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金とき
2020年9月23日 21:23
人間万事塞翁が馬。人生って、結構うまくできてると思う。 良いことも悪いことも背中合わせ。油断しちゃいけないけど、そこまで悲観的に捉えることもない。俺がそのことに気が付いたのは、まだほんのガキだったときだ。 十歳になった誕生日。俺は母親に遊園地に連れて行って貰った。俺の母親は本当に可哀想なひとだったんだ。そのころ詳しくはわかっていなかったけれど、学生時代に倍以上の年齢の男の子ども、つまり俺
2020年9月22日 23:30
ずっと、夢見ていた。 いつか、素敵な王子さまが現れて、わたしの心をあっという間に攫っていく。それから、わたしはほかに何にもいらなくなって、ひたすらに彼を想う。彼もわたしを心から愛してくれる。ふたりはすべての困難を乗り越えて結ばれる。あなたがいれば、何もいらない。そんな王子さまが、いつかわたしの目の前に現れてくれる。 陸と出会ったのは、大学一年生の春。かと言って、大学で出会ったわけではない
2020年9月5日 12:14
丸めた背中をぐいぐい前へと押し出して、男は膝をあまり曲げずに細長い脚を一歩一歩進めていく。 ニメートルを超える身長を七十度くらい屈めているから腰の位置だけ異様に高いその男は、よれたジーパンをぴかぴかの黒いベルトで限界まで縛り上げて、しわしわの水色の長袖シャツを着ていた。捲くりあげているわけでもないのに七歩丈のシャツの袖のボタンは、留めていた糸だけ残して消えている。袖から覗く腕も、襟から見える