料理の見た目と味は一致させた方がいいよ、という研究レビュー

最近、個人的にものすごく興味を持っているのが
ガストロフィジクス(gastrophysics)」という分野であります。

もともとどういう分野かといいますと、
「人間の五感(視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚)は、お互いに独立した感覚ではなく、相互作用しあって影響を与えている」
という原則に基づいて、その相互作用を解明しようという分野であります。


なぜ、この分野に興味があるかというと、

人間の味覚って、かなり「錯覚」とか「環境」に左右されてるんじゃない?

ということが解明されているからです。

この分野の一つとして
「色」と「味」
あるいは
「色」と「香り(フレーバー)」の関係性が研究されております。
その関係性を包括的にまとめたレビュー論文があったので紹介したいと思います。
(レビュー自体それなりにボリュームがあるので、今回は第一回ということで。)
*参考:C. Spence, On the Relationship(s) Between Color and Taste/Flavor (2019)


料理を作る上で参考になる見解の一つが

「人間は見た目の色で味を予測してるよ!」

ということです。

レビューの中で掲載されている研究(Velasco et al. (2016))としては、
被験者(5322人)に「青」「緑」「オレンジ」「紫」「赤」「黄色」
の6種類の色にそれぞれ着色された飲み物を見せて
「どの色の飲み物が一番甘そうか?」という質問をしてみた

という実験内容です。
(ぜひ読者の方々も想像して考えてみてください)

結果は、「赤」が一番甘そうと感じる人の割合が高いという結果でした。
(具体的には、青:27.8 %, 緑:1.6 %, オレンジ:6.2 %, 紫:18.2 %, 赤:40.7 %, 黄色:5.5 %)

赤はイチゴなどのベリー系、リンゴ、サクランボ(チェリー)を連想させるからでしょうか。
甘くない赤というと、トマトくらいでしょうか(トマトも品種・時期によっては甘いですが)。

これは実は文化圏によってもかなり割合が異なることがわかっています。
(例えば、紫の場合、北アメリカの人は11.2%なのに対して、アジア圏の人は28.4%の人が甘そうと答えている。)
ですので、文化的な部分がかなり大きい(その人が育った地域、食べてきた食材・料理等)と考えられます。

甘味以外の味覚でも同じような実験は行われており、
ざっくり傾向だけ列挙すると、

甘味→ピンク・赤・紫
塩味→白(・グレー)
酸味→黄色・オレンジ・緑
苦味→黒・グレー
旨味→赤・茶色・青

という傾向がみられたそう(Spence, Wan et al. (2015))。
(個人的に旨味に赤と青が入っているのはかなり意外でした。特に青はあまりイメージにないですね。。。)


この実験結果から言えることは

「人間は見た目の色で味を予測しているよ!」

という結論になります。


これだけだと、「まあそうだよね」ということにはなるのですが、
実は注意すべき点があります。

人間は「期待した味と違う味(あるいは香り)」がする料理を不味いと感じる

という傾向があるという点です。

例えば、
「バニラの味がする紫色の飲み物」

これは想像するだけでも美味しくなさそうですよね。
実際に研究でも味に対する評価が下がることがわかっています。

ここまで極端ではなくても
例えば食べログやブログ、ツイッター等で目にした写真で
「美味しそう!」と思った店に行ってみたら
思いのほか大したことなかった・・・
みたいな経験ありますよね?

写真ですぐに情報が得られる(そして味を予想してしまう)時代ですから、
そういった美味しそうな「錯覚」に陥りがちではないか?
(過度に期待してガッカリした経験が多くないか?)
一度振り返ってみるといいかもしれません。
写真では容易に加工ができてしまうので、
より「ガッカリ感」が増しやすいです。

ちなみに、食に目がない人でも料理の写真をひたすら見続けるのは
メンタルを疲弊させ、不健康につながるのでオススメ致しません。(空腹の度合いに関わらず、空腹感が増大し、不健康になりやすいことがわかっています。この内容については今回は割愛しますが、近いうちに書きたいなと思っています。)

外食だけでなく、自宅で料理をする際にも
「見た目と味の一致」は気をつけておくべきでしょう。
特にゲストに料理を振る舞う際には
「期待するであろう味」を想像して盛り付けることを心がけると
お互いに心から幸せな食事の時間が過ごせると思います。

今回のポイントをまとめますと、

⑴ 人間は見た目で食べ物の味と香りを予想している
⑵ 人間は見た目で予想した味(香り)と実際の味(香り)が一致していないと不味いと感じる(だから、一致させるようにしよう)

ということになります。

ちょっと長くなってしまいましたが、
皆様の今後の食事の参考になれば幸いです。
今後も「ガストロフィジクス(環境が食事・味覚に与える影響)」関連の記事はちょこちょこ書いていくかと思います。
どうぞ今後ともよろしくお願いします。

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