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製図道具の思い出(2)

シャープペンシル

作図には、シャープペンシルを使っていた。

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太線を書くときは、ペンを立てて持ち、0.5ミリの幅に濃淡が出ないよう注意をする。細線の時は、ペンをやや斜めに持ち、親指と人差し指と中指を使ってペンを回しながら線を引く。するとよい塩梅に0.3ミリの線が引ける。

重要なのはいかに濃い線を引くかだ。図面は、コピー機で複写するのが大前提。線が弱い(淡い)と線が見にくいからだ。製図用紙を破らず、かつ濃い線を描けるのが機械製図で求められる重要な技能だった。

これも苦い思い出がある。
新人として、機械設計の部署に配属されたとき、訓練を兼ねて機械部品のスケッチをするよう指示された。現物から、正しく図面化できるのかテストされるわけである。三面図も寸法も注記も問題なく出来た。良く出来たと、褒められるつもりで上司に提出しときのことだ。

「これを、コピー室に持っていて、コピーを取って貰って来い。」

その頃のコピー機は、青焼きと言って、原紙と重ねた感光紙に光を当てる方式のものだった。光を強くすると、コントラストが効いてきれいなコピーができる。ただし、線が弱いと、露出オーバーになって線が消える。消えないまでも、線に濃淡が出てしまい、見映えが悪くなる。今の複写機でも同じだが、その傾向がより顕著になる。

そう、私の図面はコピーで見ると、ひどい出来だった。天狗の鼻を折られた気分だったと思う。
線が弱いのは、新入社員あるあるの一つで、毎年、新人は似たような目に合わされて指導をされるというわけだ。現場の人に余計な負担をかけないよう、見やすく、誤解を招かない図面を書かせるという文化があった。

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当時使っていたシャープペンシル。付いていたクリップは邪魔なので取り除いている。見ての通り、ボディも傷だらけである。ノックのやり過ぎで、ノックするところが丸くなってしまっている。この写真だとまだ丸いが、さらに使い続けると、先が鉛筆のように尖ってくる。

早く作業をするために、数字や文字を早く書けるように練習をするのはもちろんだが、色々と工夫もした。例えば、垂直寸法などで横向きの数字を書くときだ。腕の向きを変えて書くとそのぶん時間が掛かるから、腕の向きを変えずに横向きの数字をかけるように訓練したりした。

今は、CADを使うので、誰がやっても同じ品質で線が引ける。これは大変な改善だ。一方、手書きの場合は、図面を見れば誰が描いたかすぐわかる。ベテランの外注設計の人の図面は芸術的な美しさだったりする。そういうのがないのは、少々寂しくもある。



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