第5話:適合局面とは?
1.股関節を安易に動かすのは危険
臨床で股関節を動かさせていただく中で、これまで幾度かの失敗を経験してきました。幸いにも「人工股関節の脱臼」は一度も経験が無いのが救いでしょうか。
基質的疾患が無い股関節ならいざ知らず、臼蓋形成不全や変形成股関節症などの何らかの病態を抱えた状態の患者さんに対して、安易に股関節を動かすことはとても危険です。
”よし、まずは他動評価を丁寧にやってみよう。”
このくらいの意識で注意深く評価のみを行っただけで、それでも疼痛が悪化してしまった(させてしまった)経験もあるくらいなのです。
その要因としては2点考えられます。
①若年層の患者さんで滑膜炎が強いと想定されるケースにおいては、組織抵抗力が著しく下がっている可能性がある。
②病態として”股関節の不安定性”が背景にあるため、異常運動が複数の運動面であり、靭帯や関節包も緩んでいる可能性が高く、剪断の動きやスパズムも誘発しやすいと想定される。
2.適合局面について
📌股関節(臼蓋+大腿骨頭)においては適合性が保たれる面が存在し、”適合曲面”と呼ばれています。
・屈曲、外転、外旋位 から
・伸展、外転、内旋位 まで
📌この曲面上では、股関節の接触面積が常に最大であり、骨性のインピンジメント(引っかかり)を避けられる利点があります。
言い換えれば、軟部組織の制限をかなり絞って評価できる領域、とも言えます。
*臨床的には、屈曲外転外旋領域ではハムストリングス・外旋筋群など大腿後面の軟部組織評価を行い、伸展外転内旋領域では大腿前面組織の軟部組織評価などを行っています。
📌またこの領域を外れた動きはTHA(人工股関節置換術)の脱臼肢位であるため、適合局面上で動かすことは脱臼リスクは低いです。
3.まとめ
💡適合局面を知ることは、安全に股関節を動かす点でとても大切です。
💡積極的な評価をする前に、まずは安全な領域を知り慎重に動かしていくことで、不必要な疼痛の悪化を避けることが出来ます。
💡また実際の生活場面では屈曲・内転・外旋などの動きもとても重要なため、 その際に骨性インピンジメントを避けるには、関節包内運動、軟部組織の遊び、骨盤臼蓋リズムなど様々な要素が必要となるでしょう。
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