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建築土木の3次元設計(BIM)と機械の3次元設計の違い

建築、土木の分野ではBIMとかCIMと呼ばれる3次元モデルをベースにした仕事のやり方が進んできました。一方、機械設計の分野ではまだまだ2次元CADで設計するところの方が多いようです。このことをとらえて、建築・土木の方が進んでいるとの思い込みがありませんか?

建築・土木の仕事のやり方と機械設計の仕事のやり方は違います。なので、どちらの方が進んでいる。という事はありません。その理解のために、その違いとまとめてみました。


BIMとは

BIMとはBuilding Information Modeling の略です。(日本ではそれ踏まえてCIMという言葉もありますがこちらは和製英語。)建築・土木の開発プロジェクト全体を一元化されたデータモデルととらえて、かつそれも3次元モデルベースで管理するというようなものです。BIM=3次元CADではありません。

製造業の世界でBIMに対応するのはPLM(Product Lifecycle Management) と呼ばれる大きなデータ管理システムです。機械設計の図面やモデルはPLMから見ると、一つのサブシステムみたいなものです。こちらも同様にPLM=3次元CADではありません。

建築・土木では、最小の規模でも小屋とか橋とかです。関係する人や会社が多岐にわたります。なので、BIMのような一元化された情報を関係者がアクセスするという仕組みは必須です。
一方、機械設計は、小さな部品から大きな船、複雑な自動車・人工衛星と範囲は広いです。ものにもよりますが、データ管理が必須ではない。という点が建築・土木とは違います。

LDOの違い

LODとはLevel Of Developementの頭文字で、プロジェクトの進捗ごとにフェーズを決め、フェーズを管理する考え方です。それぞれのフェーズの3次元モデルの詳細度も決められています。もともと建築の世界の言葉です。
詳しくはこちら

一方、機械設計には、LODで設計の進捗を管理するという考え方はあまりありません。ただし、LODの有り無しが違いではありません。LODで決められる詳細度に違いがあります。

一般的に、建築設計の図面は細かな詳細までは書き入れません。例えば、「壁に窓枠が付いている。」という程度の指示です。その程度の図面でも施工出来るようです。一方、機械設計の図面では、部品の詳細形状はもちろん、公差まできちんと表現しないといけません。でないと、仕様が曖昧になるので、後工程が作業できません。

これを3次元設計で比較します。
建築設計では下の図の詳細度でも設計した事になりますが、機械設計では設計した事にはなりません。機械設計では、これは構想設計のレベルです。階段の詳細な組立図・部品図・部品表まで作成して初めて、設計した事になります。

Autodesk Revit Samplr model から参照

Playerの違い

建築の世界では、LODごとに担当する会社が変わります。製造の世界では初めから終わりまで同じ会社が責任を持つが普通です。

なので、上記の階段のレベルの3次元モデルでも担当した会社は「3次元設計をしている」ことになります。一方、製造の世界では、階段の詳細な組立図・部品図・部品表のレベルで3次元モデルを作っていないと「3次元設計している」とは言いづらいです。実際、建築の世界でも、施工図の段階になると、2D図面が普通です。

BIM連携

では、建築設計の世界では、現物はどうやって製作しているのでしょうか。つまり、製造の世界へどうつないでいるのでしょうか。現状は、2Dの図面渡しが多いようです。BIMから意匠の2次元図面(AutoCADのdwgファイル)をエクスポートしたものを基に製作しています。

3Dモデルがあるのだから、これをそのまま製造の世界に渡したいというのは、誰も思う事で、この仕組みをBIM連携と呼んでいます。

Autodesk社のRevit(建築設計のCAD)とInventor を使うと、この連携が出来ています。建築設計側の設計変更がそのまま製造側の3Dモデルや2D図面が更新されます。

BIM連携については、こちらの記事も参照ください。

まとめ

つまり、建築の3次元設計と機械の3次元設計では、設計の詳細度の基準が違い、担当する会社も違います。比較すること自体に無理があります。

冒頭の建築モデルに目を奪われ、機械設計は遅れていると勘違いしがちですが、詳細レベルでは製造業の方がむしろ3次元設計が進んでいる!と思います。

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