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金とき
2021年6月5日 18:12
ぽつり。奈落の底みたいな夜空から、温かい一滴。ぽつり、ぽつり。どんどん降ってきて、綺麗に整えたあたしの髪の毛を濡らす。 気持ちがいい。 夜の匂いと雨の匂いが混ざり合って、真っ白の肌の上に薄く膜をつくる。それであたしは、くくっと笑う。人気のない住宅街は真っ暗で、何も見えない。 彼の家から最後に盗んできた、大きな傘を広げた。 それは真っ黒で、広げるとこれがまた小さな夜空みたいで。眩し