見出し画像

民訴の理解がぐんぐん進むストーリー教材 司法書士物語第4話

久しぶりに、司法書士物語(民訴解説記事)の更新です。
「続編を楽しみにしている」とのメッセージをいただいておりましたので、第4話を書いてみました。

「司法書士物語」について
司法書士試験、司法試験、予備試験の受験対策として作成しております。
実務の視点をもとに作成していきますが、完全なるフィクションです。
また、資格試験合格のための法律解説という趣旨で作成しておりますので、実際の実務とは異なることもあります。ご了承ください。

登場人物紹介
司法書士      ロウ先生
事務所職員 法 律子(ほうりつこ)

第4話 送達

法律子:
先生、送達のところがうまく整理できません。
条文がたくさんあって頭が混乱しています。

ロウ先生:
条文だけ読んでいてもわかりにくいよね。
原告や原告代理人の気持ちになって、
具体的な事例を条文にあてはめてみるといいよ。

ロウ先生:
まず、おさえておいて欲しいのが、
「訴状が送達されることで、訴訟係属となる」
ということだね。

法律子:
訴訟係属ってどういう意味ですか?

訴訟の開始は、さまざまな効果をもつが、それらの効果は訴えの提起に結び付いている場合と、訴訟係属、すなわち、被告への訴状の送達によって生じるところの、裁判所と両当事者の間の訴訟法律関係の成立(いいかえれば、特定の裁判所が特定の事件について審理を行いうる状態)に結び付いている場合とがある。

民事訴訟法[第2版]瀬木比呂志 著 日本評論社 2022年 12月 43頁

ロウ先生:
誤解をおそれずにざっくり言うと、
「訴え提起をすることで、原告がリングに上がることになり、
送達がされることで、被告もリングに上がってくる。」
みたいなイメージだね。

せっかく訴状を提出したのに、送達がされなかったとしよう。

訴訟が係属しないから、いつまで経っても試合が始まらない。
リングに上がっているのは、原告だけ。

原告には裁判所を受ける権利があるのだから、
必ず送達して裁判を進めないといけないよね。

法律子:
裁判を受ける権利、憲法32条ですね。

憲法第32条 
何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。

ロウ先生:
そうそう。よく勉強しているね。

原告が訴状を裁判所に提出し、不備等がなければ、
送達がなされる。
裁判所書記官さんが送達に関する手続きを担当してくれるよ。

(職権送達の原則等)
第98条2項

 送達に関する事務は、裁判所書記官が取り扱う。

実際に訴状を被告に運んでくれるのは、郵便配達員さんだね。
ちなみに裁判所に出頭している被告に対して(別の事件で出頭している場合など)であれば、
裁判所書記さんが自ら訴状を渡すこともできる。

(送達実施機関)
第99条 送達は、特別の定めがある場合を除き、郵便又は執行官によってする。
 郵便による送達にあっては、郵便の業務に従事する者を送達をする者とする。
(裁判所書記官による送達)
第100条 裁判所書記官は、その所属する裁判所の事件について出頭した者に対しては、自ら送達をすることができる。

ロウ先生:
郵便配達員さんが被告宅に到着して、インターフォンを押したところ、
被告が自ら玄関先にでてきて、きちんと訴状を受け取ったとしよう。
これで送達完了だね。

法律子:
はい。

ロウ先生:
じゃあ、被告が自ら玄関先にでてきたけど、「受け取る気分ではない」と言いて、訴状の受取を拒否したとしたらどうなる?
郵便配達員さんは、被告の家に訴状を置いていくことができる?

法律子:
できます。差置送達の規定があったと思います!

(補充送達及び差置送達)
第106条3項
送達を受けるべき者又は第一項前段の規定により書類の交付を受けるべき者が正当な理由なくこれを受けることを拒んだときは、送達をすべき場所に書類を差し置くことができる。

ロウ先生:
いいね!じゃあ、被告が居留守を使っていたらどうする?

法律子:
居留守ですか。
玄関を開けてくれないなら、差置送達ができませんね。
どうしましょう。

ロウ先生:
そうだよね。
「被告に居留守を使われたから、送達は不可能です。」
なんておかしいよね。

ここで登場するのが付郵便送達だよ。

(書留郵便等に付する送達)
第107条 
前条の規定により送達をすることができない場合には、
裁判所書記官は、
次の各号に掲げる区分に応じ、
それぞれ当該各号に定める場所にあてて、
書類を書留郵便又は
民間事業者による信書の送達に関する法律(平成十四年法律第九十九号)第二条第六項に規定する一般信書便事業者若しくは同条第九項に規定する特定信書便事業者の提供する同条第二項に規定する信書便の役務のうち書留郵便に準ずるものとして最高裁判所規則で定めるもの
(次項及び第三項において「書留郵便等」という。)に付して
することができる。
 第百三条の規定による送達をすべき場合 同条第一項に定める場所
 第百四条第二項の規定による送達をすべき場合 同項の場所
 第百四条第三項の規定による送達をすべき場合 同項の場所(その場所が就業場所である場合にあっては、訴訟記録に表れたその者の住所等)
 前項第二号又は第三号の規定により書類を書留郵便等に付して発送した場合には、その後に送達すべき書類は、同項第二号又は第三号に定める場所にあてて、書留郵便等に付して発送することができる。
 前二項の規定により書類を書留郵便等に付して発送した場合には、その発送の時に、送達があったものとみなす

法律子:
この付郵便送達っていうのが、いまいちよくわからないんですよね。

ロウ先生:
私も受験生のときは、イメージがつかなかったよ。
わかりにくいよね。

インターフォンを押しても応答がないため、
郵便配達員さんはポストに不在票をいれる。
しかし、被告は訴状を受け取りたくない。
不在票に書かれている郵便物の保管期間が経過してしまったとしよう。

そうすると書記官さんから原告に(代理人がいるときは代理人に)
「訴状が届かなかった。」旨連絡が来る。

その場合、現地調査をしたりして、
被告が居住しているか否かを確認する必要がある※。

※住民票上の住所が変わっているような場合は想定せずに、
解説をかいています。
あくまでも民訴の理解のためのざっくりとした解説です。

現地調査の結果、被告がその家に住んでいると思われるときは、
原告は付郵便送達の上申書を裁判所に提出することになる。

107条1項の要件を充たすと判断されると、
付郵便送達がなされる。
この場合、被告に訴状を受け取らせる必要がなくなり、
郵便が発送された時点で送達されたことになる。

法律子:
なるほど。そういうことなんですね!!
条文だけ読んでいても、イメージができなかったので、
とても助かりました。
先生、有難うございました。

ロウ先生:
どういたしまして。
司法書士試験まであと1か月弱だね。
頑張ってね!

法律子:
はい、ありがとうございます!

今回は以上です。
司法修習と家庭だけで手いっぱいなところがあり、
なかなか更新ができそうにないですが、
少しずつ書き進めていければなと思います。
マガジンフォローをされると便利だと思います。
今後ともよろしくお願いいたします。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?