ひらめき☆マンガ教室第一回課題実作感想
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ひらめき☆マンガ教室第一回課題実作感想

遠野よあけ

 ひらめき☆マンガ教室にて提出されたマンガ(実作)の全作感想になります。ここで感想を書いた作品は、すべてWebで読むことができます。

 漫画も面白いですが、武富健治さんによる課題文も漫画に限らず創作において気を付けるべきヒントがいくつもあるのでそちらを読むのもおすすめです。

 あと、感想の前置きとして。
 各感想は特に一貫した評価基準をもたずに、作品を読んで個別に考えたこと思ったことなどを書いています。そうしたことを、なるべく言語化してみたのが、この記事になります。文章量が多くてほとんど推敲できてない点はご容赦ください。
 全作読んでみて思ったのは、当たり前といえば当たり前なんですけど、漫画を描きたい人が多いのだな、という……いや、当たり前なんですけど、「漫画を描きたいけど、何らかの葛藤によってそれができない。でも最終的にマンガを描き始める」という話をたくさん読んだので……笑 個々の作品へ思ったことでなく、単純に今回の課題の作品を雑誌みたいに読むとそういう感想になりそう、みたいな話です。今回は課題的にそういう傾向が生まれやすいので仕方ないんですけど、ゲンロンスクールのようなコンペ式の発表媒体だと、他の人とやってることが被ると競争が激しくなるので、どうしても似た作品と優劣を比べてしまう意識が働くし、単純に印象が弱くなる。とはいえ今回は課題が課題ですからね。

 というわけで感想を書いていきますね。

01 シバ「灯台もとヒツジ」

 ヒツジかわいい。でもヒツジが何者なのかいまひとつピンとこないのが若干もやもやしました。羊の登場時の「もふ」という擬音のフォントが、よく連載漫画の最後のページのあおり文みたいなフォントであることや、羊が「ごっこ遊び=フィクション」を作る存在であることから、なんとなくマンガのなかの現実とは異なるレイヤーの存在のような気もしました。でも最後のページでは、主人公がヒツジの持っていた人形とスクリーンに映っていることから、人形は少なくとも現実に存在しているようです。ということは「主人公は公園のベンチに置いてあった人形を拾った」というのが現実に起きていたことで、ヒツジというのは主人公の見た幻覚なのか?という気がしました。でもヒツジが幻覚と思えるのは、アピール文でそういったことが書かれていたからで、作中からヒツジが幻覚であることを読み取るのは難しい気はしました(主人公が「激務のせいで幻覚が!?」と言っていますが、通常はこの台詞は「幻覚のように思えるが、現実に起きていること」を伝えるよくある台詞だと思うので、作品を読んだ感じでは、この台詞があることでヒツジは現実に存在するという印象を抱きました。しかしそうなると、ヒツジは一体何者……?という最初の疑問に戻ってきますw)(あと書きながら気が付きましたが、「もふ」のフォントはアイドルの台詞と同じフォントなのを思うと、前述の解釈はあまり成立しないですね)
 好きな場面は、13頁でヒツジが「よかった…」と言うと、まるで人形が返事をしているかのように「よかったね…!」という台詞が書かれているところですね。この「よかったね…!」がヒツジと人形のどちらの台詞と読むかで、なんかこのコマの情感が変わってくるような印象がありました。僕はどっちでも好きですがw
 ヒツジの人形のステージが、主人公のヘルメットで完成するというのも、主人公の仕事が誰かの役に立つものだという感じがしてよかったです。誰かの役に立っているし、有休もとれるし、いい職場そうですね…!w
 最後の「あんなにライブ観てサボっていてか!?」というツッコミも「それな!」って思えてよかったです!
あと作品と関係ないですけど、アイコンに目力があってすきです!

02 ahee「「いただきます」が言えなくて。」

 ネームで気になっていた点が見事に修正されていてすごいと思いました!すごい!読みやすくなっている!!
 タイトルのページに作者名ではなく、TwitterID?があるのは、単純に見慣れてなくて違和感がありました(作者名なんだろうか?)。ダメじゃないはずですけど、見慣れないものは違和感を覚えるものですね…。
 4頁の「もりつけキレイだね」はそんなにキレイに見えなかったのが残念ですけど(たぶん色の問題が大きいかなと感じました)、漫画はこういうとき視覚的に「キレイ」を描かないと成立しないので大変そうです…。
「いきてると…怖いだろ……」に対しては、僕も「は?」と思いましたwでも、このコマの魚のデフォルメはこれでよいのかちょっとわからなかったです。この漫画で、魚は「刺身、生きてる状態、「怖いだろ」のコマのデフォルメ、死体、頭」といくつか描き分けられているのですが、「怖いだろ」のコマの魚は、お父さん視点で見える「生きてるから怖い魚」の絵ですよね。お父さんには、生きている魚がこのようにふにゃっとした得体の知れない生き物として見えている。このお父さんの視界にうまく共感ができなかったような気がします(でも、「は?」があるので、お父さんと読者の距離を開けたままにするために、ここに共感を生まないという考え方もあり得ますね…でももう少しこう、このコマの魚は描き方があったような…でも感想書きながらじっとこの魚を見ていると得も言えぬ魅力を感じますね…生きているようにも死んでいるようにも見えない気がしてきた……w)
 既にふれましたが、主人公のツッコミはいちいち面白かったです。あ、あと最後のコマの「バン」ってなくてもいいような…?これがあると、「ごめんなさい」と「バン」で余韻がかちあっちゃうので、どっちかでよかったような気がしました。

03 あまこう「リアルとフィクションの狭間」

「なんて事考えてたら面白いもの作れないでしょ」という主人公の独白にはとても共感したし、お話自体はとても楽しく読ませて頂きました。だからこそ、幾つかの些細な違和感が勿体ないなと思ってしまいました。
 幾つかの違和感についてですが、例えば「エロ漫画家って知ってるなら察してくれよ~」の意味を察することができませんでした…病院のエロい話をしてくれ、ということ…?でも「そこは心霊現象とかじゃないの?」と言っているので怖い話を聞きたかった…?エロが聞きたかったのか、怖い話を聞きたかったのか混乱しています…。
 8頁で主人公の髪をしばっていたゴムが外れているのですが、いつ外れたのかわからず、もしかして翌日とかになったのかな?と思ってしまいました(この見開きにもう一人が描かれていないのもその印象を感じさせました)。主人公の気力が萎えたことの表現だったと思うのですが、いつゴムが外れたのか、がわかったらこの辺が読みやすかったような気がします。
 あと、ネームだと「現実感なくてぶっ飛んだキャラ」だったのが、「現実にいそうでいない絶妙なキャラ」に変わっているのですが、獣人とか宇宙人とかは現実にいそうな感じがしないので、前後の台詞のつながりに違和感を覚えました。(たぶん、タイトルの「リアルとフィクションの狭間」という言葉に合わせて台詞を変えたのかな、と思いました。その変更自体はよい変更のように思いました)
 電子書籍の表紙がちょっとだけうつるコマは、ネームのほうが雄っぱいがよく見えていてよかったような気がしました。絡みを描くことでBLジャンルということが分かりやすくなったのですが、でも雄っぱいも見えていたほうが説得力を感じるような気がしました。

04 俗人ちん「葛藤の修行生活」

 あまり知る事のできない世界を描いているのでそれだけで読み進めたくなるマンガですね。僧侶ってみんな髪を剃っているので、キャラとか見分けにくいかと思ったのですが、すらすらとストレスなく読めました。
「もたもた運ぶな!」って台詞がほんと嫌でいいですね!言われたくない台詞ベスト10に入りそうです!このコマが2頁目に移動したこともうまい修正だと感じました。もうこのあとは、この台詞の嫌な感じに「嫌だな…」って思い続けるんだろうな…という予感を覚えるいいコマだと思います。また、「流されてしまう自分(自分の意志で決められない自分)」という葛藤を一言で伝える意味でもいい台詞だと思います。あと絵としてちゃんと怖い感じが伝わってくるのがよいです。
 初日で下山した班長の行動が、主人公が変わろうとするきっかけのひとつになっているのも面白かったです。班長の行動に対して「よわいやつだなあ」「環境が向いてなかったんだなあ」とかではなく、「うらやましい」と思える主人公だからこそこのお話が成立するのだろうなと感じました。ストーリーの根幹の部分がしっかりしていて好感がもてました。
「もたもた運ぶな!」の人が、意外と話の通じる人だったのには驚きました…実はいい人だったのかもしれない…


05 藤原白白「かわいい好きには」

 ぎょぴちゃん懐かしい!!
 デザイナーの方だからなのか、画面作りがうまいなと思いました。扉の頁も、読者がこの漫画を読み進めることと、主人公が好きな漫画を読むことがシンクロするデザインになっていて面白いです。白と影が主人公の感情の二面性を予感させているのもすごいですね。
 他方で、ネームにくらべてキャラの表情などがよみとりにくくなっている箇所があると思いました(3頁4コマ目の友人の顔が、たぶんipad miniの小さな画面で読んだこともあって、あまり楽しそうに見えない。拡大すると楽しそうな顔だとわかるのだけれど)。
 あとデザインすごいなあ、と感じたのは、4頁の全体が、台詞の文字ぜんぶ消してもなんかコマや吹き出しの感じで何が起こっているのかが伝わる感じになっているとこです。これ、変な話ですけど、進研ゼミの漫画の台詞入れても成立する感じが面白いですw(ページの上段で「あ、ここ進研ゼミでやったとこだ!」下段で「進研ゼミってすごい!もっと勉強したい!」最後の小さいコマで「どうすればお母さんを説得できるかなー」みたいな笑)
「蔵馬の方が一億倍かっこいいと思う」はほんとそうですね。
 7頁目の文字だけの頁も、6頁からの流れがあるのでとても自然に読めました(でも漫画の頁としてはちょっと寂しく見えてしまいました。善し悪しのような気もしました)
 ネームのときの「オット~~~~~」がすごい好きだったんですけど、ペン入れすると魅力が落ちていたのが本当に惜しい…でもこれはペン入れに慣れてきたら解決するような気がします!!ネームのときの「オット~~~~~」は本当によかったです…!(あと、「~~」はなんかうまいこと記号の間の空白をなくしたほうがかっこよいです。文字間詰めるとかで。空白があると、同人誌っぽいというか、こなれていない感じに見えてしまうので)
「好き」の箱を開いた藤原さんが、ひらめきマンガ教室でこれから描く漫画を読むのを楽しみにしています。

06 かずみ「漫画を描きたい」

 キャラがかわいい。あと俯瞰とかあって絵がうまい…(俯瞰を描ける人は絵が上手いという認識の人なので…)
「ロボットがかわいいだけの漫画」とかぜんぜん良いのに!あの編集者なんにもわかってねえな!まったく!!…みたいなことを思ったので面白かったですwいやこれは別に雑な感想とかでなくですね、読者がこう思えるということはちゃんとその手前までのシーンで、ロボットのかわいさが描けているからこそで、この編集者に対しても「ロボットがこんなにかわいい漫画が現実にここにあって、それはかわいさだけで面白いって感情になるんだぞ!」って感情が芽生えるんですね。だからこの出張編集部の場面は感情的に読んでしまいました。作者の掌の上ですね!
 こんな風に感情移入すると、9ページでロボットが間接的に伝えてくれる感想にもシンクロできるというか、むしろ僕の感想をロボットが伝えてくれているのでは?みたいな感覚も芽生えてとてもよかったです。最後にちゃんとギャグがひとつ入るのも読後感が落ち着いて好きです。
 一番かわいいロボットは6頁の「やったーー!!」のロボットですね!

07 こぐまあや「わたしとマンガ」

「…いや、私は何も作ってない側の人です」って台詞ー!僕も言ってた時期あるーーー!!!なんか、こう、肩身狭いっていうか、なにか、こう、作ってる人たちと同じ空間で肩を並べたい気持ちはあるのに現実には作ってるもの見せてない時期ー!!!あとこのときの主人公の表情いいですね。僕もこんな表情していた気がする……!!この台詞言うのに慣れてくるとリアルでは「……」すらなくノータイムで言えるようになるやつーーー!!!
 感情を殺したり、逆に大きく動いたりしている場面の絵の表情にちゃんと力がはいっている感じがしてとても読みやすかったです。この話で大事なのはこの瞬間!っていう誘導がとてもスムーズでした。
 タイトルはもっと工夫できたような気はします。たぶん、この作品で重要なのって「わたしとマンガ」よりももっと抽象的で具体的なポイントだったように思います。タイトルはなんかそれをつかみ損ねているような。タイトルがふわっとしているせいで、この作品の固有性がぼやけていて、そこは惜しい気がします。


08 kinositamarisa「人の心が聴こえていた頃の実体験話」

 これから物語が展開される、という感じを受けた次の頁で終わってしまったのが残念でした。4頁目と5頁目の間にあるであろう物語を読んでみたいですね。
 予知夢の描写は日常的で読みやすいのですが、もう少し物語的な外連味があってもいいのかなと思いました。ただこの作品のあるべき完成形みたいなものが、現状ではわからないので、外連味とかが必要なわけじゃないのかもしれないですね。うーん。作品の全体像が見えないのであんまり言えることがなくてすみません。
 ところでPNはひらがなか漢字にされたりしないのでしょうか…?ローマ字のPNでこの文字数だとパッと見で読み方を認識できないので素朴に気になりました。


09 kubota「不思議としか言いようのない気分なんだ」

 本田圭佑!!
 本田圭佑!出てきて驚いたし笑いました!!
 本田圭佑が出てくるまで「これなんの話なんだ??」と訝しく思いながら読んでいましたけど、本田圭佑が登場後の後半は怒涛のように物語が畳まれていってすごかったです!本田圭佑って日本の最後の試合で負けてたのかー!へー!みたいな雑学的面白さもあったし、本田圭佑登場後はまったく退屈せずにぐいぐい読ませられました。スロースターターな漫画ですけど、前半の主人公のけだるげな感じとかも読みにくさとかがなくてよかったです。試合中の絵は少ないですけど、5頁の4コマ目とかはちゃんと選手それぞれが考えてプレイしている感があってよかったと思います。読み返して気が付いたんですけど、回想を含めてもプレイ中の絵は全体で5コマしかないんですねw意外と少なくて驚きましたけど、初読時はぜんぜん気が付かなかったです(7頁目でプレイ中の絵を描かずに演出で描いているところなど上手いと思いました)。
 あと、この漫画を読んだことで、本田じゃんけんがそんなに嫌いじゃなくなりました笑


10 のり漫「帰れないひとり」

 すごい好きです!今回の実作で一番好きです!!
 僕は、こう、個人的な趣味嗜好ですけど、「家に帰る話」というのがなぜか大好きで、理由はよくわかんないんですけど、家に帰るだけのことに苦労する話がとても好きで、そのモチーフだけで感動してしまうんですね……長い物語のなかの1エピソードとして、家に帰る話が書かれるのも好きですけど、話全体が家に帰るだけという話は美しいとすら思います…。
 夜のくらさや、ひとりで行動しているので会話や合いの手がほとんどないこととかもよかったし、スーパーのトイレで電源を盗むとこもリアリティありました。わかる……。旦那さんが主人公と対称的に表情変わらないのもいいですね。あの表情は、家というものを象徴している気がします。
 主人公が苦難に何度も直面する様子は、とにかくひたすら「家に帰るのは大変…本当大変…」という思いを感じながら読み進めました。ぼくいまこの文章「大変…大変…」しか言えてなくて語彙力壊滅的ですが、いや、ほんと、家に帰るのは大変だから……。すみません……。
 冷静になりつつ、ふつうにマンガの話をすると、キャラクターの絵柄が感情豊かでとても好きです。日常のなかの感情の動きを伝えるのに適した絵柄のような気がします。15頁の「大丈夫ですか」は吹き出しの位置や形のせいで、どっちの発言なのかわかりづらい気はします。マリア様のエピソードや、翌日は交番に警官がいる描写とか、その辺が劇的でなくさらっと描かれているのも好きです。義理の弟は謎過ぎてこわい。でもこの漫画が「さっさと寝ましょう」という言葉で終わるのは好きです。夜は家で寝るのがなによりです。


11 つまようじ「たからもの」

 小学校のころって、一日ごとに喧嘩したり仲直りしたり喧嘩したりしていたことを思い出しました…。あの頃の日ごとの友情の変化は早かったし劇的だったような記憶…。子供ってじぶんだけの持ち物が少ないせいか、大切なものが身の回りにいつも幾つかあった気がします。そういうのが原因で喧嘩になったりとか…あるあるな感じがしました!
 子どもらしい感情の起伏や表情がころころ変わる感じとかも伝わってきてよかったです。あまり大人が無理して子どもの内面を作っている感じしなくてフィクションとして好印象です。
 ハムスターの墓の名前は、「ハムスター」ではなくちゃんとその子の名前のほうがそれっぽかったかも?
 あと廊下でセグウェイは笑いましたw今回の課題で、他の方の作品もふくめて、この場面が一番「これは実話なんだろうか…?」と気になりましたwあと『六法全書』も…ww


12 西岡京「ラストワン」

 なにか、こう、とらえどころのないお話でした……。何が描いてあるのか、ラストでどういう感情が描かれているのかはわかるのですが、ラストに至るまでの過程がうまく追うことができず、もやもやとしてしまいました。1頁目の「あのとき」というのがいつのことなのか明確にわからなかったり、同じく1頁目でなぜ窓が印象的に描かれているのかもピンとこなかったり、4頁目の「具体的な内容は子供の私にはわからなかったが意味は分かった」というくだりでは大人の僕には具体的内容も意味もよくわからなかったり(叔父の説明がわからないのは「子どもだから」なのでしょうか…?大人でもこの情報ではわからないような…)、10~11頁の見開きの効果がいまいちわからなかったり(向き合ったり、対称的だったり、なんか考えさせられるコマなのですが、「こういうことかな?」と確信できるほどに意味や感情が誘導されていない気がしました)……。ラストの頁の抒情性なんかはちゃんと感じるのですが、それが16頁かけて積み上げてきたものかというと、そういう感じがしなくて、なんか最後に唐突に抒情性だけがぽんと手渡された感じがしました……。不意の再会と、遠い過去にいなくなったものたちの幻視というのが重なるという感じは伝わるのですが……といった感じでした。


13 畑こんにゃく「たまごOLたまこ」

 ネームと比べて、ちゃんとお話の最後に成功体験としてオチが描かれているので読みやすくなっていると思いました!10頁のキックしている姿が力強くていいですね!このお話のイメージが伝わってくるいい絵だと思いました。スリッパもギャップがあって可笑しいですwやはり筋肉は裏切らないのか…心のボクササイズ…心の筋肉…!「この、誤字誤字誤字誤字誤字誤字」の台詞は面白いのですが、印象的な台詞なのに吹き出しのなかがスカスカでもう少しうざい圧をだせそうな感じもしました。でも課長のうざさと、たまこの天然っぽいつよさがちゃんと感じられる絵とお話になっていて面白かったです。主人公の「私」がなにかしらたまこからエネルギーをもらっているのもいいですね。
 ここからいろいろ要素を足したり削ったりしてもっとよくすることは可能なんでしょうけれど、この時点で「おもしろいマンガをひとつ読めた」という満足感があるので、すごいことだと思います。畑こんにゃくさんがここからどんな漫画を描いていくのか楽しみにしています。


14 片橋真名「母は迷探偵」

 短い頁数でよくまとまっているなあと思いました。お話についてなにかうまく感想を書こうと思いつつ、一言でうまくまとまらないですね。他人に必要以上の関心をもつことが悪いのかとか、不必要な関心を封じることがよいことなのか、この辺の匙加減はつねに万能に働くバランスというのがなかなか見つからないものだなと思いました。お母さんの迷推理が最初と最後でほとんど変わっていないのも、そうだよね、と思いました(でも7頁で交わされる会話みたいなものは良いなあと思いました)。
 感情の起伏なんかもコマ割りで表現されていて読みやすかったです。最後の頁のお母さんの変わらない表情や言動なんかも憎みきれない感じがしてよかったです。でも身近にこのお母さんがいたらとても疲れそうですね!w

15 くたくた「どうせゾンビ」

 アピールの「そして今、なぜかマンガを描いています(なぜなのかは不明です)」という文章がなんかいいですね…いいですねとか言われても困るとは思いますが…なんかいいですね…なんか大事なことの感じがしますね…。
 アイコンのデザイン感も好きです。一番面積とってるのが「足の裏」というのもなんかいいですね…足の裏って、あまり見ないんですよね。ふだん、立ってるから。寝てる姿勢だとよく見えますね。本人は寝てますけど。
 そして漫画の話ですけど、「死ねてないじゃんっ!!」はベタに良いですね。わかりやすい掴みです。失敗から始まる話って読みやすくていいですね。主人公は自殺に失敗したわけですけど、本当に試みたかったことは自殺以外のことで、その本当の試みにも失敗していて、それをやり直す話なんだろうなと感じさせます。
 ゾンビものとしては、詰め切れていないという感じもしますが(というかこの内容はほぼゾンビ関係ないので、ゾンビものの系列としてはかなり周縁的な作品という印象)、一般社会(日常)とゾンビ世界(非日常)の間でないと言葉にできない感情みたいなものが描きたかったのかなと思いました。
 ゾンビがカラスを食べるのって、なんか「らしいな!」っていう感情と、「いや人肉じゃないのか。カラスとゾンビは関係なくね?」という逆の感情が沸き起こってギャップがおかしいですwコンビニのファミチキをベンチで食べているかのごとくカラスを食べてるのも絵面がおもしろかったです。11頁の移動中のシーンとかも、映画とかだとそれっぽいBGMとともにダイジェスト風に挿入されるシーンっぽくてよかったです。経緯がよくわからないけど月夜に自転車を二人乗りしてるコマとかいいですねw最後のコマが月なのも、あの自転車の夜のわくわく感とつながっていてよかったです。人間だろうがゾンビだろうが、わくわく生きていきたいですね。どうせやらなきゃいけないことなんてないんだから。


16 柴田舞美「雪うさぎ、つくる」

 うわー!ネームから実作になってすごいよくなっている!おもしろいです!!特に扉絵からもう読ませますね!この一枚絵はとても好きです。雪の日に子供がひとりで雪遊びをしている情景というのはそれだけで絵ですね…!
 絵のタッチもやさしくて好きです。冷凍庫を開けたら「ブロッコリー」という文字だけ読めたり、パジャマにコートとマフラーをひっかける動作とか、6頁の鼻水出てる顔とか、8頁の葉っぱを抱きしめる小さなコマとか、そういう細かい場面の絵の強さが目を引きました。アピール文ではドラマチックな点を補強したと書かれていましたが、こうした丁寧な描写が絵にできるなら、ことさらドラマチックな内容でなくとも、読ませる漫画を描ける人なのではないかと感じました。葉っぱを抱きしめるコマがなくても、物語の内容は読者には伝わるんですけど、あのコマがあるから、些細な感情の確かさが読者に伝わってきている気がします。これはドラマチックな話にも、些細な感情の揺れを描く話にも使える武器なのではないかと思いました。しんだんじゃなくてよかった、って安心したら、そりゃ葉っぱを抱きしめますよね!(ってなんか思わせる力が絵にありました)(でもラストの頁は描かなくても、大事なことはその手間の頁までで読者に伝わる気がするので、ラスト頁は思い切ってなくてもよかった気がします。好みの範疇かもしれませんが、その方が全体がよりシュッとする印象でした)

17 田山「空と伯爵」

 ネームを読みアピール文を読み、実作を読みアピール文を読み……という過程をたどった結果、アピール文の印象がとても強く残ってしまったので、一晩置いて実作を読み返してみました。
 絵柄はかわいらしくて、四段を基本としたコマ構成も読みやすかったです。「前世」は4コマとしてもくすりとしました(兄が爵位を買ってくれる?のはやや唐突に感じられてしまう感もありましたが)。
 物語の中身としては、「青空に憧れる伯爵と、その憧れのみを引き継いでいるらしいTくん」がいて、「Tくんは自分がなぜ青空に憧れてしまうのかわからない」ということかと思いました。それと、Tくんは青空への憧憬を無意識?に持ちつつ、それに対してやや否定的?な感情(「馬鹿にしてら…」)ももってるのかと思いました。つまり自分のことをうまく受け入れられない、受け入れようとしている途中なのかと思いました。
 また、Tくんは「何が不満なんだ」という疑問をもっていて、それに対するある種の答えが11頁の青空の絵だと思ったのですが、読者としてはここがうまく飲み込めなかったです。物語的には、こうしたクライマックスでは、主人公の感情とか状況とかの変化が描かれると思うのですが、この作品では青空はずっと崇高なものの象徴として扱われているので、読者としては構成的にすんなり理解するのが難しい。もしかしたら、あの青空を眺めているときのTくんは、伯爵と同じ風景を見ているのかもしれないと思いましたが、その場合はあの場面より前に、伯爵が同じ風景を見ている演出がないと伝わりずらい。…あ、でもいま気づいたのですが、最後の遺稿は伯爵ではなくT伯爵のもの、つまりTくんがこの後の人生のどこかで書いたものなんですね。T伯爵の遺稿が、まるで伯爵が書いているかのような文章になっていることが、伯爵とT伯爵のシンクロを示しているんですね(タイトルにTくんの名前がなかったのが気になっていたのですが、「空と伯爵」の伯爵は、伯爵とT伯爵のどちらも指す言葉なんですね)。なるほどです。そうするとこの漫画のストーリーは、Tくんがあの遺稿を書く状態に至るまでのきっかけ、あるいは通過点のようなものだったような気がしてきました(最後のコマに鳥がいるので、Tくんの最後も伯爵のような鳥葬、つまり青空に近付きたいという思いを抱えたまま死ぬ、なのかなということが示唆されているのだと思いました)。なるほどです。
 ただ、「その憧れだけは永遠に残り続けるのだ 殆ど呪詛として、意志も自覚すらもない追憶として」という文章がこの作品の、Tくんの現時点での結論のようなものだと思ったのですが、ここがあまり読者としての僕の胸には響かなかったです。僕はそういう人間ではない、と言えばそこまでですが、漫画の力のひとつには、「主人公と全然違う人間である読者にも、主人公の感じたものに共感させる力」があると思うので、僕のような人間にもTくんの遺稿の言葉が胸に迫るような作品になっていたらもっとよい作品になっていたと思いました。
 アピール文にかなり強い主張が書かれていたので、アピール文の内容はできる限り忘れて再読した内容がこの感想になります。

18 横たくみ「I am a Snoozer」

 話も絵もわかりやすいし、描かれている感情もよくわかります(僕も29歳で突然焦りだして創作を再開したりしてゲンロンスクールに来たので)。ただ漫画としては、うまく言えないですが、なんとなく目が滑ってしまい、読後に強い印象が残らない。なぜだろう…。ひとつには、知っている感情しか描かれていないので、意外性やエンタメ性が少ない気がしました。あともうひとつ、読者が頁を捲る手がとまってしまうようなキメの絵や場面がなかったように感じます。これが6頁くらいの漫画ならさらっと読めていいんですけど、16頁なら読者の記憶に残る絵や場面がほしいなと思ってしまいました。高望みなのかもしれませんが、それがあったら、この作品の印象ってぐっと良くなっていたような気がします。ささっと最初から最後までを流し見でみたとき、ぱっと見のコマ構成とかがほとんど同じに見えてしまうような印象をもってしまうことも、なんとなく目が滑ってしまう遠因なのかもと思いました。あと全体的に顔の大きさや表情の感じが全体的に均一なこととかも。
 話には起伏があるのに、視覚的なリズムが均一に見えてしまうということなのかもしれないです。うまく伝えられてなかったら申し訳ないです。


 これで全部!12000文字程になりました。
 ネームの感想を書くこともちょっと考えたのですが、いまの作業量的に実作の全作感想だけで今期は手一杯になりそうです…申し訳ない。とはいえネームも全部読んでいますので!(実作よりももっと短いネーム感想とかなら書けるかもしれない。メモ程度のやつ)
 次回課題の提出作品も楽しみにしています!




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遠野よあけ
作家・批評家。批評誌『クライテリア』編集長。佐々木敦批評再生塾卒業生。大森望SF創作講座4期受講生。ひらめき☆マンガ教室3期聴講生。SF。創作。小説。漫画。現代アート。ボドゲ。TRPG。阿澄佳奈さん。yoakero@gmail.com