世界の定義
 ⑥自分の定義
 ⑦実践的なお悩み解決法
 ⑧知識体系の収集
仮説思考については、石橋を叩いて渡る哲学の前提として説明しました。

 残りの7つの要素については、
   2.思考の定義
   3.生きる意味
   4.実践的なお悩み解決法
   5.知識体系の収集
という4つのテーマの中でお伝えしていきます。

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