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「患難前携挙説」の根拠とされる『試練の時から・・守ろう』という聖句に関する考察

 ※↓はこの記事の音声ファイルです。朗読を聞きながらお読みいただけます。

「あなたが、わたしの忍耐について言ったことばを守ったから、わたしも、地上に住む者たちを試みるために、全世界に来ようとしている試練の時には、あなたを守ろう。」-黙示録3:10

 この聖句について、再臨二段階説の人々はこう注釈します。
 「『試練の時には・・・・守ろう』の『には』の原語はἐk(から)であり、これは『試練の時から・・・・守ろう』と訳される。だから教会は、来たるべき試練の時である患難時代の前に、地上から携挙され、取り去られて守られるであろう」。

しかし、あなたご自身で、よ~く文面を読み、考えて下さい。
果たして遭遇することのない災いから「守る必要」がどこにあるでしょうか。
遭遇するからこそ、「守られる」必要があるのではないでしょうか。
神が、クリスチャンを患難に遭遇させず、その前に取り去ることを意図しておられたなら「守る」という約束など不要です。
むしろ、「あなたは試練の時には何の心配もいらない。」というような保証の言葉が語られるはずではないでしょうか。

「あなたを守る」というのは本当に、危険に遭わない、困難を経験しないようにされるという意味でしょうか。
「そうとは言い切れない」どころか、どう考えても、そうした受け止め方には無理があると、内心お感じになりませんか。
そうした常識的な判断だけに及ばず、これから、しばし、実際に聖書的観点にたって、「守る」という約束、「守られた」という記録から、聖書的思考パターンを見てゆくことにしましょう。

【神がご自分の崇拝者を「守った」過去の事例】

Ⅱペテロ2:5 の翻訳比較
「義を説いていたノアたち八人を保護なさったのです。」新共同訳
「保護されました」新改訳、フランシスコ会訳、岩波翻訳、口語訳
「守って、」 前田訳
「守り給うた」塚本訳
「み護り」文語訳

ノアとその家族を保護し、守られた、と言うのは洪水に遭遇しなかったわけではありません。
洪水と、それに続く水の上での漂流期間のために、方舟や食物等を事前に備えさせ、生還できるように導かれたということです。

黙示3:10 に見られる「守る」と訳されている原語は「ギ語:テレオ」で、この語には「守る、観察する、保護する、監視、監視する」などの訳語が充てられています。
これからこの、ギリシャ語「テレオ」について更に詳しく調べてみましょう。
この語句は聖書中に全部で71 箇所に見られます。
同じ語が異なったニュアンスで訳されているのを類型的にまとめてみましたが、すべての使用例から明らかなのは100%「現状維持」というニュアンスです。
(以下《二重山括弧》で括った語句が「テレオ」の訳語です。)

1【守る】(注意して、約束・おきてなどに反しないようにし続ける)

「戒めを《守り》 なさい。」ーマタイ19:17
これと同様な内容として「命令、律法、安息日、戒め、み言葉、信仰」などを《守る》という主な聖句は次の通り。
マタイ23:3; 27:36; 27:54; 28:4; 28:20 ヨハネ2:10; 8:51,52; 8:55; 9:16; 14:15; 15:20; 17:6; 14:21,23,24 使徒15:5: Ⅰテモテ6:14 Ⅱテモテ4:7 Ⅰヨハネ2:3; 2:4; 2:5; 3:22; 5:3 ヤコブ1:27; 2:10 黙示1:3; 2:26; 3:3; 3:8; 12:17

2【番をする、見張る】
「イエスの《見張り》をした。」ーマタイ27:36; 27:54  使徒16:23 
「《番兵》たちは、御使いを見て・・」ーマタイ28:4 使徒12:56
「牢に《閉じ込められ》」ー使徒12:5 
「パウロを《監禁する》ように命じた・・」ー使徒24:23
「パウロはカイザリヤに《拘置され》ているし、・・」ー使徒25:4
「判決を受けるまで《保護して》ほしいと願い出た・・」ー使徒25:21

3【保つ、放置】

「良いぶどう酒をよくも今まで《取っておき》 ました。」ーヨハネ2:10 
「葬りの日のために、それを《取っておこう》 としていた」ーヨハネ12:7
「御名の中に、彼らを《保って》ください。」ーヨハネ17:11 
「処女である自分の娘を《そのままにしておく》 のなら」ーⅠコリント7:37
「きずなで結ばれて御霊の一致を熱心に《保ちなさい》」ーエペソ4:3 

4【留置、保持】

「あなたがたのために、天に《蓄えられている》 のです。」ーⅠペテロ1:4
「暗やみの穴の中に《閉じ込めて》 しまわれました。」ーⅡペテロ2:4 
「さばきの日まで、懲罰の《もとに置く》ことを心得て」ーⅡペテロ2:9
   《閉じ込めておく》」(新共同訳) 《拘束する》(前田訳)
「彼らに《用意されている》ものは、まっ暗なやみです」ーⅡペテロ2:17; ーユダ:13
   《待ち設けている》( 岩波翻訳 ) 《取って置かれている》(塚本訳)
「火に焼かれるために《とっておかれ》」ーⅡペテロ3:7
   《そのままにしておかれる》のです。( 新共同訳)
「自分の領域を《守ら》ず、自分のおるべき所を捨てた御使いたち・・暗やみの下に《閉じ込められ》」ーユダ:6 

5【「テレオ」と同義語が同じ文脈に見られる例】

「ギ語:〘エコー〙」( I have, hold, possess 経験する 維持 保持)
「わたしの戒めを〘保ち〙、それを《守る》 人は、わたしを愛する人です。」ーヨハネ14:21 23,24 も同様

「ギ語:〘 メノ〙」 ( I remain, abide, stay, wait; I wait for, await.
残って、守って、滞在する、待って、滞在する)
「もし、あなたがたがわたしの戒めを《守る》 なら、あなたがたはわたしの愛に〘とどまる〙 のです。
それは、わたしがわたしの父の戒めを 《守って》、わたしの父の愛の中に〘とどまっている〙 のと同じです。」ーヨハネ15:10 

「ギ語:〘フーラーッソ〙]  I guard, protect, I keep, observe. 
   (私は守る、保護する、守り続る、観察する)
「わたしは彼らといっしょにいたとき、あなたがわたしに下さっている御名の中に彼らを《保ち》、また〘守り〙 ました。」ーヨハネ17:12 

5つ程挙げたこれらすべての「守る(テレオ)」の用例・用法は、「そのただ中に留める」という意味を含み、保護となっている囲い(バリア)の外側には例外なく、敵、誘惑、諦め、悪者などの影響力に晒されている状態を描いています。

最後に、冒頭のところで、「患難前携挙説」を支持する聖書的根拠としてよく用いられる論議を引用しましたが、改めてもう一度ここに示してみます。

◆【ギリシャ語の前置詞「エク」を伴う「テレオ」の使用例- 比較】

「『試練の時 には・・』の『には』の原語は[ ἐk(から)]であり、これは『試練の時 から・・』と訳し得るゆえに、来たるべき患難時代の前に、取り去られて守られる」。という主張ですが、

ギリシャ語の前置詞「エク」を「には」と訳そうが「から」と訳そうが、そんなことは全くどうでもいいというくらい、意味は明白です。
前述したように「守る」という語自体に「ただ中」というニュアンスが含まれています。
次に挙げる例からそのことは確証されています。

「彼らをこの世から取り去ってくださるようにというのではなく、悪い者から[ エク] 守って[ テレオ] くださるようにお願いします。」ーヨハネ17:15

2 つの聖句を比較してみましたが、同じ構文だということにお気づきになると思います。

「患難前携挙説」の根拠とされる『試練の時から・・守ろう』という聖句の考察

「エク」を「から」と訳してみたところで、何も変わりません。
「■■」からあなたを《守る》 ことが、「世から取り去る」ことではないとはっきりと書かれています。
つまり「神から守られる」というのは、世から別の場所へ移すことによって、悪者に遭わないようにするということではない。ということです。
言われるまでもなく、分かりきったことのように思えますが、ひょっとすると、とんでもない勘違いをしてしまうものが現れることを予期されたのか、ここで明確に《守る》ということの、聖書的な思考パターンを示しておられるのでしょう。イエスの細かな気遣いが伺えます。

ダメ押し的に今一度、例の聖句を挙げておきましょう。

「あなたは忍耐についてのわたしの言葉を《守った》。それゆえ、地上に住む人々を試すため全世界に来ようとしている試練の時に、わたしもあなたを《守ろう》。」ー黙示3:10 

この試練から守るという約束は何に基づいているでしょうか。
直接的には、それはすぐ前の「私の言葉をあなたが守ったゆえに」ということです。
端的に言えば、あなたが守ったので、私も守るという約束です。
ここで守られているのは「ことば」と「あなた」です。

この試練の時には、「あなたを守る」というのが「あなた」を地上から取り去るゆえに、つまり保護する必要のない状態に「あなた」を置くことだいう論法がまかり通るのであれば、そのすぐ前の「ことばを守る」とは、神のみ言葉、掟を自分から取り去り、「ことば」に触れないようにし、つまり放棄して、「神のことば」を保つ必要のない状態に置く、つまり何の責任も問われないと思い込むことによって「守った」ということになります。

黙示3:10 が「艱難前携挙説」の根拠であるどころか、根も葉もないただの妄想、勘違いであることは明白です。

下のリンクは続編(パート2)です。

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