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宇宙船から見えた、手作りの夢の世界 | YOASOBI ARENA TOUR 2023 “電光石火” 神奈川 追加公演Day2公式レポート

2023年6月24日土曜日、横浜。
数日前までの雨の予報を覆して天気は曇り。初夏を感じさせる蒸し暑い陽気の日だった。
中でもぴあアリーナMMは、周囲よりも一層明るい熱気に包まれていた。
それはYOASOBIとして初の単独アリーナツアー『電光石火』の最終公演をめがけて参集した、ファンによる熱気だ。
開演の数時間前から、グッズ販売には長蛇の列。
老若男女を体現するかのようにこどもから高齢の方まで、幅広い年代の方がいらしていた。
そして誰もかれもが笑い、心を躍らせていた。
日本ってこんなに明るかったんだっけ、そう思い返してしまうほどに、普段感じることのない空気がそこにはあった。
この空気を作り出す源泉であるYOASOBIにもう少しで会える、音楽に触れることができる。
昂る思いが、周囲の熱気に包まれることでより一層強くなるのを感じた。

ライブ直前の裏側


リハーサルと本番の合間に、YOASOBIのお二人にインタビューさせていただくことができた。

Q.ライブならではの演出に特にこだわった、最も注目してほしい曲があれば教えてください。
Ayaseさん:基本、映像とかレーザー演出とかは、僕がスタッフと一緒に打ちあわせをやって決めています。
全部こだわってはいるんですけど、個人的に一番は『アイドル』の、映像もだけど、照明の演出。
最後のところで、アイドルは【推しの子】が原作にあるので、アクアとルビーを表したブルーとレッドの照明が左右でバッと出るんですけど、最初はそうじゃなかったんですよ。
最初は普通にピンク色がバッと出ていたんですけど、アニメの放送が始まってから、アニメとかをしっかり見たスタッフたちが、「いやここ最後は、赤と青にしなきゃだめだ」って言って、急遽大阪かどこかから変えて。それをリハで初めて見たときはめちゃくちゃ感動したんで、こだわりですね。
ほんとにツアーだからこそ日々アップデートできるので、もっとこうしてみた方がいいとか、会場によっても変えてるので。
土地土地でみんなが頭使ってやってる、ってことは、こだわりのマインドとしてありますね。

Q.初めてのYOASOBIとしてのライブから本日までで、ライブパフォーマンスとして特に進化したところ、意識して変えていないところがあれば教えてください。
ikuraさん:毎回ライブはやることが違うので、全部毎回初挑戦みたいな感じです。
毎回その演出だったり、このセットリストのなかでこの曲たちがどう輝いてほしいだろ、っていうののなかで一番いいものを考えているので、そういった意味では、どのライブも同じものはなかったというか、毎回毎回そのときのライブで一番いいものを探しています。
変わらないものは、ほんとに感謝と愛を持ってずっとステージに立ち続けるっていうこと、かもしれないです。
ステージに立って歌うっていうことの前にある、たくさんの人の手で作り上げられたものに出していただいているということと、来てくれている皆さんへの感謝の気持ちはずっと変わらないかもしれないです。

Ayaseさん:ikuraが言ってくれたことももちろんそうで、僕もいつも思っています。
逆にすごくシステム的なことというか、お仕事としての側面で言うと、ikuraが言ってくれたようにほんとにめちゃめちゃ毎回新しいことにチャレンジしています。単純にステージを組んでライブをするみたいなことってあんまりやっていなくて、面白い仕掛けをいっぱい作っているので、その分もちろん僕らもチャレンジしなきゃいけないことはたくさんある。っていう意味では日々変わっているし、変わり続けていることです。
ただ、変わらないことのすごく大きいものとして、チームのメンバーが変わっていないんですよ。
もちろん何百人というサイズ感で毎回ライブをやっているので、僕らもまだ会ったことのないような、設営だったりバラシだったりで動いてくださっている方だったりとかはちょっと変わったりとかはあると思うんですけど。基本的な核にいる、コアの部分、各セクションのリーダーであったりとか、中心部分にいるチームメンバーは結成時から一人も変わっていない。そのチームっていうのはライブにおけるチームで、これを変わらずにやれているってけっこうすごいでかいことで。
毎回変わるっていうアーティストも多いんですけど、ずっと同じメンバーでやれているので、僕らも安心してできるところがあるし。どんどん僕らの魅力をまわりの人間が発見してくれて、その強みを生かせるようなセットを組んでくれたりとかするので、それが変わらないっていうのはすっごい大きいことだと思います。

Q.最後に、本日の意気込みを教えてください。
Ayaseさん:ようやく今日が14本目の、追加公演だけどツアーファイナル。今日で電光石火ツアーは完結する。
でも、僕も昨日寝るときにすごく思っていたけれど、何か変な特別なことをやろうというより、いままでずっと積み重ねてやってきた『いつも通り』、いつも以上のものを出すっていうことをいつも通りやってきたので、今日もいつも通り楽しく最後の一日にしようと思います。

ikuraさん:ほんとに長旅ではあったんですけど、それが終わってしまうっていうことで。
私としては悔いのないように、全身全霊全力で、お客さんと一緒に楽しむっていうことを目標にしようと思っています。
最後だからいろいろ気負ってしまう部分もあるんですけど、でも、なによりも音楽を楽しむことっていうその原点を忘れないで、今日は歌おうかなって思っているので。それでみんなと幸せな空間を作れたらなと思っています。

印象的だったのは、お二人ともまっすぐに目を見て答えてくださったこと。
これだけ活躍されているにも関わらず、ライブ直前の慌ただしい時間だったろうにも関わらず、どこの馬の骨とも知れない私の質問にも真剣に、上からでもなくただ人として話してくださったように思う。
ほんの数分のやり取りだけで言うのもおこがましいけれど、この人柄、姿勢、あり方、そういったものがチームYOASOBIのメンバーがずっと変わらずにいられる秘訣の一つなのではないだろうか。
(おまけでどうしてもこれだけは言いたい。映像で見るよりも何倍も、生のikuraさんは可愛かったし、Ayaseさんはいい声だった・・・!)

インタビューを終えて開演三十分前になると、最終打ち合わせで裏方を含めたチームYOASOBIが集合し始める。
談笑しているチームYOASOBIは本番直前とは思えないほどにゆるやかで、緊張を感じさせない。
仄雲さんは黙々とドラムスティックで腕を動かし、ikuraさんはスチーム吸入器のようなもので喉を潤わせながらヘアメイクの最終調整を受けている。
それぞれ好きなように過ごしているのに、それがばらばらには見えないのが不思議だった。
打ち合わせが始まるとふっと空気が集中し、ライブの流れや気になるところなどを個々が話し始める。
誰かが発言し、数十分先の立ち位置、動き、演出が変わる。けれどさすがに直前の変更なので、覚えてたらね、の気遣いの言葉が付け加えられる。
特定の一人で作っているのではなく、皆で作る皆のライブという意思があり、最後の最後まで最善を尽くす。それを当たり前として日々を積み重ねてきたのであろうことがまざまざと感じられた。
こうやってたくさんの人の手で積み上げられてきた電光石火ツアーの最終公演が、間もなく始まる。ほんの一瞬だけとはいえ、裏側を垣間見たからこそ、なおさらライブへの期待感は高まるばかりだった。

ツアーファイナル、本番

開演を前に、会場は一万二千人ほどの観客で埋め尽くされていた。
後ろの席では、隣の席になった他人同士がペンライトの貸し借りをしていた。ペンライトを羨む二人組に対し、貸す側から「貸しましょうか」と声を掛けていた。
隣人との関わりが薄いと言われる昨今、こんなやり取りが発生するのか、と驚かされた。
YOASOBIファンの層が良質なのだろうか、と当初は思っていた。しかしこの後のライブを通して、これは観客も含めたチーム感、『ここに集った人たちは仲間』という感覚によるものなんだ、そう強烈に感じさせられることになる。

「YOASOBI、始めます!」
イントロの曲の後、静まり返った会場に響き渡るikuraさんの宣言でついにライブが始まった。

スモークが焚かれたステージ上、逆光で映し出されるYOASOBIとバンドメンバーの影。あえての逆光で会場のボルテージはますます高まる。
そして始まる一曲目は、『祝福』。機動戦士ガンダム水星の魔女オープニングテーマとしておなじみの曲だ。
冒頭の間奏でさっそく観客の合いの手が入る。
「オイ!オイ!」
正直、観客全体の一体感、レベルの高さに戸惑ってしまった。一曲目から会場の盛り上がりがとてつもない。
その後『夜に駆ける』『三原色』と会場全体を盛り上げる曲が続いていく。

『夜に駆ける』は観客にジャンプを促し、『三原色』は前奏部分で「タオル回せ!」と煽り。
その場の全員で一曲一曲を一緒に楽しめるような工夫がふんだんに詰まっていた。
しかもそれはステージ上のYOASOBIメンバーも一緒に、なのである。歌うikuraさん、奏でるメンバーたち、誰もが楽しそうに、自身の演奏の合間を縫って観客と一緒に動いてくれる。会場全体から見えるように、きっとものすごく大きな振りで見せてくれている。観客側だけでなく、ステージまで一体に感じさせてくれる。
これは演出なのかもしれないけれど、皆で楽しみたい、そんな気持ちが溢れ出ているように感じられた。

個人的には『三原色』のラストサビで転調する直前で、ダン、ダン、ダンと大きく叩かれるドラムにリンクして映像が赤・青・緑の三原色に切り替わったところが印象的だった。もともと好きな部分だったというのもあり、それが映像を伴うことでラストに向けてさらに気持ちを高めてくれた。ライブの演出ってこういうことなんだ、と強く実感した演出だった。

MCを挟み、続くは『はじめての』を原作として作曲された、『セブンティーン』『ミスター』『海のまにまに』『好きだ』。
『セブンティーン』では、ザクロさんが本気でヘッドバンキングしているのが格好良かった。とにかくご本人がノッていらっしゃる。それが伝わってきてこっちも嬉しくなる。曲のラウドな雰囲気とは裏腹に、愛が感じられる一幕だった。
途中で銃声が鳴る場面では、映像としても同じく銃痕が現れた。こちらも個人的に好きな部分だったのでこれを発見した時は嬉しかったものの、ライブ後にあの場面でAyaseさんが銃を構えるポーズを取るらしいことを知り、事前学習の足りなさを反省した。今回も(写真を見る限り)やっていらしたというのに、見逃してしまったことが本気で悔やまれてならない。

『海のまにまに』では、ikuraさんがスポットライトを浴びるように、一人だけ浮き上がって曲が進む。

他のメンバーの姿は暗闇に紛れ、ここまでのお祭り感とは対極の、歌詞の通り"ひとり"が強く押し出される。そして海の色、途中から朝日のような淡いオレンジの光、『海のまにまに』のイメージをそのまま表した背景とともに、ikuraさんの優しい歌声が響き渡る。

メンバー紹介を挟み、次は『優しい彗星』『もしも命が描けたら』『たぶん』。
ikuraさんがベンチに腰掛け、語りかけるような歌い出しから始まる。

いずれも切ない曲だ。
『優しい彗星』はずっと淡い照明で静かに曲が進んでいくが、途中の"わずかな光を捉えて"というところで強く、白い光が線のように発せられた。
正直見た目としてはわずかではない。見ていられないほどに強い光だ。でもこれは明らかに"わずかな光"。強い光だけれど、会場全体でみればほんの小さな光。縦に長い線の光は、涙の筋がきらりと輝いたようにも見えた。観客が曲にのめり込めるように、細やかな演出がされているのだろう。
『たぶん』の最後では、フィンガースナップを観客と共に小さくパチリ。優しい曲調で、疾走感のある曲に比べて会場との一体感が出しにくいであろう中、観客が参加できるところを見つけて提供してくれている。ただ曲を届けるだけではなく、『観客と一緒に』を意識してくれていることがよく伝わる場面だった。

最後のMCを終えて、『ハルジオン』『ハルカ』『ツバメ』『怪物』『群青』『アドベンチャー』と一気に駆け抜ける。
後半になるにつれ、また強い一体感が台頭してくる。
『怪物』では赤いレーザーの光が激しく行き交い、あっという間に原作の世界観へと引き込まれる。

間奏での「オイ!」、コーラス部分の「ヘイ!」、最後にまた「オイ!」。とにかく観客の参加どころがたくさんある。
それもあってか、会場の熱気はますます高まっていく。全員で曲を楽しんでいることを誰もがわかっていて、それがさらに楽しさを増やしていく、そんな好循環がぐるぐると回っていく。
『群青』に至っては合いの手どころではなく、はっきりと歌詞のあるコーラスが観客の声となる。さらに渦巻く会場の一体感。青をベースに映し出された映像は、『ブルーピリオド』を彷彿とさせるように、ところどころ絵の具のような表現がされている。

特に曲調が少し落ちた部分から、青一色の画面を絵の具で塗りつぶしていくように、"何回でも""何枚でも"積み上げていく様子が描かれる。そして最後のコーラス部分では、これまで演出に使われていた画面が会場のライブ映像に切り替わり、コーラスを合唱する観客が次々と映し出される。火照った明るい表情で、たくさんの観客が大きな口を開けて歌っている。会場全体が一つになって、曲を作り上げている姿そのものだった。

そして最後は『アドベンチャー』。

ユニバーサル・スタジオ・ジャパンでの思い出を元にしたエピソードが原作となっているこの曲は、しかし歌詞を聞いているとこの日、このライブのことを描いているようにも捉えられた。実際、Ayaseさんも"待ちに待った時別な日"がライブに重なるとコメントされていたし、演出としても今回の『電光石火』のキャラクターが大きく映し出され、今回のツアーを振り返っているような感覚になった。
"やっと会えるね"
"本当にここに来れて良かったな"
"次はいつ会いに行けるかな"
聞けば聞くほど今日のことを表しているとしか思えない歌詞なのである。
きっとこれはライブに参加しなくてもわかるとは思うけれど、ライブにいれば、ライブを待ち望んで日々を過ごしていれば、ライブに参加して楽しんでいれば、その思いは何倍にも強くなる。きっとチームYOASOBIにとっては今日のことだけではなく、電光石火ツアー全体のことでもあるし、もっと大きなことにも思える、私たちよりももっとこれまでの想いとリンクする曲なんだろう。だからこそこの曲をセットリストの最後に持ってきているのだろう。

そしてアンコールには、ニュースに引っ張りだこの世界的名曲『アイドル』。

踊りを挟みながら歌うikuraさんはまさしくアイドルそのもの。観客は残る元気全てを振り絞ってアイドルikuraに合いの手を入れ、会場は最高潮の盛り上がりを見せる。
そしてこの曲の注目はそう、インタビューでAyaseさんに伺ったこだわりの演出。アクアとルビーの光である。最後の方になるとそれを探すことに必死になってくる。
"誰かに愛されたことも"
アイの孤独な気持ちが表現されるように、ikuraさんに夕日のような斜めのスポットが当たる。そしてそのあと、
"ああ、やっと言えた"
ここでようやくブルーとレッドの光が・・・!ここか!
発見できたことに対する安堵以上に、音楽と演出の相乗効果で心が揺さぶられる。そしてそれと同じくらい、その表現の細かさに驚愕した。
なにせ、曲として大事な場面ではあるとはいえ、きっとおそらくほんの数秒。ツアーが始まってもこの数秒まで突き詰めて、演出をとことん考え抜いてくださっているということを意味していたからだ。
これは原作に対する敬意でもあるし、観客に対する誠意でもあるし、チームYOASOBIのプロ意識の表れでもある。
今回ここまでは意図せずして聞いた質問だったけれど、その一端を伺うことができて本当に良かったと感じた。ぜひ多くの人に、これを知ってほしいと願う。

そして終演を彩るきらびやかなテープが舞い踊る中、電光石火ツアーファイナルは幕を下ろした。

『愛』と『感謝』が原動力の『宇宙船』

『愛』『感謝』『宇宙船』
これらは全て、今日ikuraさんから発せられた言葉。改めて振り返ってみると、この言葉が今日の全てを総括しているのではないだろうか。

一つ目の『愛』、これはYOASOBIのお二人、チームYOASOBI、観客、全てが互いに想っている愛だと思う。
YOASOBIメンバーからの各方面に向けた愛はMCなり曲中なり、ライブの端々に現れていて、中でもザクロさんははっきりと「愛してる」と仰っていた。いち観客として疑いようのない愛ばかりだった。そして、観客からの愛が特に溢れていたのは、初めのMCで発生した観客とikuraさんのやり取りだろう。
瞬間目測なので正確ではないけれど、ikuraさんの問いかけに対する反応を見るに、今回電光石火ツアー二回目として参加している人が八割くらい、全てのエリアに参加した人は二十人程度いらっしゃるようだった。
そのうち、全エリアを制覇したタクヤさんにikuraさんが声を掛けた。ikuraさんからの「YOASOBIの好きなところは?」という質問に、タクヤさんは「曲も良くて、ファンのことを愛してくれているところ」と答え、会場は大いに沸いた。お互いの愛が通じ合っている証拠だろう。
さらにikuraさんは、今回初めてライブに参加した方の一人に声を掛ける。YOASOBIグッズで身を包んだこの方は、「一番好きな曲は?」という質問に、数秒しっかり悩んだ末「全部!」と答えた。この回答に会場はさらなる盛り上がりを見せた。
いずれの質問に対する応答も、曲の合いの手と違って、この場での生のやり取り。この質問に大正解としか言いようのない答えを返すお二人、それに同調して沸く観客、これらは全てYOASOBIへの愛がなせる業だと思った。

二つ目は『感謝』。これも同じく、全方位双方向に向けてのものだ。観客からYOASOBIに向けて、は言わずもがな。一方ステージ上のYOASOBIメンバーからも、見ているだけでも楽しい、ありがとう、そんな気持ちが溢れて見えたし、MCやインタビューにおいても、裏方の方々やメンバー同士、観客に対する感謝を何度も述べていた。
そして、ikuraさんは全ての曲の終わりに、必ず「ありがとう」を伝えてくれた。全て心のこもった、声色の異なる「ありがとう」。
ライブの終わりには全員で深々と頭を下げ、ikuraさんとAyaseさんはステージの端から端まで往復して、観客の一番近くまで行って笑顔で手を振り、「ありがとう」をめいっぱい伝えてくれた。

うわべの言葉ではなくて、全員が本当に感謝を感じて伝えようとしている、そんな風に思えた。

三つ目は『宇宙船』。これはikuraさんがMC中で、YOASOBIを例えた言い回しだ。
船員である観客と観客の夢を積んで、一緒に旅をしていくのがYOASOBIという船。ふだん大変なこと、辛いこともあるけれど、この宇宙船に乗れば夢を見ることができる、旅に出ることができる。ikuraさん自身がそう思っているし、観客にもそう思ってもらえるライブを作っていきたい。そんな風にikuraさんは語っていた。
これはもうすでにそうなんじゃないかと思う。あの場にいた誰もが、ライブを楽しみに日々を過ごして、待ち望んだ夢を見に来た。普段は上げないような大声で声を出し、大きく身体を揺らし、二時間弱の時間に熱中した。その夢はあっという間に過ぎていってしまうけれど、またその夢を見に私たちはまたライブにやってくる。
まさしく『アドベンチャー』の歌詞の通り。
あえて『宇宙船』という、宇宙規模の例えを使ったことも面白い。どこに行くかわからない、終着地がない、夢に満ちた世界、そういったイメージをされているのだろうか?いつか機会があれば聞いてみたい。
いずれにせよ、この宇宙船はきっと愛と感謝があるからこそ前に進めて、船員も旅に出ようと思える。今回の旅を通じて、YOASOBIの原動力は愛と感謝に違いないと感じさせられた。

今日のライブは最終日だけれども「気負わずに、普段通りに」、とAyaseさんは事前に仰っていたが、やはりどうしても最終日という寂しさがぬぐえず「エモくなってしまった」、とAyaseさんがMCで零していた。これは観客も同様だろう。
愛と感謝に満ちた夢から醒めること、それはとても寂しいことだけれど、私たちはこの夢を見たから、またこの夢を見られるから、日々を頑張っていける。電光石火は終わっても、それは旅のほんの一部分なのだ。

宇宙船YOASOBIの旅は終わらない。私たちを夢の旅へと誘ってくれる愛と感謝に満ちたチームYOASOBIに、心からの愛と感謝を。

『はじめての』文芸部第一期生 八川羚

Photo by MASANORI FUJIKAWA

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