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❸決戦の金曜日

いよいよ突撃の日がやってきた。

採精が必要だったため、午後診を受診だしん。


照れ隠しのクロちゃんはさて置き、午後診開始まであと数時間。

と、この感じで書き続けると生々しさが半端なくなるのでとりあえず病院まで行こう。

⏮ ■ ⏯ ● ⏭ ⏏ ⏮ ■ ⏯ ● ⏭

二度目ということで、もう勝手はわかっている。

受付でマゴマゴしないように、財布の一等地にゃ診察券を、右のポケットにゃ薬局の袋を忍ばせて準備万端だ。

靴を脱ぎ、靴は靴箱へ。

スリッパに履き替え、窓口へ。

若め!!

変わるんかい… 受付固定ちゃうんかい…

盲点。

前回は安心感のあるベテランさんでしたが、本日のご担当は何かあったらウチがキレたるからって言いそうな若い女性です。あくまでも個人的なイメージですが。

出鼻をくじかれながらも、恐る恐る診察券を出すと丁寧なご対応。

「そちらで少々お待ちください。」とイスを示される。

え?

右のポケットは?

受付の人は今日が何の日か知らないのかな? 先生に直接渡すのかな?

と一瞬考えたが、

いや、検査するんでしょ? 結果出ないと診察できないよね?

じゃあすぐいるよね?とのご判断が下され、

「これ持ってきたんですけど」

と出そうとすると、

「それは後ほどお出しください」

と明らかに、明らかに焦った口調で告げられてそっとしまうやるせなさをイスに座らせる。

不要なチャレンジに挑んだ自分を責め、いや、知っていたなら先に言ってくれても良かったよねと慰めたりしながらイスの冷たさを感じていると、では3階へ上がってお待ちくださいと案内される。

3階の診察受付は前回と同じお姉さんだ。

笑顔の「こんにちは」に救われつつも、やはり右のポケットが気になる。

すると、「持ってきていただいたものを容器のままこの紙コップに入れてください」

と声を掛けられる。

それ!

何がかはわからないが「さすが」と思いながら、持ってこさせていただいたものを薬の袋から出し、紙コップに入れてお渡しする。

この時の自分、嬉しそうだったかもしれない。


決してそんな趣味はないが、数々の困難を乗り越え、やっとノルマをクリアできたような感覚が滲み出ていたかもしれない。

誤解を与えたのであれば、謹んでお詫び申し上げます。


少し待っていると診察室へ通される。

早くね??もう結果出たの?

と思いながらイスに座ると体の様子を聞かれ、おかげ様でだいぶ良くなりましたと答える。



そう、もうだいぶ良くなったんです。

だから今日は前立腺は調べなくても大丈夫なので、検査結果を教えてください。早く帰らせてください。

と心の中でお願いしていると、


「じゃあ様子見てみるのでベッドに横になってください。」


ですよねー…


2回目ともなると小慣れたもんで、抱える膝の角度も前回よりやや深めになる。

院長の指が躊躇なく前立腺へと向かう。

が、前よりちょっと痛くない? 慣れた?

と思っていると、

「痛みマシでしょ?二回りぐらい小さくなってますよ」

と院長の声が少し嬉しそうだ。


いや、何回り大きかったの?

とは言わず、指を入れられたままありがとうございますを絞り出す。

と、院長が、

「ちょっと刺激してから、尿の検査をしてみましょう。」

とグリグリされる。

痛いもんは痛い。

前立腺を刺激して、尿を検査すると、前立腺に溜まった何やら悪そうな成分が尿と一緒出るらしい。

体の仕組みよ…


指を抜かれ、ローションを拭き取ってもらえないままパンツを履き、イスに戻る。

紙コップを渡され、

「今前立腺を刺激したので、もし悪い何やらが前立腺に溜まっていたら、尿の出始めに一緒に出てくるから、それを調べます。

尿の出始め2ccぐらいをこのコップに出してください。残りは流して大丈夫なので。」

と言われ、トイレへ案内されるが、このタイミングでトイレ掃除中。

いたずらが過ぎる。



にしーしー???


科学を捨てていた自分には2ccがどれほどのものなのか皆目見当もつかず、しかし今必要なのは2㏄であり、それ以上は不要なのだ。

あの言い方だと、あまり㏄が多いと検査にも不都合がありそうだ。

しかしここにグーグル先生はいない。

と、トイレのそばで途方に暮れていると、

受付にいたお姉さんが笑顔で

「トイレ掃除が終わったので、尿道の検査お願いします。」

と案内してくれた。


あの時の僕は、

いや、なんぼなんでも少ないわ!

とつっこまれるのだけは気にくわないと判断し、紙コップの底が隠れるぐらいにしたよね。


あの時の君は、

「尿の検査」でいいのに道を付けたよね。



怒られなかったし、検査に不都合はなかったようだが、帰って調べてもらうと2㏄は小さじ5分の2ぐらいらしい。


それもわからん。

でもほんのちょっとよね?院長、次回は滴で言ってください。


尿を提出し、少し待っているとまたすぐに診察室へ入るよう案内された。

この病院には検査のプロがいるようだ。


院長が、

「尿検査には異常は見られませんでした。

今日持ってきていただいた精液の検査結果は1週間後に出るので、それが問題なければもう大丈夫です。」


1週間かかるんかい。プロでも無理なんかい。


でもほんとに、おかげ様で良くなっているし、何より何かわからないという不安を取り除いていただいて本当にありがたい。


最後に答え合わせ。

【疑問①:何時間前問題の答え】

正常に検査が行われ、結果が出るまでまだ何とも言えないが、検査に1週間かかるなら直前じゃなくても大丈夫そう。


【疑問②:命中問題の答え】

無理。

半分がまさに精一杯。

病院による違いはあると思いますが、試験管のラベルと名前を記したインクが防水仕様だった奇跡に救われた。

調べていると、これも不妊治療の場合の情報ですが、どうやらあんな細い試験管ではない太めの容器が主流っぽいです。

細い仕様で紙コップからがNGなら、練習が必要。


【疑問③:包装問題の答え】

紙コップに入れるから裸で持っていっても大丈夫。

【全問題の答え】

先生にちゃんと聞け。


お薬も1日3回から2回に減らしても大丈夫とのことで、恐らくあと1週間ほどで治りそうです。治るまでの間に健康のありがたみを刻んでおこうとおもいます。



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