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順位付けが謎すぎる2017年のおすすめ本

今日は2017年の私のおすすめ本ランキングトップ10を一挙ご紹介。。。

第10位

ジョージ・オーウェル『一九八四年』(ハヤカワepi文庫、2009年)

言わずと知れたディストピア小説の金字塔。

ウィンストンは独裁政権の支配する国、オセアニアに生きている。オセアニアは常に戦争状態にあり、慢性的に物資が窮乏している。そんな中、ウィンストンは党の支配に疑問を抱き、うまく従順に生きながらも、反政府組織<ブラザー同盟>に憧れるようになる。そんな折、ジュリアという若い女と疑問を共有し、徐々に行動を起こしていく――。

中盤まで本当に展開が少なくて読むのがしんどいのだが、中盤から怒涛の展開にページを捲る手が止まらなくなる。そしてその中盤までの布石に納得する。

これはネタバレの危険が大いにあるのでこれ以上書かない。

イギリスにおける「読んだフリ本」第1位に輝くくらい、「みんなが話題にし、実はみんな読めてない本」なので、読み切ったあなたはだいたいのイギリス人にどや顔ができるぞ。

第9位

笠井亮平『モディが変えるインド:台頭するアジア巨大国家の「静かな革命」』(白水社、2017年)

インドの本と言うと、「ヒンドゥー教・インド神話など哲学系」「旅行記系」「ビジネス系」のあたりばかりで、政治や外交のあたりを詳しく書いた本は少なかった。そんな中でインドの政治や外交に主に着目して記述した本はだいぶ珍しい。

個人的にはインドにおける安全保障政策をに関心があったこともあり、これが出版されたときは小躍りして飛びついたのを覚えている。

「なんで国際政治でインド?」と思ったそこのあなた。ぜひお読みください。

第8位

エドワード・ルトワック『戦争にチャンスを与えよ』(文春新書、2017年)

前回の『中国4.0』の続編にあたる。ルトワックおじさん。
彼の主張の肝は以下の7項目に集約される。

1.可能な限り戦争を避けよ。そのために戦争の準備を怠るな。
2.敵の情報を心理面も含めて収集せよ。
3.極力戦闘以外で、軍事活動を活発に行え。
4.消耗戦・撃滅戦は避け、詭道戦を行え。戦略目標の達成に集中せよ。
5.戦争は有利に終えなければならない。そのために同盟国を得てバランスを自国に引き寄せよ。
6.政権転覆は積極的に行え。
7.常に相手の弱点を突く詭道戦を重視せよ。

単なる脳筋おじさんじゃないことがわかるだろう。

この中で1つでも「は?」と思った方は一度読んでみると新しい発見があるかも。

第7位

桜井鈴茂『どうしてこんなところに』(双葉文庫、2016年)

妻を殺して山に埋めてしまった人間が、特別な目的意識もなく警察から逃げ回る。と言っても、警察に追われている緊迫感はない。

この小説は、他人には言えない過去を抱えた人間が、現実逃避をする中でどう向き合い、どういう選択をするかという側面が大きい。

各章の冒頭に添えられたエピグラフがよりこの思索旅行にアクセントを与える。いずれも、自分の生に、自分の存在に嫌気が差したり、絶望した言葉ばかり。

鬱拗らせてた時期に読んだこともあって(今思い返せばJOJOさんの読書会に初参加した直後だ笑)、めちゃめちゃに感情移入しながら読んだのを思い出すなぁ。

第6位

森見登美彦『夜は短し歩けよ乙女』(角川文庫、2008年)

森見作品に私が出会ったきっかけになった本だな。

腐れ大学生の「私(先輩)」と「黒髪の乙女」の出会いというか、「私」の一方的な片思いと乙女のファンタジックな日々の対比、すれ違いが読者を笑わせるコメディ作品、と言った方がいいのかな。

この当時アニメ映画化したのを機に原作も、と思い手に取って以来、森見ワールドの摩訶不思議さに惹かれた。

アニメ映画の方もちゃんと原作の世界観を表現していると思うので、そちらから入るのも良いだろう。

第5位

デイル・ドーテン『仕事は楽しいかね?』(きこ書房、2001年)

小説の体裁でビジネスを語る。大人になったら誰しも1度は聞いたことのある書名だろう。

仕事で「成功」するためには何が必要か。
マックスおじさんは、目標設定も、そのための計画も、「あるべき自分になる」ことも、全くいらないという。

じゃあどうしたらいいかというと、「今日とは違う自分になる」「あらゆることを試してみる」「新しいアイデアというのは、新しい場所におかれた古いアイデアだ」という。

つまり、日々新しいことを試していって、あれこれと楽しんでいるうちに、ひょんなことから革新的なアイデアが降ってくる、というのだ。

目的意識を持ち、ゴール(あるいはKPI)を設定して、そこから逆算される手順に基づいて行動する、という行動パターンが1つあって、現在でも多用されている。私なんかまさにそうやって行動したいタイプなのだが、一方でこのやり方はあまりに後天的で、実践するのに労力が要る。

要は「楽しいか?」という観点が抜けがちになる。

本書は、逆に現在からの積み上げ方式での行動を取ることで楽しく、かつ自分で思っても見なかった境地に到達できるんだよ、と説く本だ。

この両者は共に重要な考え方なので、どっちが良い悪いではないのだが、やっていることや状況に合わせてこの2つを使い分けられると良いのだろうな。

第4位

川上昌直『マネタイズ戦略――顧客価値提案にイノベーションを起こす新しい発想』(ダイヤモンド社、2017年)

イノベーション云々言われていても、基本的には「新しい価値」「エッジの効いた商品」のように、内容ばかりがクローズアップされていた。

本書はそれに警鐘を鳴らす。

価値提供とマネタイズは車の両輪のように切っても切れない関係にある。

どんなに「(世の中/誰かにとって)良い商品・サービスだ」というものでも、お金を生まないならプロバイダーが続かない。
また、良い商品・サービスでも、お金の生み方が汚いと顧客は離れていく。

紹介されている事例は以下の8つ。

・テスラ[米-自動車メーカー]
・ピーターパン[日-パン屋]
・LDK[日-家電雑誌]
・Netflix[米-映像コンテンツ配信]
・デアゴスティーニ[伊-ホビー雑誌]
・アドビシステムズ(現・アドビ)[米-ITシステム]
・マーベル[米-映像コンテンツ制作]
・École42(forty two)[仏-教育]

最後のÉcole42なんか、教育事業の癖に「無料の学校」とか作っちゃったりしてるからね。
めちゃめちゃ面白い。

第3位

ユヴァル・ノア・ハラリ『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福』(河出書房新社、2016年)

これも言わずと知れた大ベストセラー。
人類が今までどのような「革命」を経て現在に至り、そしてこれからどこへ向かうのか。その人類史を俯瞰してストーリー化したのが本書となる。

生物学的な見地からスタートしつつ、考古学や文化人類学などの人文科学も、政治学や経済学などの社会科学もすべて含めてまとめている。

まず読者が驚くのは、
「小麦が人類を奴隷化した」
だと思う笑。

ただし、本書は人類史をストーリーとして伝える技術に長けている一方で、若干根拠が薄い部分も散見される。奇抜な整理にストーリーの緻密さに驚いて読み進めてしまうのだが、「なぜそういえるのか」はちょいと弱い部分なので、一応注意。

これ、上下巻どっちに入ってた話だか忘れたけど、虚構に関する話なんかは証拠というよりロジックがあまりにもきれいですごく納得かつ斬新な考え方ですごく面白かった。
人類は虚構の存在を信じることで発展してきた。

第2位

早瀬耕『未必のマクベス』(ハヤカワ文庫JA、2017年)

「未必」:故意ではないが、過失でもない程度の意思のこと。
平たく言えば「殺したいと思って包丁を刺したわけではないんだけど、包丁で刺したら死ぬかもな、とは思っていた」くらいの認識で殺人を犯したりした場合に「未必の故意」が認められたりする。

つまり、この小説は「わざとではないマクベス」のお話ということ。
シェイクスピアの四大悲劇『マクベス』の内容については、本文中でちゃんと程よくフォローしてくれるので、読んでなくても大丈夫。

さて、そうなると、『マクベス』の内容をよく知っている人にとってはこのタイトルが壮大なネタバレなのかというと、そうではない。なぜ私が「そうではない」と言い切るのかを考えつつ読んでくれたらなお良いと思う。

話の筋としては、アジアにも拠点を持つグローバル企業の中間管理職、中井優一は、同僚の伴浩輔とともにバンコクでの商談を成功させた帰りに、澳門の娼婦から予言めいた言葉を告げられる。

「あなたは、王として旅を続けなくてはならない」

当時私はこの本をミステリっぽい要素もあり、クライムノベルであり、純粋な恋愛ものでもある。王として旅を続けるので、冒険ものとも言えるかもしれない。

個人的にこの小説で一番好きなのは、文章力。600頁もあるんだ。さぞ読み疲れるだろうと思っていたら全くそんなことはない。スッと引き込まれて先の展開を考えてしまう。自分の予想が当たろうがあたるまいが構わない。先を予想しながら読み進めること自体が楽しい。

あくまで個人的な評価なので気に障ったら申し訳ないが、この人の文章を表現すると、「いけ好かなくない村上春樹」ってかんじ。

ハルキストの皆さんすみません。

第1位

竹内薫『自分はバカかもしれないと思ったときに読む本』(河出文庫、2015年)

タイトル通り、自分はバカかもしれないと思ったら読みましょう。

私自身、昔筋金入りのバカだった時、それが嫌で嫌で、嫌すぎて死にたくなった後でやっと行動を起こした。「バカ脱却」という目標を持ち、なんのためになるのかわからない本をひたすらつまみ読みし、成果は時間が経ってから急に出てくるもんだと信じて継続した。

そうしたらまさにその通り、時間がかなり経ってから成果が出始めた。

今だって別にいろんな面でバカなんだけど、1つだけ、
論理的にものを考える
ということだけはちょっとできる方になったと思っている。

すげえ時間かかったよ。でも努力の方向性が間違ってなかったからなんとか結果が出た。

私の話を書いてしまっているが、本書はまさにそんな内容が書いてある。

自分、バカなんじゃないか。努力しても全然成果出ないもん。

って思ったら読んでみると良いかも。

最後に

おすすめランキングって書いてるけど、これは「当時、私に刺さった本ランキング」だと言って差し支えないな。

今だったら全然順位違うと思う。

もし気になる本があればポチってみてくださいね。それでは。

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