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「司法書士物語」第1話 民事訴訟法はわかりにくい!?訴え提起

「司法書士物語」について
この物語は、司法書士試験、司法試験、予備試験の受験対策として作成しております。
実務の視点をもとに作成していきますが、完全なるフィクションです。
また、資格試験合格のための法律解説という趣旨で作成しておりますので、実際の実務とは異なることもあります。ご了承ください。

登場人物紹介

司法書士      ロウ先生
司法書士事務所職員 法 律子(ほうりつこ)

民事訴訟法はわかりにくい?

ロウ先生の事務所には、優秀なスタッフがいる。
彼女の名前は、法律子さん。
法律子さんは、司法書士試験の受験生でもある。

法律子「ロウ先生、私、民事訴訟法が苦手なんです。全体像がイメージできなくて、勉強しても頭に入ってこないんですよ。」

ロウ先生「わかるなぁ。私も司法書士受験生だった頃、民事訴訟法には苦労したよ。認定司法書士になって、実務で訴訟を経験した今では、なんだこんなに簡単なことだったんだと思うことが多いけどね。」

ロウ先生「そうだ。訴訟案件の処理をとおして、民事訴訟法をレクチャーしようか?」

法律子「ほんとうですか!?助かります。是非お願いします。」

訴え提起

ロウ先生「ちょうど今から裁判所に訴状を出しにいくところだったんだ。訴状見てみるかい?」

 (訴状サンプル)

https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/2020/kanmin/sosyou/01-kashikin-sojou-kisairei1000kb.pdf (貸金返還請求)

ロウ先生「この訴状を裁判所に提出すると訴訟が開始するんだ。
ちなみに時効の完成猶予は、訴え提起時に効果が生じるよね。
だから、時効完成が迫っている事件を受けた場合は、急いで訴状を作って提出しないといけないね。」

(裁判上の請求等による時効の完成猶予及び更新)
民法第百四十七条 次に掲げる事由がある場合には、
その事由が終了する(確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定することなくその事由が終了した場合にあっては、その終了の時から六箇月を経過する)までの間は、
時効は、完成しない。
 裁判上の請求
 支払督促
 民事訴訟法第二百七十五条第一項の和解又は民事調停法(昭和二十六年法律第二百二十二号)若しくは家事事件手続法(平成二十三年法律第五十二号)による調停


ロウ先生「訴状に絶対に書かなければいけない事項は134条2項に規定がある。この訴状にもこれらの事項がちゃんと書いてあるだろう。」

(訴え提起の方式)
第百三十四条 訴えの提起は、訴状を裁判所に提出してしなければならない。
 訴状には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
 当事者及び法定代理人
 請求の趣旨及び原因

法律子「はい。書いてありますね。訴状なんて初めて見ました。
訴状には、当事者又は法定代理人を書くんですね。
法定代理人って具体的にどんな人をさすんですか?」

ロウ先生「成年後見人や親権者が法定代理人にあたるよ。
未成年者や成年被後見人は、自分では訴訟行為ができないんだよね。」

(原則)
第二十八条 当事者能力、訴訟能力及び訴訟無能力者の法定代理は、この法律に特別の定めがある場合を除き、民法(明治二十九年法律第八十九号)その他の法令に従う。訴訟行為をするのに必要な授権についても、同様とする。

(未成年者及び成年被後見人の訴訟能力)
第三十一条
 未成年者及び成年被後見人は、法定代理人によらなければ、訴訟行為をすることができない。ただし、未成年者が独立して法律行為をすることができる場合は、この限りでない。

ロウ先生「あ、そうだ。134条2項の事項を書き忘れてしまうと裁判所から補正を命じられるから気を付けないとね。」

法律子「補正の連絡って、どんな風になされるんですか?裁判官から電話があるんですか?」

ロウ先生「そういう場合もあると思うけど、裁判所書記官から電話がかかってくることが多い気がするなぁ。」

(訴状の補正の促し・法第百三十七条)
民事訴訟規則第56条 裁判長は、訴状の記載について必要な補正を促す場合には、裁判所書記官に 命じて行わせることができる。

ロウ先生「あと、この前さぁ、別件の訴状を裁判所に郵送したんだけど、収入印紙を入れてなかったみたいでさ、追完するよう連絡があったよ。ハハハ。」

法律子「先生、それ笑い事じゃありませんよ。先生に頼まれていた収入印紙なら、この前きちんと先生に渡したじゃありませんか。まったくもう。
あ!!137条1項2項によると、収入印紙の追完をしなかった場合も訴状の却下事由なんですね。」

(裁判長の訴状審査権)
第百三十七条 訴状が第百三十四条第二項の規定に違反する場合には、裁判長は、相当の期間を定め、その期間内に不備を補正すべきことを命じなければならない。
民事訴訟費用等に関する法律(昭和四十六年法律第四十号)の規定に従い訴えの提起の手数料を納付しない場合も、同様とする。

 前項の場合において、原告が不備を補正しないときは、裁判長は、命令で、訴状を却下しなければならない。

 前項の命令に対しては、即時抗告をすることができる。

法律子「先生、137条2項の訴状の却下ってどういうものですか?
訴えを却下するのと何が違うんですか?」

ロウ先生「訴状の却下は、相手方に送達される前になされるもんだよ。
訴状が送達されるまで、相手方は訴訟提起の事実を知らない場合も多いよね。訴状が送達されてはじめて訴訟が係属するんだよね。訴訟の提起と訴訟の係属は異なる概念なので、そこは区別して理解する必要があるよ。
誤解をおそれずにざっくり言うならば、訴状の却下は、相手方を巻き込む前になされる門前払い的な感じかな。」

ロウ先生「訴状が送達された後に、補正できないような不備がある場合の訴え却下に関する規定もあるけど、このようなケースはイレギュラーだと思うな。」

(口頭弁論を経ない訴えの却下)
第百四十条 訴えが不適法でその不備を補正することができないときは、裁判所は、口頭弁論を経ないで、判決で、訴えを却下することができる。

ロウ先生「ちょっと疲れたね。ティータイムにしようか。」

法律子「先生ったら、すぐに休憩しようとするんですから。裁判所に行かなくていいんですか?
でも、今日は有難うございました。条文だけ読んでいてもイメージが難しかったのですが、なんだか民訴の勉強が楽しくなりそうな予感がします。」

ロウ先生「それはよかった。じゃあ続きはまた今度。」

(第2話 続く)

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