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英訳:EU加盟国の育休、長期化傾向

 親という仕事を完璧にこなせる人はいない。慎重すぎても、おおらか過ぎても、誰かに「その子育て、間違ってる」と指を指される。悩みは子どもが誕生する前から始まっている。「育休をどれぐらいとるか」を決めないといけないからだ。短すぎれば、子どもとの貴重な時間を過ごせない。長すぎれば上司からやる気が無いと思われる。この問題に頭を悩ませてきたのは親だけでない。政策立案者も何十年も検討を重ねてきた。

 ヨーロッパの多くの国は、1980年代から育休をとりやすくしてきた。EUは母親に最低14週、父親には2022年から最低2週間を法定期間としてきた。しかし多くの加盟国はもっと長い休暇を提供する。EU内の平均は女性に21週、男性に3週間。期間は国によって異なる(表を参照)

 激変しているのは父親の育休だ。法制化の先陣を切ったのは北欧だった。スウェーデンは1974年に両親が分け合える有給の育休を導入。現在では計69週までとれる。ノルウェイは1990年代、初めて父親に有給の育児休暇を導入(4週)。スウェーデンが2年後に続き、EUの全ての国に広がっている。
 ドイツは近く、父親育休を導入する最後のEU加盟国になる。期間はEUのルールに合わせて2週間としている。複数の国は母親の育休を短縮することで、男女でわけあえる休業の財源を確保し、父親が取得しやすくしようとしている。スペインは2021年、女性と男性の育休を同じ長さの16週にするEU唯一の制度を導入した。男女で同じ期間にすれば、雇用者が女性の採用を避ける傾向を是正できるのではないかという狙いだ。

 フランスのマクロン大統領は女性の労働市場参加を後押しするため、育休を両親ともに6カ月にすると表明した。現在は女性は男性と分け合える休暇も含め、最大で42週間の育休を取得できる。育休の長さと女性の就労には反比例の傾向がある(表を参照)が、ほかにも多くの要素がある。たとえば伝統が、仕事の選択肢が少ないなら女性は家にいるべきだという影響を与えるかもしれない。
 
 ただもっとも寛大なシステムにも、落とし穴がある。「もし休業が無給だったら、休みをとれる富裕層のための制度でしかなくなる」。ブラウン大学のエミリー・オースター教授(経済学)は語る。マクロン大統領は「有給休暇を改善すれば、両親が子どもと半年いられることにつながる」と1月に述べた。育休は、子どもを増やそうという動機になるかもしれない。2022年の調査では、より育休中の給与水準が高い方が出生数がやや改善するとの結果が出ている。

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