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私たちは何も言わない葦だ
ただそこに揺れているだけで飾りにすらならない
気にかけても貰えず
あることすら認められず
我をはれば疎まれて
刈り取られてしまうばかりの弱い葦だ

私たちは唖のように黙り
息を殺して生きている
考えてないふりをして
知恵のないもののように見えるには
どうしたらいいかと考えている
聞こえてないもののように振る舞い
本当に耳に蓋をしている

私たちは牛のようにのろく
呑気に草を喰んでいる
日がな一日同じところで
ただひたすらに喰んでいる
咀嚼するのが難しく
辛くて悲しい気持ちであっても
一生懸命、
ただ一生懸命噛み続けて
同じ草を喰んでいる

私たちは葦だ
昨日も今日も
きっと未来も
変わらぬ葦でいるだろう
もし誰かが葦を踏み
折れたとしてもそこにある
刈り取られない限り根を張って
ひっそり風に揺れている

けれどもしも、
もしもがあるとするならば
葦ではない人生を
どこかでやり直せる人生を
誰かに認められる人生を
花瓶に活けた花のように
輝く美しい人生を
過ごしてみたいと思うのだ

潮風が強い今日
満月が空を明るく照らしている
そして今夜も私たちは
何も言わない葦である

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