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あっという間になくなる1億円

スタートアップのCFOをやって分かったことシリーズ

1億円の見え方

「億り人」という言葉がありますが、個人にとって1億円はとても大きなお金です。一方、企業活動にとってはどうでしょうか?超ざっくりとですが簡単に試算してみたいと思います。

会社の規模ですが、アーリーステージくらいのAI系スタートアップのイメージ。メンバーは社長含めて役員3名、エンジニア7名、営業兼PM2名、管理1名の計13名と外注2名を想定。

まず月の人件費ですが、役員60万円、エンジニア40万円、営業兼PM50万円、管理30万円と置くと、60×3+40×7+50×2+30×1=590万円、に対して
社会保険等がおよそ15%位かかるので、590×1.15=679万円/月
外注は一人月50万円として、50×2=100万円/月
以上合わせると、月の人件費は779万円。

次に人件費以外の費用です。
IT系でよく登場するAWS費用やその他通信関連費用で月20万円。
事務所は所在地によって様々ですが月50万円とする。
水道光熱費は月5万円。
採用教育費は月10万円。
広報宣伝費は月10万円。
旅費交通費は一人月1万円として13万円。
PCその他諸々消耗品で月20万円。
交際費は月10万円。
など諸々合わせると、月133万円。
以上、人件費とそれ以外を足すと、月917万円。
その他一過性のものとして、GPUマシンを1機、500万円。

以上から、
1億円 = 917万円×10.4ヶ月+500万円
ということで、ランウェイは約10ヶ月しかありません。つまり仮に売上ゼロ状態が続いた場合、約10ヶ月で資金ショートに陥ることが分かります。
※ここでランウェイとは「企業がキャッシュ不足に陥るまでの残存期間(月数)」を意味します。

コストに厳しいのは当たり前

上記はざっくりとした一例ですが特段の贅沢はしていません。前提とする条件によって当然結果は変わりますが、1億円って意外とすぐになくなるということはイメージできたのではないでしょうか。
スタートアップはほんの数ヶ月の間に事業を成長させたり、資金調達をしていく必要があるということが数字面からもうかがえます。
だからこそスタートアップはスピードが命と言われるわけです。
また社長が1000円、2000円のものについても、厳しく費用対効果、コストダウンに目を光らせるというのも当たり前で、この辺の金銭感覚がずれているサラリーマン社員がいると社長はカチンとくるわけですね。
例えば、顧客エンゲージメントを高めるためにブログ等の記事を投稿するというのはよくあると思いますが、実際、広告宣伝費削減のため、メンバー全員の間で当番制で投稿したりしてましたし、お金がもったいなければ工夫するしかないんですね。その辺りスタートアップのキラキラ感への憧れだけで勘違いして入社するときついことになると思います。

追伸)スタートアップのCFOをやって分かったことシリーズでは備忘の意味も込めて書き綴っています。各種質問やこんな話題を取り上げてほしい等のリクエストがありましたらご連絡いただければ幸いです。


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