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Inventor / モデリングテクニック / パーツモデル / スケッチ (1)

2023年にウェビナーで紹介した内容をnoteの記事にしました。
普通にInventorでモデルを作ることができるけど、ワンランク上を目指す設計者を対象としています。

前回の記事


パーツモデル編では、パラメータ・スケッチ・フィーチャをもっと賢く作成するテクニックについて紹介します。

スケッチ

Inventorを使ったことがあるかたなら、スケッチがどんなものかはご存知だと思います。当たり前の地味な機能だと思われるかもしれませんが、実は大変に重要です。もしもここで間違った内容でスケッチを作ってしまうと、このスケッチを参照してできるフィーチャが影響を受けてしまいます。

Inventorでは派生の機能をよく使いますが、間違った内容のスケッチを作ってしまうと、派生先のコンポーネント、さらにその先のアセンブリモデルまで、芋づる式に影響を受けてしまいます。

そこで、できるだけ間違いを起こさないでスケッチを作成するためのテクニックを紹介します。

スケッチ面の向き

スケッチを作成するとき、必ず、「スケッチを作成する平面」を指定します。通常、作業平面あるいは既存のソリッドの平面を選びます。

注意してほしいのは「面の向き」です。スケッチ面の向きは、選択した「スケッチを作成する平面」の向きに倣うからです。ソリッドの平面の場合、面の向きは必ず外側を向いていますが、作業平面の場合は面の向きが期待通りにならないからです。

Y-UP(Z軸が手前)

図は、アングル形状のパーツモデルです。このモデルは、Y-UP(Z軸が手前)の座標系の空間に配置されています。

アングル形状を作成するには、L字の断面形状をスケッチで作成し、それを押出するのが分かりやすいです。なので、「スケッチを作成する平面」は、XY平面(XY Plane)を選び、作成されたスケッチ平面にスケッチを書き入れます。

Z軸が手前なので、XY平面は表側が見えている

一方、Z-UP(Z軸が上)の座標系でモデリングする場合、同じ操作をするには、「スケッチを作成する平面」は、XZ平面(XZ Plane)を選ぶことになります。

Y軸が向う向きなので、XZ平面は裏側が見えている

この場合は、図のように、「スケッチを作成する平面」が裏向きになってしまいます。「スケッチを作成する平面」が裏向きなので、スケッチ面の向きも裏向きになります。ここが注意するポイントです。

Inventorでは、スケッチ編集をすると、スケッチ面が手前向きになるように画面が変わります。

スケッチ編集時の状態。画面が裏向きになる。

この状態で、スケッチ編集をすると、間違いを起こしやすいです。左から寸法を入れる寸法を右から入れてしまったり、という事です。特に、Inventorの使い始めの人がやってしまいがちです。

間違いを起こさないようにするには、スケッチ面が手前を向くように運用を決めることです。いくつか方法があります。

Y-UPの座標系を使う

正面がXY平面、Z軸が手間になるので、正面スケッチが手前になります。Solidworksなど他の製造系の3次元CADはこれが規定値になっています。パーツモデリングを主に考えた時、もっとも合理的な方法と言えます。

しかし、Z軸が手前というのは違和感があります。一般的には、Z軸が上方向だからです。AutoCADもXY平面が水平面、Z軸が上下方向です。建築系、土木系もZ軸が上です。このように座標系が異なるCAD間で3Dモデルを共有すると、困ったことが起きます。

異なる座標系のアセンブリモデルにモデルを配置すると・・・

図は、Z-UPのアセンブリモデルに2種類のパーツモデルを配置した状態です。黄色のモデルはY-UPで作成したモデル。手前側だったZ軸がアセンブリモデル上では上向きになるので、モデルが回転しています。水色のモデルはZ-upで作成しているので、そのままの向きです。

したがって、AutoCADやRevitの様なZ-UP座標系のCADとの連携を考えた時は、InventorもZ-UPにする方が合理的です。では、Z-UPで間違いをなくす方法を紹介します。

正面の向きを、XZ平面ではなく、YZ平面とする

正面のスケッチ面をYZ平面とすれば、X軸が手前となるので、正面スケッチの向きも手前にすることが出来ます。

この方法も悪くはないですが、他のCADとの連携を考えた時、上下で回転する代わりに水平方向で回転してしまうので、やはり問題があります。

正面用の作業平面を新規に用意する

私の使っている方法です。正面のスケッチを作成するとき、「スケッチを作成する平面」にXZ平面では無く、あらかじめ作成しておいた「正面スケッチ用作業平面」を選ぶ方法です。

「正面スケッチ用作業平面」は、XZ作業平面と同じ面上で法線の向きが逆の作業平面です。こうすれば、正面スケッチを作成した時、スケッチ面の向きが手前方向になります。

「正面スケッチ用作業平面」でスケッチ作成

「正面スケッチ用作業平面」は、作業フィーチャのメニューから「平面からのオフセット」でオフセット長をゼロ、法線を反転、で作成します。

作業平面の活用

スケルトンパーツを作成するとき、あるいは、設計の意図を表すのに重要なスケッチを作成するときは、作業平面(ユーザ定義の作業平面)を「スケッチを作成する平面」とします。

これは、意図しない形状変更を避けるためです。ソリッドの面を選んでもスケッチは作成できますが、ソリッドの形状が変わった場合に、そのソリッドの面上のスケッチの方も影響を受けてしまうからです。

作業平面(ユーザ定義)はスケッチから作成する

スケッチを作成するための作業平面は、逆にスケッチから作成します。例えば、モデルの左右両端にスケッチを作りたい時は、平面スケッチのスケッチ線(構築線)を使って、作業平面(LEFT_WP, RIGHT_WP)を作ります。

XY平面とスケッチ線とで成す角度が90度の平面を作成

スケッチの座標系

スケッチ平面にも座標系があります。通常は、画面に表示されませんが、スケッチ原点とX軸、Y軸があります。スケッチ座標系も普段は意識することがありませんが、スケッチ面の取り方によっては、X軸とY軸の向きや原点が期待通りにならない場合があります。(もっとも多いのはX軸とY軸が90度回転してしまう場合です。)

このような場合、スケッチ座標系を、「座標系を編集」で編集します。 

モデルブラウザ上でコンテキストメニュー
正三角形の斜面上にスケッチを作成した場合

図は、あるパーツモデルの正三角形の斜面にスケッチを作成した場合です。スケッチ座標系は右側の図のようになっています。ここで、スケッチは、三角形の別のエッジを基準にして配置したい、という想定で説明します。

  1. スケッチ座標系のアイコンをドラッグして、原点を移動します。

  2. X軸あるいはY軸をドラッグして基準にするエッジに合わせます。

ソリッドの既存の稜線などを利用して軸の向きを設定します。
軸の向きの設定には、作業軸も利用できます。

座標系がどのようになっていても、スケッチの位置が正しければ良いのですが、座標系の向きが期待通りではないと、やはり間違いを招きます。スケッチ座標系についても、どうなっているかを確認する習慣を身に着けると良いです。

操作手順について、詳しくは スケッチ座標系を再位置合わせする 

スケッチブロック

AutoCADと同じように、Inventorのスケッチでもブロックを扱うことができます。繰り返し良く使用する形状をブロックとして登録しておけば、スケッチで形状を作成する手間を減らすことができます。

スケッチ上のオブジェクトを選択し、ブロック作成を実行します

また、リンク機構の検討など、スケッチ上で、機構の検討を行う時に便利に使うことができます。

四節リンク機構でそれぞれのリンクをブロックで定義

この時、最初のリンクのブロック定義をしておけば、残りのリンクはブロックのコピーと配置を使って簡単に複製を作ることが出来ます。パラメータもそれぞれのリンクで独立したパラメータとなります。

ブロックの管理

ブロックは、パーツモデルのモデルブラウザ上で管理できます。よく使用するブロックは、テンプレートにあらかじめ登録しておくと便利に使えます。

また、モデル間で、ブロックのコピー&ペーストが出来ます。この事を利用して、よく使用するブロックを登録したパーツモデルを作っておいて、ブロックのライブラリとして利用することもできます。

ブロックの配置

ブロックを配置した後、ブロック自体の位置と向きを寸法拘束と幾何拘束で確定します。特に向きの拘束を忘れがちなので、注意が必要です。

ジオメトリの投影

AutoCADのような2次元CADでは、まず、下書き線を書いておいて、それを参照しながら線を描いていくやり方をします。Inventorのジオメトリ投影機能は、それと同じような使い方ができます。

パーツモデル上の既存の形状(エッジ、スケッチや作業オブジェクト)を現在のスケッチ上に投影し、投影したエッジを利用して、スケッチを作成することができます。AutoCADと違うのは、参照した形状(ジオメトリ)が更新されて位置や形が変わると、ジオメトリ投影されたエッジも更新されることです。つまり、リンクが出来ています。

ジオメトリ投影

ジオメトリ投影のテクニックとしては、できるだけ基本形状からジオメトリ投影することです。安易にジオメトリ投影すると、意図しない形状更新が起きることがあります。図のように、既存のスケッチのエッジあるいは点からジオメトリ投影するのが間違いを減らせます。

また、必要最小限のジオメトリを投影するのがコツです。線よりも点でジオメトリ投影するのが良いです。線を不用意にジオメトリ投影すると、スケッチ線が重複してしまうからです。

スケッチの色分け

複数のスケッチが重なって表示されると、見分けが付きにくくなります。
その時は、スケッチを別の色で色分けすると、形状がわかりやすくなります。

色分けは、「ジオメトリのプロパティ」ダイアログボックスで行います。スケッチを選択し、コンテキストメニューからプロパティを実行すると「ジオメトリのプロパティ」ダイアログボックスが表示されます。

色分けは、スケッチ線などのオブジェクト毎に設定できますが、ひとつひとつ設定するのは面倒くさいです。おすすめはブロック単位、あるいはスケッチ単位での設定です。特に込み入った部分はスケッチ単位で色分けしておくと、分かりやすくなります。

スケッチのプロパティから、線の色・線種が変更できる
スケッチ単位で色分けの例

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