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設計者として生き残るためのスキルアップの提案 (3) / トップダウン設計手法を3Dで実践

2021年3月16日にオートデスク社のウェビナーで発表した内容を文書化したものです。200名を超える視聴をもらい、内容についても多くの方から賛同をもらいました。後で参照しやすいよう、また、PPTのスライドだけでは、伝わらないであろう内容を加えて文書化しました。

(前回)

構想設計から詳細設計まで使えるテクニック

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トップダウン設計とは、上位レベルで定義した設計基準を、その設計基準を下位のレベルの設計に渡すことによって設計を進める手法(テクニック)です。トップダウン設計では、設計計画、製品・設備の構造化と、上位と下位の設計間での設計情報の共有に重点を置きます。

もう少し、わかりやすくまとめると、トップダウン設計では、次の三つの設計基準があります。

一つ目は、設計の意図・要件で、まさに、何を設計するのか、それはどんな要件を満たすものかといったことです。二つ目は、設計の構成です。それは、何でできているか、何で構成されているかをを明確することです。これをストラクチャと呼んでいます。三つ目は、設計情報を共有するコンテナです。上二つの設計基準を、下位の設計に受け渡す入れ物になります。これをスケルトンと呼んでいます。

このトップダウン設計手法のメリットは、先ほど申し上げたとおり、LODの考え方と合致していることです。LODでは、インプットとアウトプットをしっかり定義します。そのアウトプットが、下位のLODのインプットになるようにする仕組みが、スケルトン(設計情報を共有するコンテナ)です。スケルトンの働きにより、上位→下位に情報が共有されるので、設計変更に対し、最小限の手間で対応できます。なぜならば、上位で設計変更があったとき、それはスケルトンの内容が変更されることを意味します。スケルトンの内容をもとに、下位の設計が行われていますから、変更が自動的に行われます。このことは、3DCADだからできます。2DCADでは、できないことです。

スケルトン(派生コンポーネント)を使ったモデリングの実際

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スケルトンを使ったトップダウン設計の手法を、溶接軸受を例に、具体的に紹介します。Autodesk Inventor の場合、スケルトンに相当するのは、派生コンポーネント(派生パーツ)という機能です。

派生コンポーネントは、AutoCADの外部参照の機能と同じ概念です。AutoCADでは、外部参照元(スケルトン)の内容が変われば、外部参照図形の内容が更新されます。Inventorでは、この外部参照図形の形状(ジオメトリ)を利用して3Dモデルを作りますので、スケルトン(外部参照元)が変われば3Dモデルの形状が更新される!という仕組みです。

テクニカルな説明なので、図は簡単な形状にしていますが、基本は同じなので、対象が複雑になっても応用できます。

右の図が上位の設計のスケルトンになります。溶接軸受の仕様寸法がパラメータに入力されています。基本形状がスケッチとして3D空間上に配置されています。下の図が、下位の設計になります。スケルトンを派生コンポーネントとして取り込み、そのスケルトンの情報、パラメータや、スケッチのジオメトリを利用して、モデルを作成します。

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図の左上のモデルが、スケルトンとなります。左下の図は、そのスケルトンを派生コンポーネントとして取り込み、形状を追加したもでる。このモデルを新たなスケルトンとして取り込んで作ったモデルが右下のモデルとなります。そのモデルを図面化したのが右上の2D図面です。設計変更でスケルトンの内容が更新されると、芋づる式にモデルが更新されるのが、トップダウン設計のふるまいです。

実際の設計では、パーツモデルのほかアセンブリモデルの作成においても、派生コンポーネントの機能を活用してトップダウン設計を行うことができます。その具体的なテクニックについては、別の資料(近日公開予定)で紹介します。

まとめ What’s Next?

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