見出し画像

2024.2.23 藤井佯さんへ

藤井佯さんへ

こんばんは。リプライでも申しましたが、故郷喪失アンソロジーの収録作公募ツイートで藤井さんを知りました。
『応募資格 広義の故郷喪失者であること。故郷を喪失したと自認している方。』の部分に何か切実なもの、“私がそれを求めているから、それが必要だからやるのだ”という信念…決意…真に迫るものを感じ、強く惹かれました。「“本当”の言葉を読みたい」とのこと、強く共感します。アンソロジーの実現を切に願っております。

“故郷”というもの、私には“ふるさと”という表現が一番しっくりくるのでそう書きますが、私にとって“ふるさと”とは大きな二つのイメージを持ちます。
一つは、自らのルーツであり根源、自分の中心がある場所、自分がはじめに“在った”場所、帰る場所、魂の拠り所…というイメージ。もう一つは、遠くにあり、やがてたどり着く・いきつく場所、けれど決して手の届くことはない情景、理想 というものです。
自分の後ろにある“ふるさと”と先にある“ふるさと”ですが、どちらも魂のゆりかごであり、心が安らぐ場所と思っています。
おそらく、一般的な文脈での“故郷”は前者に近く、後者は私が触れてきたコンテンツで言うところのFFⅨにおける『いつか帰るところ』、メギド72における『遠い情景』にあたるのかなと思います。私にとって、前者は既に在り、常に在り、戻る場所、であるけれどそこに戻ってはならない引き離された場所。後者は、常にそこを目指しているがその道のりに終わりはなく、ゆえにたどり着くこともないという場所です。
それゆえ、私はどちらのイメージの“ふるさと”に対しても喪失感を抱いています。前者は“帰れない”のであって失ったわけではないし、後者はそもそも存在していないのでひいては失うこともない、“空虚感”の方が近いのでは?とも考えましたが空虚ではないんですよね、虚しさはないんです。やはり“喪失感”という言葉が一番しっくりきます。

人が「故郷に帰りたい」と思うとき、過去の中にあるかつての家、両親、風景、環境、子どもの自分…という“故郷”は既に過ぎ去ったものであり、決してそこへは帰れない。そして“かつてあった故郷”の中にいる今の自分、というイメージは時間軸がバラバラであるがゆえに実現し得ない、理想の中の存在でしかない。…みたいな話かもしれません。“ふるさと”という言葉は、私の中でものすごく強い存在感のあるイメージをもっているのですが、その強さゆえに他者に正確に伝えようとするとだんだん混乱してしまう…

“ふるさと”及び“故郷”、そしてそれらの喪失について、関心も考えも思いも強くあるのですが、事実として私は狭義の“故郷”を喪失してはおらず、実家、両親共に健在であり関係も良好なので、その立場から故郷喪失について語ることへの申し訳なさ、立つ瀬のなさと言いますか、傲慢ではないか…という気持ちもあります。これに関しては、藤井さんも仰っていたように「自分が故郷喪失者だと思うのなら、そう」としか言いようがないと思うのですが、先の考えをどうにも拭いきれません。
とはいえ、狭義の“故郷”を失っていない者として、この感は持ち続けるべきものではないかとも思っています。それを持つ者として責任や義務、とでも言いましょうか。向かうもの、扱うものに対して己にできる限り誠実でありたい、と思い続けています。祈りのようなものでもあると思います。

祈りといえば、鳥は“祈り”を背負わされることが多いような気がします。鳩は平和の象徴とされていますし、旧約聖書ではオリーブの葉をくわえて戻ってくるし、千羽鶴は祈りを込めて折られますよね。
個人的には、祈りなんて背負わないただの鳥が好きです。最近、鳩がいると注視するようになったのですが(おそらく藤井さんの『鳩造りの工程』を読み鳩のぬいぐるみを作ったり、『ことばと』という文芸誌を読んだりしたことがきっかけで鳩への関心が高まっている)、今日見かけた鳩は気温が低かったからかいつもよりも膨らんでいるのが良かったです。大勢の人が足早に歩いている駅のホームの隅を鳩がトトト…と歩いているのを見ると、人間たちのことなんて何も気にせずに世界に在り続けてほしい、みたいなことを思います。
私のそんな勝手な思いも一切気にせずにいてほしいものです。

これは余談ですが、最近胎界主を読み始めました。「始めのうちは意味がわからないかもしれないがとにかくゴリ押しで読んでほしい、やがて必ず面白くなるから」といった内容のツイートを胸にゴリゴリと読んでいたのですが、気がついたら胎界主という漫画があまりにも面白く、離れ難くなっていました。すごい漫画ですね、本当に…。“面白さ”の力が強すぎるというか、理屈抜きに“面白い”という圧倒的な力を感じます。その力にねじ伏せられる気持ち良さがある…。
何かを読んでいるとき、あまりにも良い文章やコマ、展開に出会うと満たされすぎて読むのをやめてしまうという癖?があるせいでなかなか読み進まないのですが(胎界主、常に何かしらがとてつもなく良いので)、じっくりと胎界主に浸っていこうと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?