奥田英朗『邪魔』


内容(「BOOK」データベースより)
始まりは、小さな放火事件にすぎなかった。
似たような人々が肩を寄せ合って暮らす都下の町。手に入れたささやかな幸福を守るためなら、
どんなことだってやる―現実逃避の執念が暴走するクライム・ノベルの傑作、ここに誕生。
 第4回2002年大藪春彦賞受賞


なんと言ったらいいか、絶句してしまうようなストーリーだった。
上下巻の大量の紙数を使って随分とまたハチャメチャな物語をつくるものだ。
解説に
「ある種爽快に道を間違えていく主婦と、やむを得ず壊れていく刑事の切ない物語」
とあった。ああ、まさにそのとおりだな。

とても暗く重い話なのに、どこかに爽快感がある不思議。
少年犯罪も企業不正も警察とヤクザの癒着も、どれもこれも厭世的気分になるけどこういう実態は多少の誇張はあれ、ありのままに描かれているのだろう。世の中腐りきってるなと、いまさら正義ぶってもむなしい。

そんな腐った世の中でも前を向くことはできるんだよ、という妙にポジティブな部分があって、ヘンな爽快感なのである。

ただ読んでる時はあまりの重さになかなか読み進められなかった。

奥田英朗作品は基本的に世の中の暗部を元にして構成されてるイメージが有る、そのアンダーグランドで藻掻く人々を、生暖かくじっと描写し、やがて訪れる最悪な状況にむしろ諦観が生まれ、それゆえなんとなく清々しいのだ。

結末の出鱈目な大騒ぎはちょっと悪乗りし過ぎじゃないかとも思ったけど、でもそれこそ奥田作品の真骨頂なのだろうな。

で、読み終わってから言えることだけど、ぼくは個人的に好きな物語です。読んでる最中は絶対言えないけどw

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